後輩思いのあらわれ? 「阪神・近本」ロングラン交渉の本当の狙い 「残留は早い段階から決まっていた」

 それは一体、どういうものか――。  近本は兵庫・淡路島で生まれ。社高校、関西学院大、大阪ガスを経て2018年にドラフト1位で阪神に入団した。1年目の19年から今季まで7年連続で規定打席に到達。今季は打率.279、3本塁打、34打点、そして32盗塁で4年連続6度目の盗塁王を獲得した。  今季、長嶋茂雄以来史上2人目となる新人から7年連続130安打を達成。入団7年で重ねた安打は1093本、ゴールデングラブ賞は5回受賞。不動のリードオフマン、シンボルとして阪神にとってまさに「替えのきかない選手」だ。

 近本は日本シリーズ終了直後、「しっかり自分の意思で残りの野球人生を主体的に決めていきたい」と話したが、それ以降、沈黙を貫いた。FA申請締め切り前日の10日、西宮市内の球団施設に姿を見せたが、ここでも語らず。そして11日、球団との話し合いは10時間に及んだ。この間、ファンのもどかしい思いを代弁するように「近本残留」がXのトレンド入りするなど、関心の高さがうかがえた。  結果、近本はFA宣言せず残留。条件面では出来高払い込みの5年総額25億円でまとまったという。  5年契約は球団4人目で最長年数。最大限の誠意を示したということになる。具体的には2001年オフに日本ハムからFAで獲得した片岡篤史に5年12億円、14年オフにFA宣言して残留した鳥谷敬は5年20億円、24年オフにこちらもFA宣言残留の大山悠輔は5年17億円。

 近本は残留を決定した理由について、次のように明かしている。 「やっぱり甲子園で7年間やってきて、ファンの方だったり、その歓声であったり、その中で野球するっていう素晴らしいことを、それをこれからも続けたい。その中で楽しく野球したいなという風に思いました」  球団は近本と水面下で交渉を重ねてきた。双方の関係はどういったものだったのか。 「相思相愛というのが正しいのかわかりませんが、双方、他に選択肢がなかったのは間違いありません」  と、スポーツ紙デスク。 「球団提示が5年20億円で、それに近本が不満を示したのが10時間ロングラン交渉の理由などと一部で報じられましたが、それもありません。“傍証”にもならないかもしれませんが、近本のインスタグラムにチラッと告知文言がありました。近況報告として書籍を出版予定とのことです。彼のポッドキャスト番組“チカブレンド”の中身をまとめたものと聞いていますが、FA前提なら球団が変わることもあるためその種の仕事は保留していたはずなので、その点からも阪神残留は既定路線でした」(同)


Page 2

 事前交渉がうまく行き、条件面での行き違いもないのならもっとスムーズに残留宣言があっても良かったのではと思わないでもないが、その点はどうなのだろう。 「FAは選手の権利で、近本のように影響力の大きな選手がすんなりと早い段階で結論を出してしまうと後に続く世代が動きにくくなる。そのため、“熟考を重ねている”という体にしていたと見られています。10時間も“交渉”はしておらず、せっかくの機会だからあれこれと多岐にわたる“意見交換”をしていたのが実態でしょう。それにしても10時間は長いですよね(笑)。近本は自ら軸となって立ち上げた社団法人での活動やトレーニング法、普段の考え方までとにかくユニークなことで知られます。今回の”タフ・ネゴシエイター”演出も彼のアイディアなのか、そこまでわかっていませんが」(同)  周辺の騒ぎをよそに当事者らは極めて冷静だったということになるだろうか。 デイリー新潮編集部

新潮社

デイリー新潮
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: