「つなぎ役」のはずだったPHV、トヨタがアルファードに追加…中国BYDも日本投入へ

 プラグインハイブリッド車(PHV)の評価が高まっている。航続距離への不安などから電気自動車(EV)の販売が伸び悩む中、電気とガソリンを併用できる利便性の高さが支持されているようだ。メーカー各社は相次いで新型車を投入している。

EV・HVの「いいとこ取り」

 PHVの最大の特徴は、給油に加えて、充電プラグをさせば外部から充電もできる点にある。EVは充電施設の少なさから「電欠」への不安がつきまとうが、PHVはその部分をガソリンで補いながら電気だけでも走れる。ハイブリッド車(HV)に比べ環境性能も高めた「いいとこ取り」な車だ。

 日常使いならモーターを主体に、遠出をする際はガソリンをメインに走るなど、動力を使い分けることが可能。一般的に電気はガソリンよりも安く、うまく使い分ければ維持費の軽減につながる。

 PHVが搭載している大容量のバッテリーは蓄電池としても使えるため、災害時など万一の時にも心強い。残ったバッテリーを自宅で活用することも可能だ。

 ただ、タンク内のガソリンを放置しておくと劣化につながるため注意が必要だ。各メーカーは自動でエンジンを起動させたり、車内画面で燃料補給を促すメッセージを表示したりしている。

EV販売停滞 「つなぎ役」にあらず

 PHVはこれまで、EVが普及するまでの「つなぎ役」とみられていたが、EV販売の停滞を背景に関心が集まる。

 富士経済の見通しでは、2024年のEVの世界販売台数は1048万台と前年比4%増にとどまった。充電施設の不足や航続距離への不安が背景にある。一方、PHVは約30%増の545万台と大きく伸びる見込みだ。

 こうした需要をにらみ、メーカー各社はPHVのラインアップを強化する。トヨタ自動車は1月、ミニバン「アルファード」と「ヴェルファイア」にPHVを追加した。セダンやスポーツ用多目的車(SUV)など幅広い車種で展開する。

 三菱自動車は昨年10月、3年ぶりにSUV「アウトランダー」のPHVモデルを発売。電気だけで100キロ・メートル以上の走行が可能で、従来比で約2割向上した。

 両社は2010年代前半にPHVを発売した国内勢の先駆的存在で、現在も強みを持つ。マツダもPHVを展開するほか、ホンダも三菱自からのOEM(相手先ブランドによる生産)供給を検討しているという。

中国BYD脚光

 PHVはEV大国の中国でも脚光を浴びる。BYDを筆頭に新車種を展開し、24年の新車販売の伸び率は8割超と、2割以下のEVを上回った。世界販売台数は中国勢が6割を占めた。

 競争力も日本勢に勝るとも劣らない。BYD車の航続距離は2000キロ・メートルを超える。BYDは1月、年内にも日本市場でPHVを投入すると発表した。

 BYD車は手頃な価格が特徴で、日本勢にとっては強力なライバルとなる。日本で販売する車種は明らかにしていないが、中国では約210万円のPHVも販売している。トヨタのプリウス(390万円)や三菱自のアウトランダー(526万円)と比べて割安感が際立つ。

 PHVは大容量のバッテリーを搭載するため、EVと同様に価格が高くなりやすい。EVやPHVしか製造していないBYDは、量産効果で電池の調達価格を抑えることができるのが強みだ。

 三菱自の加藤隆雄社長はBYDについて「大変脅威だ。我々もコストを下げる努力をもっとしないとダメだ」と危機感を示す。日本勢が今後、PHVのさらなる普及を目指すには、バッテリーの調達価格を抑えられるかがカギを握る。

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