米中の貿易協議、トランプ・習会談前に前進-グリアUSTR代表

米国と中国は、2日間にわたる貿易交渉の結果、複数の対立点で歩み寄った。両国の交渉担当者が明らかにした。トランプ米大統領と習近平国家主席による最終合意、および世界市場を揺るがしてきた貿易摩擦の緩和に向けた道筋が整った。

  中国側の交渉担当者によると、両国は輸出規制やフェンタニル問題、船舶入港料などを巡り、暫定的なコンセンサスに達した。

  ベッセント米財務長官はCBSニュースのインタビューで、トランプ氏による中国製品への100%関税の警告は「事実上、撤回された」と発言。中国は大豆の「大規模な」購入を行うほか、レアアース(希土類)に関する包括的な規制の実施を延期する見通しだと語った。さらに、米国側は対中輸出規制の方針を変更しないと付け加えた。

  「従って、100%関税の脅威は消えたとみていいだろう。中国が世界的な輸出規制を直ちに導入するという脅威も同様だ」と指摘。またABCニュースに対しては、中国がレアアース規制を「再検討のために1年間延期する」と同氏は述べた。

マレーシアに到着したトランプ米大統領(10月26日)

  ベッセント氏は、トランプ大統領と習国家主席の間で、関税休戦の延長、動画投稿アプリのTikTok売却を巡る対立の解消、半導体からジェットエンジンに至る先端製品の生産に不可欠なレアアース磁石の供給維持などを盛り込んだ包括的な合意が見込まれると示唆した格好。また同氏によると、両首脳は世界的な和平計画についても協議する予定だ。トランプ氏は以前に、ロシアとウクライナの戦争解決に向けて習氏の協力を得たい意向を公に示していた。

  こうした双方からの前向きなシグナルは、ここ数週間の緊張した状況とは対照的だ。中国が新たな輸出規制を発表し、それに対抗してトランプ氏が大幅な追加関税を警告したことで、世界の二大経済大国が再び全面的な貿易戦争に陥るとの懸念が強まっていた。

  米通商代表部(USTR)のグリア代表はFOXニュースの番組で、「中国によるレアアース規制を回避することが、今回の協議の主要な目的の一つで、その目標に向けて非常に順調に進展していると思う」と述べた。

  トランプ氏自身も東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が開催されているマレーシアの首都クアラルンプールで記者団に対し、「中国との良いディール」を予想。米中間で首脳レベルの追加協議が行われるとの見通しを示した。

  さらに、「彼らも合意を望んでおり、われわれも合意を望んでいる」と語った。

  それでも、市場は最終的な合意の詳細を慎重に見極めることになりそうだ。米中間の貿易および関税政策は過去1年近くにわたってめまぐるしく変化してきたためだ。

  クアラルンプールで開かれた米中貿易協議で、中国側の代表者を務めた商務省の李成鋼次官は26日、両国がフェンタニル問題や船舶入港料などを巡り、暫定的なコンセンサスに達したと明らかにした。輸出管理や関税を巡る休戦の延長、二国間貿易の拡大などについて建設的な協議を行ったと述べた。

  李次官は、今回の協議は激しいものとなり、米国側の姿勢は厳しかったと述べつつも、交渉の進展を評価した。両国は今後、30日に予定されている米中首脳会談に先立ち、今回の協議結果をそれぞれの首脳に報告する。

  李氏は記者団に対し、「現在の混乱や紆余曲折はわれわれが望むものではない」と述べ、安定した米中間の貿易・経済関係は両国そして世界にとっても有益だと強調した。

  ベッセント長官と中国の何立峰副首相がそれぞれ率いる両国の代表団による協議は高層ビル「ムルデカ118」で行われた。近くのコンベンションセンターでは、トランプ大統領が東南アジア諸国首脳と会談した。

  中国側の代表団には財政省の廖岷次官も参加。米国側はグリアUSTR代表が参加した。  

  トランプ氏は26日にマレーシアに到着した。アジア歴訪は政権2期目では初めて。空港ではマレーシアのアンワル首相が出迎えた。トランプ氏は到着後、タイとカンボジアによる和平協定の署名に立ち会った。

  トランプ氏は、韓国の慶州で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、習主席と30日に会談する予定。

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「完全なディール」

  トランプ大統領は、アジア歴訪に向かう大統領専用機内で記者団に対し、30日に予定されている中国の習近平国家主席との会談で「完全なディール」が実現することを期待していると語った。

大統領専用機内で記者団に語るトランプ氏(10月25日)

  今回の会談は、トランプ氏が1月に返り咲きを果たして以来初の対面会談となる。両氏は今年少なくとも3回電話会談を行っており、トランプ氏は関税や輸出規制、農産物購入、フェンタニル密輸、台湾問題、ウクライナでの戦争などの課題解決には直接対話が最善の方法だと繰り返し主張している。

  「多くのことを話し合うことになる。非常に包括的な合意に至る可能性が高いと思っている」とトランプ氏は述べた。

  トランプ氏は、米国がロシアの主要石油会社2社に制裁を科した後、中国によるロシア産原油の購入が減少したことについて、習主席と協議する可能性があると述べた。一方、ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領の行動に失望を表明した。

  トランプ氏は25日、中国がロシア産原油の購入を減らしていると指摘。その前日には、シノペック(中国石油化工)など中国国有企業が、海上で輸送されるロシア産原油の一部購入を取りやめた。米国がロシア石油大手ロスネフチとルクオイルを制裁対象に加えたことを受けた措置。

関連記事:中国国有石油大手、ロシア産原油の一部購入取りやめ-米制裁発表後

  「その件について話すかもしれないが、ご存じの通り、中国は今日伝えられたように、ロシア産原油の購入を大幅に削減している。インドは完全に購入を停止している。われわれは制裁を実施した」とトランプ氏は語った。

  トランプ氏は習氏との協議に期待していると述べ、農業分野や中国からのフェンタニル成分の輸出問題についても議題にするとした。

原題:US, China Tee Up Sweeping Trade Deal for Trump, Xi to Finish (1)、China Says Initial Consensus Reached With US on Fentanyl, ShipsUS, China Reach Framework for Trump-Xi Meeting, Bessent Says (1)Greer Hails Progress on China Talks Before Trump-Xi Meeting (1)Trump Targets ‘Complete Deal’ With China When He Meets With Xi(抜粋)

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