【米国市況】株・国債ともに上昇、次期FRB議長巡る報道で-156円前半

25日の米国株は3営業日続伸。市場では12月の利下げ観測が再び強まった。一方、人工知能(AI)分野での開発競争を背景に大型テクノロジー銘柄のバリュエーションが押し上げられた。

  また米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長人事を巡り、ハセット国家経済会議(NEC)委員長が最有力候補に浮上しているとのブルームバーグ報道を受けて、米国債利回りが低下。ドル売りが優勢となった。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6765.88 60.76 0.91% ダウ工業株30種平均 47112.45 664.18 1.43% ナスダック総合指数 23025.59 153.58 0.67%

  S&P500種株価指数は、朝方は方向感に欠ける展開も見られたが、午後にかけて上げを拡大した。テクノロジー銘柄中心のナスダック100指数も一時の下げから切り返した。この日発表された最新の経済データを受け、米連邦公開市場委員会(FOMC)が来月利下げに動くとの見方が一段と強まった。前日も、こうした楽観的な見通しが株高を支えていた。

  個別銘柄では、アルファベットが上昇。一時は時価総額が4兆ドルに迫る場面もあった。メタ・プラットフォームズは2027年にデータセンターでグーグルの半導体、テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)を採用する方向で協議していると、ニュースサイトのジ・インフォメーションが関係者の話として報じた。これを受け、エヌビディア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、オラクルの株価は軟調に推移した。

  プレボア・アセット・マネジメントのグローバルファンドマネジャー、ファレス・ヘンディ氏は「エヌビディアがポートフォリオで最大の比重を占めるが、株価下落には全く不安を感じていない」とし、「正常に機能している市場経済の中でグーグルがこの分野に参入するのは健全なことだ。それだけこの市場の可能性が大きいということだ」と述べた。エヌビディアは2.6%安で引けた。

  テクノロジー銘柄ではアップルやメタ、アマゾン・ドット・コムなどが上昇。ヘルスケア銘柄の上げもS&P500種の支えとなった。

   朝方発表された9月の小売売上高は小幅な増加にとどまった。また9月の生産者物価指数(PPI)は前月比で上昇に転じた。エネルギーと食品の価格上昇を反映した。11月の消費者信頼感指数は、7カ月ぶりの大幅低下となった。労働市場と経済に対する懸念の強まりが背景にある。

  金利先物市場では、12月の米利下げに対する織り込みが約80%となった。ここ数週間は見通しが揺れていたが、一部当局者によるハト派的な発言を受け、追加緩和の観測は着実に強まっている。

国債

  米国債相場は上昇し、10年債利回りは1カ月ぶりに4%を付けた。ハセットNEC委員長が次期FRB議長の最有力候補に浮上したとのブルームバーグ報道に反応した。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.65% -1.6 -0.33% 米10年債利回り 4.00% -2.7 -0.67% 米2年債利回り 3.45% -4.2 -1.21%     米東部時間 16時41分

  この報道を受け、市場では今後1年の金利低下観測が一気に強まった。ハセット氏が、トランプ大統領が求めてきた積極利下げを実行するとの見方が広がったためだ。

  利回りは全てのゾーンで低下し、10年債は2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下の4%となった。これは10月のFOMC会合以来の低水準。

  みずほのマクロ戦略責任者、ジョーダン・ロチェスター氏は「今後はドル安、5月会合以降の短期金利低下、そしてイールドカーブのスティープ化という展開になるだろう」と分析。ハセット氏については「FRBでシニアエコノミストを務めた経歴を持つ信頼できる経済学者だが、トランプ氏との近さに対し懸念の声が上がる可能性もある」と述べた。

  またTJMインスティテューショナル・サービスの金利ストラテジスト、デービッド・ロビン氏は、ハセット氏が加われば、「6月以降は50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げを積極的に主張する投票メンバーが2人になる。よほどの反対がない限り、FRB議長の意向はおおむね通る」と指摘。「ハセット氏が就任なら、パウエル議長後の最初の1、2回のFOMC会合では50bpの利下げになる可能性が高まる」と付け加えた。

