村元哉中・高橋大輔がリンクに立ち続ける理由 「また来たい」を求め…根底にフィギュア界の未来への情熱

フィギュアスケート・アイスダンスのプロスケーターとして活動する村元哉中さん、高橋大輔さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じ、現在の主戦場とするアイスショーの魅力を語った。2020-21年から3シーズン活動し、2022年全日本選手権で優勝。アイスダンスの注目を引き上げ、競技会から退いて以降も挑戦を続ける“かなだい”は、今もアイスショーを通してパフォーマンスを披露する理由と情熱について吐露。そして、これからのフィギュアスケートという競技普及と未来に向け、想いを明かした。(前後編の後編、聞き手=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

村元哉中さん(右)、高橋大輔さんがプロスケーターとしてパフォーマンスにこだわる理由とは【写真:矢口亨、衣装:SAINT MARIA、TAUPE -JAPAN-】

 フィギュアスケート・アイスダンスのプロスケーターとして活動する村元哉中さん、高橋大輔さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じ、現在の主戦場とするアイスショーの魅力を語った。2020-21年から3シーズン活動し、2022年全日本選手権で優勝。アイスダンスの注目を引き上げ、競技会から退いて以降も挑戦を続ける“かなだい”は、今もアイスショーを通してパフォーマンスを披露する理由と情熱について吐露。そして、これからのフィギュアスケートという競技普及と未来に向け、想いを明かした。(前後編の後編、聞き手=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

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――お二人は日本では数少ないアイスダンスのプロスケーターとしてショーを舞台に活躍しています。競技会を退いてもなお表現にこだわって続けている根底にあるのはどんな想いなのでしょうか。

村元「競技はいろんなルールで縛られているので、見せられる表現が限られます。例えば、リフトの秒数など、いろんな決まり事があり、自分たちが見せたいものがMAXまでなかなか出し切れない。でもアイスショーになるとそれが全くなく、自分たちがやりたいところまでとことん追求できる。だからアイスショーに出るたびに新しい発見もあります。

 それに、アイスショーに出ることで、もっとこういう世界観をやりたいなという気持ちも芽生えてくる。競技だとジャッジ(審判員)さんに点数をつけていただきますが、アイスショーはもちろんお客さんに見て楽しんでいただくことを目指した上で、自分たちの世界観、自分たちがやりたいことをただただ追求できるところが奥深いところだと私は思います」

高橋「現役はやっぱり勝つことを目標にやっていくもの。どうやったら勝てるプログラムになるかということを考えながら選曲もしていました。でも、アイスショーは自分たちも楽しみつつ、どうやってお客さんに楽しんでもらえるかを考えていく。若いスケーターたちはショーナンバーでちょっとチャレンジングなこともしていると思うし、僕らはプロスケーターとして、試合はないので、唯一披露できる場所がアイスショー。

 これからいつまでできるか分からないですけど、『これ、やり残したことだよな』『こういうことやってみたいな』ということに挑戦していく。その延長線でお客様に楽しんでもらえたらと思っています。昔から見てくれている方は『どんなものを披露してくれるんだろう』という楽しみもあるし、新しい方には『またアイスショーに来たい』と思ってもらえるように。そういった意味では勝負の場所かもしれないですね」

高橋さんがフィギュアスケートの競技普及と未来について思うこと【写真:矢口亨】

――それだけ熱い想いの根底には、フィギュアスケートというスポーツへの情熱があると感じます。競技普及でいえば、次世代の子供たちが増えたり、あるいは“大人スケーター”のように趣味として親しんでもらったりすることも必要です。そのあたりはどう感じていますか?

高橋「地方のリンクが少しずつなくなっているし、スケートをテレビでは見るけど、間近で見たことがない方もたくさんいます。僕自身は今、見たことがない方にどうやったら見てもらえるかを考えて活動しています。一度見てくださると、皆さん『面白い』『また見たい』と言ってくれる方が増えるので。(大会などを通じた)競技普及とは違うところで、アイスショーでも様々な方に見てもらえるチャンスをたくさん作りたい。

 初めて見た子どもたちがスケートしたいと思うのか、見てくれた保護者の方が子供にやらせたいと思うのか……そんなところからも、巡り巡って普及に繋がると思うし、よりスケートを身近なものに感じてもらえるように活動をしていかなきゃいけない。それは、いつもアイスショーを滑る時でも自分でショーをプロデュースする時でも思っています。普段からいろんな方向から探っていっている、アタックしていっているという感じです」


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村元さんがこだわるのは「見に来て良かった」と心から思ってもらえるパフォーマンス【写真:矢口亨】

――村元さんはいかがでしょうか。

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村元「私はフィギュアスケート教室もやらせていただいています。私たちが小さい時はトップスケーターに習う機会なんて本当になかったので、そういったところは少し手助けできているのかなと思います。ただ、きっとできることはまだまだある。大ちゃんがプロデュースするショーも含めて、それこそ今回の『スターズ・オン・アイス』も見に来てもらって、スケートの良さを伝えることが一番早い。ショーを見に来てもらったり、スケート教室に来てもらったりというところから一つずつ積み上げていかないと。それはこれからもずっと課題になると思っています」

――実はアイスショーも現役スケーターにとっては出演費が競技生活の資金になるなど、ファンが選手を支えることに繋がる側面もあります。アイスショーがスケーターたちにもたらす意味も少なくないですね。

高橋「僕自身、若い時はアイスショーの数があまりなかったですが、だんだんと出させてもらえるようになり、たくさんの経験をさせてもらいました。お客さんの反応を生で感じられるので『自分はこういうものを求められているのか』とか、他の方のスケートを見られるので『こういうスケートをするとお客様喜んでくれるのか』とか、いろんな発見がありました。

 人前で滑ることはスケーターにとってそれだけ大切なこと。自分のスタイルを作っていったり求めていったり、知らず知らずに若いスケーターたちは感じて、お客さんと一緒にどんどん成長していける。僕自身はそうでしたから。試合とは表情や演技の見せ方も違うので、ファンの方からしてもいろんな発見があるので、『この選手を応援したいな』と思える機会にもなります」

4月の「スターズ・オン・アイス」で浅田真央さんと共演する【写真:矢口亨】

村元「競技だとリンクがあったら(一角で座っている)ジャッジさん(審判員)へのアピールになりがちだけど、アイスショーだと360度、さらに(客席の)上のところまでアピールしていく。その中で、もっと完成度を高めて競技につなげていくだけじゃなく、アイスショーはお客様がショー自体にお金を払って見に来ていただいているので、『見に来て良かった』と心から思ってもらえるパフォーマンスをしないといけない。だからこそ、私たちもアイスショーへの熱量は競技の時とはちょっと違うかもしれない。もっと熱いくらいなので、それを感じてもらえたら嬉しいです」

■アイスショー「スターズ・オン・アイス」

 1986年に北米でスタートした世界最高峰のアイスショー。歴代冬季オリンピックや世界選手権のメダリストによるグループナンバーや豪華コラボレーションなどが見どころで、今年は浅田真央さんが9年ぶりに参加。村元哉中さん&高橋大輔さんのほか、現役の日本選手では島田真央、坂本花織、三浦璃来&木原龍一(大阪公演のみ)、樋口新葉、千葉百音、佐藤駿、壷井達也、友野一希、中田璃士らの出演が決定している。大阪公演は4月5日(土)、6日(日)に東和薬品RACTABドームで、札幌公演は4月12日(土)、13日(日)に札幌市月寒体育館スケート場で開催される。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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