「遺影」撮影は孫や友人と、くつろいだ雰囲気や笑顔で自分らしく…斜めに構えカメラ目線がおすすめ

 元気なうちに自分の遺影を準備しておく人が増えている。写真館に依頼しても、誕生日などに、家族や友人にスマホで撮影してもらってもいい。ポイントを押さえて、自分らしい一枚を残したい。(矢子奈穂)

 東京都内の女性(81)は今年3月、自宅近くの写真館で遺影用の写真を撮影した。「父が亡くなった時、遺影用の写真を探すのに苦労した。自分も80歳になったので、遺影を撮影しておこうと思った」と理由を語る。服装は白いブラウスにピンク色のカーディガン。メイクをして、花を手に、にっこり笑顔でカメラに向かった。かしこまった服装や表情ではなく、お気に入りの服で自然な表情を残したかったという。

 NPO法人「ら・し・さ」(東京)副理事長で終活アドバイザーの山田静江さんによると、かつては生前に遺影用の写真を撮影したり、選んだりすることは、縁起が悪いと考えられていた。だが、家族葬が増えるなど葬儀が多様化し、終活が浸透する中、遺影に対する考え方も変わった。「納得できる写真を残しておきたい」という人が増え、終活イベントで、遺影撮影会に参加する人も多いという。

右の写真は、表情がかたく、頭頂部の余白が足りない。左の写真は、やわらかな表情で、カメラに対して体をやや斜めにしており、奥行きのある仕上がり=能津さん提供

 写真館「素顔館」の館長、 能津(のづ)喜代房(きよふさ) さん(76)は、2008年から遺影写真を専門に撮り始め、これまでに5000人以上を写してきた。「遺影は、故人の生前の姿を思い出し、家族が眺める大切な写真。葬儀の後に自宅に飾ることも多いので、その人の人柄や雰囲気が伝わる一枚を残してほしい」と助言する。

 家族や友人に撮影してもらう際、どんな点に注意すればいいだろうか。


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 まずは服装。能津さんは「着物やスーツなどの正装にこだわらず、自分らしいスタイルで。帽子をかぶって撮影した人もいます」と話す。メイクは、明るく自然な仕上がりを心がける。

 目が笑っているやわらかな表情を残したい。緊張すると表情がかたくなるので、家族らと会話をしながらくつろいだ雰囲気の中で撮るとよい。孫や共通の趣味を持つ友人が同席すると、自然といい笑顔になる人が多いという。「遺族や葬儀の参列者が、故人と目を合わせているように感じられるので、カメラ目線がおすすめです」(能津さん)。

 立った状態でも、椅子に座って撮影してもいいが、背筋は伸ばす。カメラに対して正面を向かずに、肩を少しひねるようにして、体をやや斜めにすると、動きや奥行きのある写真が撮れる。

 家族などが撮影する際には、顔がはっきり写るように、胸から上を入れた構図にする。ピントが合っているかどうか、頭のてっぺんなど顔周りの上下左右に余白があるかどうかを確認しよう。

 スマホで撮影する場合は、最大画素数に設定する。ポートレート機能を活用したり、2倍ズームにしたりすると、ゆがみを防ぎ、ピントや明るさなどを自動補正してくれるという。

 能津さんは「家族行事として正月や誕生日などに撮影してみては。家族や友人と一緒に写真を選べば、楽しい思い出になると思います」と話している。

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