【日本市況】債券下落、日銀の追加利上げ意識-円は下落、株式上昇

31日の日本市場では債券が下落(金利は上昇)。前日に日本銀行の氷見野良三副総裁が金融政策正常化の姿勢を示したことで追加利上げへの警戒感が強まった。円は対ドルで154円台後半に下落。株式は3日続伸した。

  氷見野副総裁は30日の講演で、日銀の経済・物価見通しが実現すれば「それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と述べた。31日は総務省が発表した1月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)が11カ月ぶりの高い伸びとなり、日銀が目標とする2%を3カ月連続で上回った。 

   三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、債券相場の軟調推移について「日銀による半年に1回ペースの利上げが意識されている。市場はやや織り込み不足だ」と指摘した。

   日銀の植田和男総裁は31日、衆院予算委員会で答弁し、目指しているのは賃金上昇を伴う緩やかな物価上昇の姿だと述べた。基調的な物価上昇率はまだ2%を少し下回っているとの認識も示し、徐々に高まっていくように緩和環境を維持すると語った。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、植田総裁は国会答弁を無難に乗り切った印象だと話す。もっとも、債券相場は軟調な展開が続き、「来週公表される金融政策決定会合の主な意見や田村審議委員の講演が警戒されている面があるかもしれない」と述べた。

国内債券・為替・株式相場の動き
  • 長期国債先物3月物の終値は前日比34銭安の140円67銭
  • 新発10年債利回りは一時3.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.245%と、15日以来の高水準
  • 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.3%安の154円75銭-午後4時26分現在
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は0.2%高の2788.66
  • 日経平均株価は0.1%高の3万9572円49銭

債券

  債券相場は下落。日銀の追加利上げへの警戒感が強い上、米国の長期金利が時間外取引で上昇していることを受けて売り圧力が強まった。

  財務省が31日実施した2年物国債の入札結果は順調だった。最低落札価格は99円94銭と市場予想99円92銭5厘を上回った。応札倍率は4.06倍と前回3.95倍から上昇。小さいほど順調な入札とされるテール(落札価格の最低と平均の差)は6厘で、前回の5厘からやや拡大した。

  大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、「しばらく利上げが見込まれない中で、年度末を控えて利回り水準に妙味がある」と述べた。

関連記事:日本債券:2年利付国債の過去の入札結果(表)

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.720% 0.900% 1.240% 1.935% 2.285% 2.660% 前日比 +1.0bp +2.0bp +3.0bp +3.5bp +2.0bp +2.0bp

為替

  東京外国為替市場の円相場は1ドル=154円台後半に下落。米長期金利の時間外での上昇を受けて円売り・ドル買いが優勢になっている。日銀の植田総裁が国会答弁で「基調的な物価は2%をまだ下回っている」などと発言し、利上げを急がない姿勢を示唆したことも円売りの要因になった。

  ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、総裁発言がハト派的と捉えられた可能性があると指摘した。為替レートの変動がインフレ率にさまざまな影響を与えることは十分に認識しているなどと話し、低い金利で放っておくわけではない可能性も示したが、為替市場では円売りの材料となったようだと述べた。

  関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、きょうは月末の資金フローが中心だとし、「朝方にドルが売られた反動も出ているようだ」と指摘。米金利は数日前と比べると下がっており、ドル高の勢いは収まってきているとして「方向としては緩やかなドル安方向とみている」とした。

株式

  株式相場は3日続伸。好決算への期待から東京エレクトロンなど半導体製造装置や電気機器の一部が買われた。

  日経平均構成銘柄ではNECが上昇率首位。前日に通期の業績見通しを引き上げ、株価は終値で18%上昇した。コマツは取引中に発表した決算が市場予想を上回り、株価が急伸して機械セクターを押し上げた。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、オランダのASMLホールディングの受注が好調だったため、来週の東エレク決算に期待が高まっていると話す。こうした業績期待がハイテクセクターや相場全体を支えていると述べた。

  一方、オリエンタルランドは第3四半期決算で入園者数が低迷し大幅安。フジ・メディア・ホールディングスも下落した。フジテレビの広告収入減少を受けて今期の業績予想を下方修正した。

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