「なぜ働くの?」ソニー創業者の元側近が、90歳でも週5通勤する本当の理由(ダイヤモンド・オンライン)
元ソニー常務であり、現役の経営者として、いまも週5日通勤しつづけている90歳。そんな郡山史郎さんは、「なぜ、働き続けるのですか?」という質問に、つい最近まで私自身にも明確な答えはなかったといいます。70年近く働き続けてきたビジネスマンが気づいた、長く働く理由、そのモチベーションとは。郡山さんの著書『君の仕事は誰のため?』(青春出版社)から、お金や成果を超えた「人生を面白くする働き方」のヒントを紹介します。 ● 90歳までたどり着いて、 やっと働く意味がわかった 2025年4月、私はついに満90歳を迎えた。現在でも現役の経営者として働いている。大田区の自宅から赤坂のオフィスまで、杖をつきながら週5回通勤している。満員電車で席を譲られることは増えてきたが、まだまだ自分の足で立っていたい。 人生100年時代といわれる現在、多くの人が長く働き続けることを求められている。しかし「なぜ働くのか」「どのように働けばよいのか」という本質的な問いへの答えを持っている人は、少ないのではないだろうか。 あなたが20代なら、自分のキャリアをどう築いていけばよいか悩んでいるかもしれない。30代、40代なら、家族との時間と仕事のバランスに苦慮しているかもしれない。50代なら、定年後の人生設計に不安を感じているかもしれない。 私自身を振り返ってみると、若い頃は自分のために働いた。家族ができると、家族のために働くようになった。社内でのポジションが上がり、仲間のために働いた時期もある。やがて社会のために働くようになり、定年を超えてもなお働き続けている。そして90歳になって、ついに働くことの本当の意味がわかった。
この答えにたどり着くまでに、私は70年を費やした。しかし、この記事を読むあなたなら、もっと早く「働くことの意味」を見つけることができるかもしれない。 ● 「世の中の役に立つことをやりなさい」 井深大さんの教え 私は1958年、大学を卒業して伊藤忠商事に就職した。ところが海外勤務への憧れを諦めきれず、1年で転職してしまう。転職先は、まだほとんど無名だったソニー。 ソニーでの32年間は、日本経済の高度成長期、バブル期、そしてバブル崩壊後を経験し、まさに激動の時代だった。 スイスやアメリカに駐在し、帰国後は厚木工場で事業責任者となり、最終的には本社で常務取締役まで務めた。ソニーを去ったあと、66歳で人材派遣会社の「新入社員」となり、68歳で人材紹介会社を起業した。以来21年間で約5000人を超える方々の転職をサポートしてきた。 私がいまなお働く理由の一つに、ソニー創業者の井深大さんから聞いた言葉の影響がある。 私はソニーの取締役を退いたあと、子会社であるソニーPCLの社長となった。当時、同社の会長は井深さんで、私は毎月、井深さんのご自宅を訪れ、会社の状況を報告していた。 ある日のこと、ベッドに横たわる井深さんが静かな声で言った。 「世の中の役に立つことをやりなさい。頼みますよ」 何の話題だったかは記憶にない。ただ、井深さんが噛み締めるように話した声は耳に残っている。 当時の私は60代。井深さんは90歳に近かった。「そうですね」と答えたものの、正直なところ、心の奥で「当たり前のことを言っているな」と思う程度にしか受け取れなかった。 四半世紀が過ぎて自分が90歳になったいま、あの言葉の重みを感じている。井深さんは、働くことについて究極の意義を教えてくれたのだと思う。 ● 「自分のために働くな。 会社のために働くな」 ソニーがまだ町工場の雰囲気だった頃、井深さんの通訳係によく駆り出された。英語に堪能な先輩もいたので、なぜ私に声がかかったのか、いまでも不思議だ。 思うに井深さんの話題は技術系の専門用語が多く、しかも興に乗ると通訳の都合に関係なくしゃべりまくる。そのうえ井深さん自身も英語はそこそこしゃべれたから、途中で「その訳は間違っている」などとダメ出ししてくることもあった。それで面倒くさいからと先輩たちに敬遠され、新米の私にお鉢がまわってきたのだろう。