育成出身→4番定着の22歳 衝撃弾の裏に2軍監督の教え…指揮官が驚いたスイングの"意味

■ロッテ 5ー4 ヤクルト(15日・ZOZOマリン)

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 ロッテ・山本大斗外野手が15日、ZOZOマリンスタジアムで行われたヤクルト戦に「4番・左翼」で先発出場。プロ初となる2打席連続本塁打を放ってチームを活気づけた。今季プロ1号を記録して頭角を現した育成選手出身の5年目22歳。交流戦から4番に座る新主砲が、本格化の気配を漂わせている。

 豪快過ぎる一発だ。2点を追う4回無死一塁。ヤクルト・高橋のカウント3-0からの150キロ直球を思い切り振り抜いた。「3ボールだったので、甘いところに来たらいってやろうと思っていました。そのポイントに来て、自分のスイングで打つことができたので良かったです」。プロ初の4番に入った4日の巨人戦(ZOZOマリン)以来10試合ぶりの5号は、左翼席上段で弾む特大の同点2ランだった。

 カウント3-0からは打者は1球見逃すケースが多い。凡退するとダメージが大きいからである。加えてビハインドの展開だと四球で走者をためたい心理が働く。吉井理人監督も「3ボールだと打つ選手は少ないんですけど、勇気を出して振り抜いてくれた。見事でしたね」と称えた一撃。山本は「真っすぐが来ると思っていたので、空振りかホームランと思って、どうなってもいいからいったろうと振りました」と狙いすました一発だったことを明かした。

 3ボールでも待てのサインは出ていない。前日14日の第1打席でも3ボールの状況になったが、1球甘い変化球を見逃した末に空振り三振に倒れたことが頭にあったという。「昨日も、3ボールからいけたなと思ったんです」。その反省に加え、この試合の第1打席で中途半端なスイングで変化球を引っかけて遊ゴロに倒れた後、サブロー新ヘッドコーチに呼ばれて「ピッチャーを助けすぎや!」と叱責され、打席での覚悟を決めた。

 現役時代に“つなぎの4番”として勝負強い打撃を披露してきたサブロー・ヘッドは2日に2軍監督から配置転換。2軍監督時代から指導を受けてきた山本は、狙い球をしっかり絞ることの重要性を改めて叩き込まれたのである。迷いなきスイングで飛び出した特大アーチを「人生で一番の当たり。本当に球場を超えたと、場外だと思いました。実際は全然でしたけど」と振り返った。

父の日&祖父の命日…約束守ってお立ち台で絶叫

 180センチ、88キロの右の大砲は、これで終わらない。2-2の6回無死一塁。今度はカウント2-0からのチェンジアップを捉えた。「前の打席と同じでカウント有利だったので思い切りいきました。変化球がくると頭にあって、本当にきたのを仕留められて良かったです」。再び腹をくくってファーストストライクを狙いすまし、リプレー映像のような一撃。プロ初の2打席連続アーチとなる一時勝ち越しの6号2ランは弾丸ライナーで左翼席に届いた。

 2020年育成ドラフト3位で入団。2年目の2022年7月に支配下登録されると同年は代打で2試合に出場した。2023年は2試合に出場してプロ初安打も記録。昨年は1軍で5試合に出て打率.111だったが、イースタン・リーグでは19本塁打、66打点で2冠王となり、飛躍を期待されていた逸材だ。5年目を迎えた今年は、オープン戦は打率.063と振るわず開幕2軍スタート。4月12日に出場選手登録されると、同16日の日本ハム戦でプロ初アーチを放って以降、徐々に出場機会を増やしてきた。

“ダイナマイト”の愛称を持つ若きスラッガーは、交流戦初戦となった4日の巨人戦で初めて4番に座り、交流戦は全11試合で4番を担う。「あまり打順は意識しないようにしている。でも今日は4番らしい仕事ができました」。2打席連発どころか1試合2本塁打も初めて。サヨナラ勝利を収めた吉井監督は「ベンチが下手くそで、山本がヒーローになる展開にならなかった」と自らを責めつつ、流れを変えた2発を「よく打ってくれた。2本目は変化球を待っていたと思うし、成長している。今後も楽しみです」と目を細めた。

 父の日と、祖父の命日が重なった一日。スタメン平均年齢25.9歳と若いオーダーの中心に座る山本は試合前、父・明さんに「ありがとう。ホームラン打つわ」とLINEしたという。これ以上ない贈り物を届けて約束を果たし、お立ち台では「お父さん、打ったよ~!」と絶叫した。首脳陣から「三振かホームランでいい」と長打を期待される背番号61。パ・リーグ最下位からの逆襲へ、孝行息子のたくましい成長は頼もしい限りだ。

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