地下鉄サリン事件、アレフの被害賠償進まず…関連法人名義の多額の資産は差し押さえできず
オウム真理教が起こした1995年の地下鉄サリン事件から20日で30年。遺族らは教団側に賠償責任を果たすよう求め続けてきたが、後継団体による被害賠償は滞っており、国による抜本的な対策を求めている。
10億円未回収
「アレフに被害回復するための賠償を行わせるべく手を尽くしたいが難しい」
20日午前、現場の一つとなった東京メトロ霞ヶ関駅。「オウム真理教犯罪被害者支援機構」理事長の宇都宮健児弁護士(78)は献花後に、そう語った。
献花後、報道陣の取材に応じる高橋さん(右から2人目)、宇都宮弁護士(右端)ら(20日午前、東京都千代田区の霞ヶ関駅で)機構は、被害者に代わり、オウム真理教の後継団体主流派「Aleph(アレフ)」に支払いを求めている。だが、依然として、約10億円が回収できないままになっているという。
オウム真理教は、地下鉄サリン事件の他、坂本堤弁護士一家殺害事件や松本サリン事件などを起こした。96年に破産し、被害者ら約1200人への賠償金として約38億円の債務を負った。
アレフは2000年、被害者側への支払い義務を引き受けることで破産管財人と合意。その後、破産手続きで被害者側に約15億円が配当され、機構が残る約23億円の債権を管財人から引き継いだ。
「資産隠し」
オウム真理教による事件の損害賠償を巡る経緯機構は18年、国から被害者側に支払われた給付金約8億円などを除き、10億円超を支払うようアレフに求めて提訴。アレフに全額の支払い義務があるとする判決が20年に確定した。
だが、全額の支払いは実現していない。機構は20~21年、判決を基に強制執行をかけたが、回収できたのはアレフ所有の現金など計約4200万円にとどまる。
公安調査庁の立ち入り検査では、アレフの関連法人の名義で管理された多額の現金が見つかっているが、強制執行で差し押さえができるのはアレフの資産のみで、回収できない事態となっている。
同庁は23年に作成した調査書で、アレフが機構による差し押さえを免れるため、資産を関連法人に移転させる「資産隠し」に及んでいると指摘。アレフが国に報告していない資産は約7億円に上ると推計している。
任せっぱなし
事件の遺族らは今月12日、法務省や同庁に要望書を提出した。未払いとなっている約10億円の債権を買い取って被害者側に配当し、アレフから回収するよう求めた。
機構副理事長の中村裕二弁護士(68)は「被害賠償金の回収を国が被害者や遺族に任せっぱなしにしているのはおかしい」とし、「国が債権を買い取ることで被害者側への配当が早期に実現し、アレフの危険性の低減にもつながる」と訴えた。
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