セ・リーグはなぜ交流戦で"大敗"? 元MVP捕手が指摘…明白だった「打撃の技術」
プロ野球はセ・パ交流戦が終了し、27日からリーグ戦が再開する。中日でMVPに輝くなど巨人、西武と3球団で名捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏は、昨年はパ・リーグ最下位に終わった西武の健闘ぶりを高く評価している。
今季の交流戦は3年連続でパが勝ち越した。加えてパ6球団が上位6位までを独占し、セは7位の広島でさえ勝率5割がやっと。明確に分かれた。
中尾氏は「もちろん全部が全部の試合を見れた訳ではないですが」とした上で、見解を示す。「パの選手の方が打撃の技術がちょっと上かなという感じ。外国人選手は抜きにして、無理に引っ張らずバットが内から出ている。しぶとい打者が多い気がしますね。また、悪い球、自分が打てそうもないボールには手を出さない。ストライクでも自分の狙いをしっかり決めて打っている。キャッチャーからすると、ボール球を振ってくれるというのはすごく助かるんですよ。そういう差が出ていると思います」
強かったパ。中尾氏は古巣の西武に注目した。交流戦18試合で40得点、3本塁打は12球団最少ながら10勝8敗と貯金を作った。「パだけでなく、セにも好投手はいます。いいピッチャーがコントロールのいい時はなかなか攻略できません。そうした少ない点数の時でも勝てるチームが強いんです。西武は今年、それが出ている」と指摘する。
西口監督の雰囲気も好影響 「借金42の最下位→リーグ優勝」なら「凄い事」
投手力が大きい。中尾氏は17日のDeNA戦(横浜)をテレビ観戦していた。今井達也投手が“怪物”と称された松坂大輔の球団記録を更新する17三振を奪った。「結果的に逆球も多かったけど、真っ直ぐが高めにストライクかボールかギリギリの所にいった。今の打者は高めは打てないんですよ。逆球がいい方にいった。スピードがあって、ボールも強いし、スライダー、フォークのキレも良かった。DeNAの選手たちは打てる気がしなかったでしょうね」。エースを絶賛した。
左腕で隅田知一郎、昨年の新人王・武内夏暉、右も高橋光成、渡辺勇太朗、下手投げの与座海人ら先発陣は多士済々。抑えの平良海馬につなぐリリーフ陣も甲斐野央、エマニュエル・ラミレス、山田陽翔らが控える。
中尾氏は、1軍の指揮官1年目の西口文也監督が醸し出す雰囲気も好影響を与えていると推察する。中尾氏がコーチ時代の1995年に西口監督は期待の投手として入団してきた。「おっとり、ひょうひょうとしていた。喜怒哀楽をあまり出さなかったけれど、監督となった今も変わらない感じ。口うるさくないのでは。選手からしてみたら、それがいいんじゃないかな」。鳥越裕介ヘッドら西武に新加入のコーチも多いが、「わからない事は全部、この人たちに任せておけば大丈夫と信頼し切っていると思います」
西武は首位の日本ハムから3・5ゲーム差の4位で、再びパ・リーグ同士の戦いに向かう。上位争い生き残りへの条件は何か。「競っている試合をどれだけ取れるか。投手陣の層が厚いので、乗り切れる可能性は十分ある。あとは爆発とまではいかなくても、どれだけ打つか。まあ、どのチームも同じですけど」。ここまで1点差ゲームは16勝8敗と好成績。新助っ人タイラー・ネビン外野手は勝負強い打撃で5月の月間MVPを獲得している。
西武は昨シーズン借金を42も抱えて最下位に沈んだ。中尾氏は「西口監督は、あれだけ悪い事はもうないと、たぶん開き直ってやっている部分はあると思いますよ。球団だって今年いきなり優勝とかは考えてないでしょう。気楽と言ってはおかしいが、気持ち的には楽」と引き続き挑戦者の姿勢を望む。
まだシーズン半ば。とはいえファンは優勝の夢も見たくなる。「ないことはない。今、貯金が6つもあるんですから」。前年に最下位だったチームのリーグ優勝はセ・パ2リーグ分裂後7度ある。「借金40を超えていたチームが優勝したら凄い事。しかも監督1年目で優勝したら、西口監督は大監督ですよ」。中尾氏は密かに“ミラクル”に期待を寄せる。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)