マスク氏の政権離脱カウントダウン、影響力は維持へ-複雑に絡む思惑
イーロン・マスク氏は、トランプ米大統領の臨時顧問としての130日間の任期が終了すれば、「政府効率化省(DOGE)」を率いる役割から退く見通しだ。しかし、退任後も連邦政府のコスト削減には引き続き大きな影響力を持ち、トランプ氏の側近としての立場も維持するとみられる。事情に詳しい複数の関係者が語った。
マスク氏は現在、年間最大130日の勤務が可能な特別政府職員という立場にある。この日数をトランプ大統領の就任日から数えると、任期は5月30日に終了することになる。ただ正式な退任日はまだ設定されておらず、マスク氏が130日間勤務したかどうかを判断する責任はホワイトハウス法律顧問室が担っているという。非公開の協議内容であることを理由に関係者は匿名で述べた。
一方で複数の関係者によれば、連邦政府機関での大規模人員削減などを急速かつ波乱含みで進めてきたDOGEは今後も存続する見通し。DOGEの職員は、さらなるコスト削減と人員削減を求めて引き続き各機関にとどまるという。
マスク氏はここ数日、政治的にもビジネス面でも逆風にさらされた。ウィスコンシン州最高裁判所の判事選挙では、マスク氏が支援していた保守派は民主党系の候補に敗れた。また同氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラは、1-3月(第1四半期)の販売台数が前年同期比で13%減少し、ほぼ3年ぶりの低水準となった。そこにはマスク氏の政治活動も影響しているとみられる。
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トランプ氏の顧問の1人によれば、トランプ氏はマスク氏がどのような肩書きを持っているかには関心がなく、今後もマスク氏はホワイトハウスに頻繁に姿を見せる可能性が高いという。
ホワイトハウスにコメント求めたが、返答は得られていない。
トランプ大統領自身も、マスク氏による政府コスト削減活動の終わりについては公の場で言及している。トランプ氏は先週、「今後1-2カ月でDOGEによる削減には満足できるだろう」と発言。また「DOGEの改革は必ずしも人気のあることではない」とも語り、この取り組みが政治的リスクを伴うものであることを認めた。
関係者によると、トランプ政権の上級補佐官や閣僚、共和党議員らは、手続きや慣例を無視するマスク氏の強引なやり方に嫌気が差している。事前承認を得ずに改革が進められていることも少なくないため不満が高まっているという。
それでも、マスク氏は2つの重要な役割を担っていると関係者は口をそろえる。1つは、トランプ氏の物議を醸す行動から世間の目をそらす「代理キャラクター」のような存在であること。もう1つは、トランプ陣営が資金面でマスク氏に大きく依存しているという点だ。
トランプ氏の側近たちは2026年の中間選挙に向けてマスク氏を引き続き大口献金者として確保しておきたいと考えているため、同氏を批判することには慎重になっているという。
マスク氏は先週のFOXニュースのインタビューで、自身の任期が130日間に限られていることを認めた上で、その期間で1兆ドル規模の削減を実現できると信じていると語った。ただ、2024年度の国防を除く裁量的プログラム支出は1兆8000億ドルであり、マスク氏の意欲的な削減目標はこの半分強に相当する。
原題:Musk’s White House Role Is Ending But His Influence Will Remain(抜粋)