OpenAI「日本はチャンス」開発者に250ドル大盤振る舞いのワケ(アスキー)
OpenAI Japanが開発者イベント「DevDay Exchange」を東京で開催。「AIはインフラになった」と宣言し、開発者400万、週次アクティブユーザー8億超と急速な成長を報告した。 【もっと写真を見る】
OpenAI Japanは11月11日、開発者向けイベント「DevDay Exchange」を都内で開催した。2024年に設立された日本法人による本格的な開発者向けイベントとして、サンフランシスコで10月6日に開催された本家「DevDay」の最新技術情報の共有や日本市場での具体的な活用事例、新機能のデモンストレーションが披露された。 イベントの冒頭、OpenAI Japan DevExエンジニアの瀬良和弘氏は、日本法人の設立以来、開発者向けの活動を本格化させていると説明。OpenAIのプラットフォームが急速に成長していることを示すデータとして、2023年には開発者200万人、ChatGPTの週次アクティブユーザー1億人、API利用のトークン量が毎分3億だったのに対し、2025年現在(イベント開催時点)では開発者400万、週次アクティブユーザー8億超、APIトークン量は毎分60億へと爆発的に増加したことを明らかにした。瀬良氏は「2023年はAIを試す段階だったが、2025年はベストプラクティスが確立され、AIはインフラとして稼働するステージに入った」と分析した。 サンフランシスコのDevDayでは1600人以上が参加し、日本からも多くの開発者が参加した。キーノートではCEOのサム・アルトマン氏が、現在90歳のデベロッパーである鈴木富司さんを紹介。鈴木さんは74歳でアプリ開発を始め、ChatGPTをフル活用して高齢者の困りごとを解決する11種類もの無料アプリを開発・公開しているという。 日本企業の先進的な取り組みとしては、LegalOn Technologiesを紹介。同社は、後述するAIエージェント開発ツールキット「AgentKit」をクローズドベータ段階から活用し、ChatKitの導入によりAIエージェントのUIをわずか1日で開発可能にし、開発コストを80%削減したという。この事例はAgentKitのグローバル発表の場でも披露された。 デモセッションで新機能「AgentKit」「Codex」などを徹底解説 イベントでは、開発者向けの新機能として主に3つのデモンストレーションが行われた。1つ目は、AIエージェントを容易に開発するためのツールキット「AgentKit」だ。これは、ノーコードツールでAIエージェントを構築できる「Agent Builder」と、それをChatKitで簡単にWebサービスに統合できるもので構成される。デモを担当したRyan Cain氏(テクニカルプログラムマネージャー)は、エージェントの構築から評価(Evals)までをシームレスに実施する開発ループを紹介した。 2つ目は「Apps in ChatGPT」だ。これは、ChatGPTの会話インターフェース内にサードパーティ製のアプリUIをシームレスに組み込める機能だ。新たに提供されるApps SDKとMCP(Multi-Companion Protocol)ベースにより、インタラクティブなUIを実現する。デモを担当した國田有華子氏(ソリューションアーキテクチャー)は、Developer Modeでプロトタイプ検証が可能であるとし、自然な会話の流れの中で「温泉コンシェルジュ」という外部アプリが起動し、ビジュアルなUIで旅館を検索・絞り込む様子を示した。 3つ目は、AIコーディングツール「Codex」だ。DevDayにて正式リリース(GA)となった。ローカル(CLI/IDE)とクラウドタスクのシームレスな連携が特徴で、ChatGPTアカウントで利用できる。デモを担当した石田修平氏(ソリューションアーキテクチャー)は、GitHubと連携したPR(プルリクエスト)の自動レビュー機能などを紹介。また、「Codexに関する誤解を解きたい」とし、「GitHub連携は必須ではなくなった」「ローカルとリモートはシームレスに連携可能」といったTIPSを解説した。 さらに、APIに関してもアップデートが紹介された。最新の最高峰モデルである「gpt-5-pro」がAPIから利用可能になったほか、リアルタイム音声会話モデルの低コスト版「gpt-realtime-mini」、画像生成モデルの低コスト版「gpt-image-1-mini」がリリースされている。加えて、大きな話題を呼んだ動画生成AIの最新版「Sora 2」(sora-2 / sora-2-pro)もAPI経由での利用が解放され、動画の生成から管理までAPIで操作可能となった。 OpenAIは日本市場と開発者に期待! 250ドル分のAPIクレジット提供にどよめき クロージングに登壇した中野武重氏(アカウントディレクター)は、OpenAIが日本市場のポテンシャルを高く評価していると強調。日本はアメリカに次いで世界で初めての海外法人設立国であり、ChatGPT for Businessのユーザー数は世界2位だという。同氏は「日本には高齢化社会への対応や多言語対応など、世界がまだ直面していない課題がある。これは世界に先駆けて新しいソリューションを作るチャンスだ」と語り、日本の開発者への期待を示した。 本イベントではLegalOn Technologies、Recursive、Habittoの3社がデモブースを出展。最後に、参加者全員にOpenAIのAPIクレジット250ドル(約3万8500円)分を提供することが発表され、会場は大きな拍手に包まれた。 文● サクラダ 編集●飯島恵里子/ASCII