ユーロ弱気派が強気派に転じる、ドイツの劇的な財政政策転換で
トランプ米大統領の関税を巡る騒動で非常に忙しい日となった4日、世界金融市場における最も重要な展開は、ドイツが欧州の防衛転換を図るため財政の足かせを断ち切る決断を下したことだろう。
この決定はユーロを3カ月ぶり高値に押し上げ、ドイツ国債先物から米国債まで世界的な債券売りを招き、5日のアジア時間の取引では欧州の株価指数先物が急伸している。
一部のグローバルストラテジストはユーロの対ドルでのロングポジション構築を推奨している。歳出拡大への取り組みにより、ユーロと域内の見通しが改善していることを理由に挙げている。
ドイツ銀行とソシエテ・ジェネラルは4日、米経済の見通しが悪化する中で欧州が経済のてこ入れと米関税による潜在的な影響の抑制に取り組むことを理由に、ユーロがドルをアウトパフォームすると予想した。
ドイツ政府は4日、借り入れ制限を緩和する劇的な政策転換により、防衛およびインフラ投資に数千億ユーロを費やすと表明。5000億ユーロ(約80兆円)規模のインフラ基金を立ち上げることで主要政党が合意したとも明らかにした。
これを受け、ユーロは4日に昨年12月以来の高値である1ユーロ=1.0627ドルを付けた。
ドイツ銀の為替戦略世界責任者ジョージ・サラベロス氏は「欧州、特にドイツは、財政スタンスの見直しに対して歴史上前例のない反応を示している」と指摘。「この柔軟性は、今後の関税の潜在的な影響を弱めるだけでなく、関税の影響が吸収された後は上向きの成長バイアスを生み出すだろう」と述べた。
また、すでに発表されている米国の関税は「米国経済に顕著なマイナスの影響を与える」と想定。同氏のチームはユーロの目標を1.10ドルとした。
米国経済が勢いを失いドルの重しとなる中、ドイツ政府の発表は欧州経済に対する一段の楽観につながった。
ソジェンのオリビエ・コルベール氏は4日、防衛費とロシア・ウクライナ戦争終結に向けた動きがユーロに有利に働くと言及。米国債利回りは低下しているが、ドルは「まだその動きに適応していない」ため、ドル一段安の道筋ができていると語った。
前四半期のユーロの対ドル予測に関するブルームバーグのランキングでトップだったクレディ・アグリコルもユーロ上昇を見込み、年末にはユーロが1.07ドルになると予想。
ただ、同行のG10FX調査・戦略責任者バレンティン・マリノフ氏は「貿易面で再び後退があれば」下落する可能性があると警告した。
シティグループのダニエル・トボン氏を含むストラテジストは4日のリポートで、「EU、特にドイツからの最新の発表は、防衛に向けた財政に関する確約の規模と範囲に関する予想を上回った」と記した。
原題:Germany’s Spending Gamechanger Makes Euro Bears Flip Bullish (1)(抜粋)