ソフトバンク「ウェブ手続きで3850円」の衝撃--eSIM再発行も有償化、顧客離れの恐れ(石川温)
ソフトバンクにおける事務手数料の値上げが注目を浴びている。
昨今、物価高や円安の影響で様々なものやサービスが値上げされるのは仕方ないが、理解できる。しかし、ソフトバンクの事務手数料に関しては「批判」の声が多いようだ。
同社では8月20日からソフトバンクやワイモバイル、LINEMOなどの事務手数料を改定する。これまで新規契約や機種変更などを店頭で行う際、3850円かかっていたのだが、これが4950円になるのだ。
プレスリリースでは「物価高騰に伴う各種費用の上昇」を値上げの理由にしている。確かに、ショップにおける人件費の高騰を考慮すれば、当然のことだ。
しかし、ソフトバンクではこれまで無料だったウェブでの手続きも3850円へ有償化される。契約や機種変更だけでなく、ブランド間の乗り換えでも3850円だ。
ここに対して「理解できない」という声が相次いだ。
ソフトバンクの宮川潤一社長は「ウェブ手数料は、セキュリティ対策したり、本人確認の法令対応など、システムの関連費が上がっているという背景がある。これまで無料を続けてきたが、コスト増を踏まえると改定せざるを得ない。サービス向上に努めるため、ご理解いただきたい」と言い訳した。
ただ、ウェブで手続きする場合、個人情報の入力や本人確認のためのマイナンバーカードや運転免許証の撮影、さらに自分の顔を右に左に動かして、本人であることを証明する作業も自分で行わなくてはならない。
また、機種変更で端末が届けば、自分でeSIMの発行やデータの移行も行わなくてはならない。なぜ、自分での手間が多いにもかかわらず、3850円もかかるのか。多少のコスト負担は理解できるが、3850円というのは庶民の感覚からしても高すぎるような気がしてならない。
特に「当面無料」とはなっているが、eSIMの再発行においても3850円を徴収する予定だという。eSIMなんて、手軽に再発行できるのが魅力であるにも関わらず、事務手数料を設けることで、ユーザーを縛っているのではないか。
先日、ソフトバンクでGalaxy Z Fold7をオンラインで購入し、eSIMで使い始めた。
数日後、この電話番号をiPhone 16 Pro Maxで使おうとeSIM再発行手続きをMySoftBankでしようとしたら「異なる機種へのeSIM入れ替えはMySoftBankからはお手続きできません。オンラインショップまたはソフトバンクショップで機種変更手続きをしてください」というメッセージが出てきてしまった。
他人に盗まれないよう、本人確認を厳守する必要があるのかもしれないが、とにかく使い勝手が悪くて、ゲンナリしてしまった。
これであれば、物理的なSIMカードのほうがいいかと思いきや、ソフトバンクはいまだにiPhoneとAndroidでSIMカードの種類が違っていたりする。
ソフトバンクはとにかくSIM周りが面倒くさい。ただ、これも「無料だから」となんとかこれまで我慢してきたが、これが有償化されるとなると、正直、もっと手軽で手数料の安い他社に乗り換えたくなってくる。
そんななか、8月5日、NTTドコモもソフトバンクに追随するかたちで事務手数料の値上げを発表した。
これまで店頭で3850円だった手数料が4950円となる。
しかし、ウェブでの手続きに関しては、新規契約、契約変更、機種変更、eSIM再発行、電話番号の変更などすべて「無料」を継続している。
ソフトバンクがウェブでの手続きをあっさり有償化する中、なぜ、NTTドコモは無料を継続するのか。齋藤武副社長は「今後、ユーザーにはオンラインをより便利に使ってもらいたい。そのために無料を継続した」と語った。
ちなみに、NTTドコモの発表では「携帯電話に関するWEBでの各種手続きの事務手数料は、今回の改定の対象外で引き続き無料」と太字で書かれていた。これを見たソフトバンク関係者が「わざわざ太字で書かなくても」とぼやいていたのが印象的であった。
NTTドコモとKDDIがこの夏、料金プランを改定し、値上げに踏み切った中、ソフトバンクはいまだに新たな料金プランを発表していない。宮川潤一社長は「(値上げした他社は)顧客満足度が低くなっているのではないか」と語り、ユーザーに納得してもらえる新料金プランを検討しているという。
ただ、どんな料金プランが他社よりも魅力的でも、機種変更やSIMカードの再発行など事あるごとにウェブで手続きしたのも関わらず、3850円を徴収されるというのは納得感に欠けるところがある。今回のウェブにおける事務手数料有償化は明らかにソフトバンクユーザーの顧客満足度を下げているのではないだろうか。