台湾有事の脅威は日本だけでない…周辺海域に進出する中国軍、重要なフィリピンはじめ関係国との連携(Wedge(ウェッジ))
5月の習・トランプ会談後、中国は台湾周辺を含む広い海域で軍事的威圧活動を拡大し、米国や地域の同盟国は中国の侵略の可能性に備えて作戦戦略を深化させていると、2026年7月10日付 Taipei Times 社説が述べている。 6月23日、米太平洋軍のクラーク司令官は、毎年インド太平洋地域で行われる多国間合同軍事演習は、中国による台湾侵攻の可能性に備えて各国軍が対応できるよう態勢を整えていると述べ、米軍が台湾海峡や第一列島線への中国の侵攻の可能性に備えて作戦戦略を練り上げてきたことを認めた。ホルムズ海峡の紛争が世界のエネルギー市場に混乱をもたらす中、台湾海峡は重要な海上の要衝および半導体産業の集積地として、その戦略的重要性が高まっている。 中国は5月の習近平との会談でトランプ大統領が「戦略的安定」を築くと述べたことを受けて、第一列島線に軍事配備を強化し、これが地域の安全保障への懸念を高めている。つまり、中国は米国の「戦略的安定」の追求を、中国が台湾・日本・フィリピン等、地域の諸国に対して圧力を強めることを許す「黙認」と受け取ったようだ。 中国は、日本・フィリピン間でも「特別海上交通法執行作戦」を行うと発表した。中国は尖閣諸島付近での日本の船舶への嫌がらせに加え、東シナ海の与那国島周辺の日本の排他的経済水域にも海警の船を送り込んで、日本の海上保安庁と対立し、さらに、スカボロー礁周辺で海・空両軍による哨戒を強化し、フィリピンに対しても圧力を強めている。 国家安全会議の呉釗燮・秘書長は、韓国・日本からフィリピン・ベトナムにかけて広がる中国の海上配備を示す地図を投稿し、中国は第一列島線に沿って110 以上と記録的な軍や海警の船を展開したと警告した。第一列島線に沿った中国の海洋動員の拡大は、グレーゾーンのサラミ戦術によって新たな既成事実をつくろうとするものだ。
こうした中国の動きは、国際的な懸念を高めると共に、米国と地域同盟諸国がインド太平洋全域で戦略的連携を強化する動きにもつながった。米国は、韓国、日本、フィリピン、豪州に軍の事前集積庫を設置し、素早く装備品や弾薬にアクセスできるようにした。また米国防総省はインド太平洋軍を「太平洋軍」に改称すると決めたが、これについてクインシー研究所のサラン・シドーリは、米国がより軍事化された防衛線、とりわけ第一列島線に焦点を絞ったことを示すものだと言っている。 主要7カ国(G7)諸国、英・仏・独の在台代表機関、そして米在台協会は中国の強硬な行動を批判し、米在台協会は「台湾は70年以上平和的に周辺海域を管轄してきた」と述べ、台湾が周辺海域を管轄する現状を、中国は一方的に変更することはできないことを示唆した。結局、中国の行動が強硬になったことで、台湾海峡、南シナ海、黄海、東シナ海、さらには第一列島線と第二列島線間の海域を一つながりの軍事作戦領域と捉える新たな戦略的概念が出現した。 台湾有事は日本にとって危機であるだけでなく、西側の民主主義諸国や地域の友好国、さらには国際社会にも影響を及ぼす重大な問題だ。中国はその行動によって台湾海峡の動向を世界の関心事にしたと言える。 * * *