為替

  外国為替市場ではドルが売られた。ウクライナの和平合意交渉を巡る報道を受けて、ドルは朝方から軟調に推移。ハセットNEC委員長が次期FRB議長の最有力候補に浮上したと報じられると、下げを拡大した。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1223.05 -3.80 -0.31% ドル/円 ¥156.07 -¥0.82 -0.52% ユーロ/ドル $1.1571 $0.0050 0.43%     米東部時間 16時41分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.5%低下。9月半ば以来の大幅な下げとなった。TDセキュリティーズのジェナディー・ゴールドバーグ氏は、中長期的には投資家はFRBの独立性やインフレ抑制を懸念していると指摘した。

  円は対ドルで堅調に推移し、一時155円80銭を付けた。城内実経済財政担当相は為替市場について、投機的動向を含め高い緊張感を持って見ていると述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反落。ウクライナとロシアの和平協議で進展の兆しが見られ、ロシアからの供給が継続するとの思惑から売りが膨らんだ。

  ABCニュースが米当局者の話として、ウクライナが和平案の条件に合意したと報じたことをきっかけに売りが出た。

  ウクライナのゼレンスキー大統領は、和平案に関する協議が米国との間で継続していると述べた。事情に詳しい関係者によれば、米国とウクライナの間では依然として重要な争点が残っており、最も難しい課題についても合意に至っていないという。ホワイトハウスの報道官は、この取り組みに対して楽観的な見方を示す一方で、いくつかの詳細については依然として調整が必要であるとの見方を示した。ロシアがこの和平案に対してどのような立場を取っているかは明らかになっていない。

関連記事:ウクライナ和平は追加交渉必要、懸案残る-ホワイトハウス報道官 (2)

  戦争が終結すれば、原油市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。ロシアは世界有数の産油国であり、米国、欧州連合(EU)、英国はウクライナ侵攻を受けてロシア産原油に厳しい制裁を発動。10月にはロシアの主要2社に対して、米国が新たな制裁を発表した。ただ、ロシアが和平案を受け入れるかどうかは依然として不透明だ。欧州側の意見を踏まえ、複数の項目が削除されるなど初期案から修正が加えられているためだ。

  ライスタッド・エナジーの地政学分析責任者、ホルヘ・レオン氏は「エネルギー市場にとって、ボラティリティーが収まることは当面なさそうだ」と指摘。「和平合意への期待を受けて価格は即座に反応したが、根本的な不確実性は何も変わっていない。ウクライナ各地で戦闘が続き、いくつかの核心的争点が解決されていない現状では、ウクライナやロシアの政府からの新たな情報が相場を上下どちらにも大きく動かす可能性がある」と語った。

関連記事:原油価格、ウクライナ和平進展で一時2.5%安-供給増す可能性意識 (1)

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物1月限は、前日比89セント(1.5%)安の1バレル=57.95ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は89セント安の62.48ドル。

  金スポット相場はほぼ変わらず。利下げ志向の政策スタンスをもたらすとみられるハセット氏が次期FRB議長の最有力候補と目されているとの報道を受け、買いが優勢になったが上値も重かった。

  この報道を受け、ドルと米国債利回りが低下し、金価格は一時0.6%上昇した。利息を生まない金は通常、低金利環境で上昇しやすい。

  一方、ウクライナとロシアの和平合意の行方や、米政府機関の閉鎖により遅れて公表された経済指標を受けた米金融政策の見通しを市場が見極めようとする中で売りも出た。

  ABCニュースの報道によれば、ウクライナ当局は戦争終結に向けた計画に合意したという。米国はアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで、ロシア当局者との間で和平合意の可能性について協議を行っており、ウクライナ軍の情報機関トップも会談に参加している。

  サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「和平合意の可能性が地政学的リスクのプレミアムを縮小させ、利益確定の売りを誘発する可能性がある」と指摘。株価の不安定な動きが当初は金の売りを誘ったが、その影響は限定的だったと付け加えた。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時3分現在、前日比1.74ドル安の1オンス=4134.57ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は46.50ドル(1.1%)上げて4177.30ドルで引けた。

原題:US Stocks Climb for Third Day; Treasuries Rally: Markets Wrap(抜粋)

Traders Push US 10-Year Yield to 4% as Hassett Tops Fed Field

Dollar Has Worst Day Since Mid-September on Hassett: Inside G-10

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— 取材協力 James Hirai, Julien Ponthus, Lynn Thomasson and Andre Janse Van Vuuren

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