米国、イランに核開発全面放棄を求めず-制限に注力とウィトコフ氏
米国はイランに核開発の全面放棄を求めるのではなく、ミサイル能力とウラン濃縮の制限に注力すると、米国のウィトコフ中東担当特使が説明した。
ウィトコフ氏は12日にオマーンの首都マスカットで開始したイランとの核協議で、米国の代表団を率いた。両国は19日に再び会談する予定だ。
イランによるウラン濃縮の一部容認を示唆するトランプ政権の姿勢は、外交的に顕著な動きとなる可能性がある。イランの核開発完全放棄を要求する米国とイスラエルの強硬派を脇に追いやる一方で、濃縮に関連する活動の全面停止を求める国連安全保障理事会の制裁を復活させる緊急性は薄れる。
ウィトコフ氏はFOXニュースに対し、「濃縮プログラムの検証、最終的には兵器化の検証が重要になる」と述べ、ウランの濃度を3.67%以上に高める能力をイランに持たせてはならないと主張した。
「検証が合意の鍵になる。極めて厳格な検証を行う」とウィトコフ氏は続けた。
ペゼシュキアン大統領を含むイラン当局者は、核兵器を模索する意思はないとの保証や検証を提供する用意があり、2015年の核合意に似た内容の合意を結びたいとの意向を既に示している。トランプ米大統領は1期目の18年、当初の合意から離脱した。
イランの最高指導者ハメネイ師は15日、米国との第1回交渉は「うまく行った」とし、交渉継続を承認。交渉におぼろげながら楽観が生まれていることを示唆した。
イランのレッドライン
ハメネイ師は「レッドラインはわれわれにとっても、相手にとっても明白だ。交渉は継続する必要がある。成果が生まれる可能性も、生まれない可能性もある」と、自身のテレグラムの公式チャンネルで説明。自身は「過度な楽観も、過度な悲観もしていない」と続けた。
トランプ氏の核合意離脱後、イランは核燃料の製造に必要なウラン濃縮を次第に開始。合意に定められた3.67%の濃縮度を大きく上回るようになった。
イランの現在のウラン濃縮度についてウィトコフ氏は「ある場合には60%に上り、20%のこともある。これは容認できない」と語った。
テヘランの研究用原子炉では濃縮度20%のウランを医療用放射性同位体の製造に使用しているが、イランには数年分の燃料があり、ロシアから追加的な資源を調達することもできる。
ウィトコフ氏は、イランの「ミサイルや同国に蓄えられているミサイルの種類、爆弾の引き金となる物も含めて」協議の対象になると述べた。
イラン軍の最も強力な部隊で、1期目のトランプ政権がテロ組織に指定したイラン革命防衛隊は15日、ミサイルが米国との交渉の一部になることはありえないとあらためて強調した。
イラン国営放送は15日、「国家安全保障と防衛・軍事能力はイランのレッドラインで、いかなる環境下においても議論や交渉になり得ない」との革命防衛隊報道官の発言を伝えた。
原題:US Wants Iran to Limit Nuclear Program Rather Than Dismantle It(抜粋)