トヨタ新型「bZ4X」、デンソーが新開発した「インバータ」「セル監視回路」「シャント電流センサー」を採用

トヨタの新型「bZ4X」

 デンソーは10月10日、BEV(バッテリ電気自動車)の電費性能や動力性能の向上、充電時間の短縮など、実用性向上に貢献する新たな電動化製品として、BluE Nexusの新型eAxleに搭載される「インバータ」、電池のマネジメントを担う「セル監視回路(電池の電圧・温度の計測)」「シャント電流センサー(電流の計測)」の3製品を発表した。

 新製品は10月9日に発売したトヨタ自動車の新型「bZ4X」に搭載されているという。

 BEVやPHEVの心臓部ともいえるインバータは、動力源であるモーターを駆動するために、電池からの直流電流を交流電流へ変換する重要な役割を担うパーツ。航続距離の延伸と走行性能の向上を両立させ、さらに車室内空間確保のための自由な搭載ニーズに応えるため、インバータは体格を抑えつつ、電力損失や発熱を抑制し、大電流に対応する性能が求められる。

新開発のインバータ

 そこでデンソーは、この技術課題に対応するため、得意とする両面冷却技術をベースに、冷却設計やパワー半導体などの強みを融合させた新たな“平置き両面冷却構造”のインバータを開発。SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体や、その周辺回路・構造設計、高冷却技術などの各要素技術をさらに進化させるとともに、それらを最適に組み合わせる統合技術により、体格を抑えながらも飛躍的な高効率化を達成し、世界最高の出力密度(体積:Lあたりの出力:kW)を実現した。

 インバータの電力損失は、Si(シリコン)を採用したデンソー従来製品と比較して約70%低減したほか、主に半導体と冷却水路で構成される本製品の中核を担うコアモジュールでは、約30%の小型化を達成したとしている。

インバータの中核部品:コアモジュール

 デンソー独自の3次元構造技術を採用し、世界最小のオン抵抗値を持つSiCパワー半導体を開発。インバータのさらなる低損失を実現。また、樹脂絶縁基板と通電経路の工夫により、従来製品比でインダクタンスを約50%低減したことで可能となる高速駆動によって、パワー半導体の性能を最大限に引き出せるようになった。

 さらに、カーエアコンやエンジン冷却で培った熱マネジメント技術を応用して、楕円型ピンフィンを用いた放熱形状を最適化し、市場トレンド比で約40%優れた冷却性能を達成。加えて、デンソー独自の両面冷却技術を組み合わせることでパワーカードの平置き配置を可能にし、中核部品であるコアモジュールの小型化と大電流対応を両立。両面冷却の流量バランスや冷却性能に応じた素子の配置など、各要素技術を最適に融合することで、低損失と高冷却性能の効果を最大限に発揮し、従来の積層両面タイプの50kW/Lから、平置き両面タイプとしたことで世界最高の出力密度85kW/Lを実現した。

 BEVやPHEVでは、電池の電圧・電流などを計測し充放電制御を行なうことで、電池を安全かつ安定的に、長寿命化を図りながら使用することが求めらるほか、BEVの航続距離拡大のニーズに対応し、電池セル数の増加が進む中、コストを抑制しながら高電圧・大電流を精度よく検出できる、効率的なモニタリング技術の重要性が高まっているという。

 そこでデンソーは、独自の半導体技術を活用した新ICの創出や、材料特性の精緻な検証を踏まえた検出精度をさらに高める技術開発を推進し、新たなセル監視回路とシャント電流センサーを開発。これにより監視回路数を低減してコストを抑えながら、電池や電流の状態をより高精度に計測することが可能となり、BEVの充電時間短縮にも貢献するとしている。

セル監視回路

 デンソー独自の高耐圧半導体技術を活用し、世界初となる28chセル電圧監視ICを開発(従来品は25ch)。高精度な電池監視を実現するとともに、従来技術を採用した場合と比較してセル監視回路の搭載数を20%削減を実現した。

 また、監視IC周辺回路にかかるノイズストレスの定量化技術と、監視ICおよび基板設計の最適化ノウハウを活用し、過電圧・ノイズ対策部品を削減したことで、電池の安全な使用、寿命延長およびコストダウンの両立を達成した。

シャント電流センサー

 電流監視において、従来は磁気センサーを使用していたが、検出精度に限界があったため、高精度に測定できる「シャント抵抗方式」を採用。ただし、シャント抵抗は、その周辺温度や銅との溶接に起因する個体差により抵抗値にばらつきが生じるため、補正が必要だった。そこでデンソーは、シャント抵抗材料の特性検証を実施し、ばらつきが発生する温度特性範囲を明確化。さらに、デンソー独自の補正技術・ノウハウを応用することで、最小限の温度データのみで多点補正と同等の精度向上を可能とする新たな補正ロジックを開発。これらによりコストを抑えながら、従来製品比で検出誤差を半減し、BEVの充電時間短縮に貢献するとしている。

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