生保で劣後債発行相次ぐ、日生は初のユーロ建て-新規制控え資本増強

国内大手生命保険会社が相次いで海外市場で劣後債を発行している。新たな資本規制の導入や大規模な企業の合併・買収(M&A)などに備え、財務基盤を厚くする。

  日本生命保険は17日、5億ユーロ(810億円)の劣後債を発行すると発表した。広報担当者によると、ユーロ建て社債の発行は初めて。第一生命保険も16日、ドル建て劣後債20億ドル(3113億円)の起債を発表した。

  世界約200カ国・地域が加盟する「保険監督者国際機構(IAIS)」での議論を踏まえ、2025年度末から適用される新たな資本規制では、保険契約に基づく負債も資産と同様に時価評価し、経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)で支払い余力を示す。市場リスクなどにより自己資本を厚くする必要も出てくるため、一定の範囲で資本算入できる劣後債の発行ニーズが高まっている。

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)クレジットアナリストのプリ・デ・シルバ氏は、一般的に金利の上昇によって保険の解約リスクは高まるため、国内金利が上昇するとリスク想定が引き上げられ、ESRに下押し圧力がかかりかねないと指摘する。

  その上で、生保各社の外貨建て劣後債の発行について、新たな資本規制への対応に加え、海外での大型買収や借り換えニーズを背景に、今年は2年連続で過去最高の発行額を更新するとの見方を示した。

  日生のユーロ建て劣後債は、最終償還年限が30年で、発行から10年後に期限前償還(コール)が可能となる。当初10年間の利率は年4.114%。海外でスプレッド(上乗せ金利)がタイト化し、調達環境が改善する中、投資家から発行額の11.5倍に当たる需要を集めた。

  第一生命の広報担当者は、ドル建て劣後債の起債に関して、自己資本の充実のため、新規制が導入されても健全性が保てるよう資本調達を行っていると説明した。

  昨年は明治安田生命保険が9月に17億5000万ドルのドル建て劣後債を発行したほか、住友生命保険も1月に10億4000万ドルのドル建て劣後債を起債。BIの集計によると、年間合計では41億ドル超と16年の40億ドルを上回り、生保の外貨建て劣後債の発行額で最高を更新した。

  生保業界では海外での保険事業を成長分野と位置付け、積極的なM&Aに乗り出している。日生は約1兆2000億円を投じて米系生保のレゾリューションライフを完全子会社化すると昨年12月に発表した。今年下半期をめどに完全子会社する予定。手元資金でまかない、ESRベースで25ポイントほどの引き下げ要因と試算する。

  明治安田も米子会社を通じて現地保険会社を今年4-6月をめどに約3000億円で買収する予定だ。

  ニッセイ基礎研究所・保険研究部の浅川真広部長は生保各社は海外買収などで収益性を高め、契約者への還元の動きを強化していると説明。「健全性を損なわずに事業を拡大するため、リスクに対応した資金調達を進めているのではないか」と述べた。

  S&Pグローバル・レーティングの保険担当ディレクター、松尾俊宏氏は、劣後債による調達は新規制においても資本としての算入が認められる可能性が高いことも考慮した上で発行しているのだろうと指摘。保険会社の発行する劣後債は一般的に、初回コール時に利率が上がる契約となっているため、今後も借り換えニーズから新規の発行が継続する可能性があるとの見方を示した。

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