スマートグラスで女子大学生を盗撮した人が逮捕される

Photo: Raymond Wong / Gizmodo US

これから映画の盗撮、子供の盗撮、いろんなのが増えてしまいそう。

先月開催されたMetaのConnectカンファレンスでは、VRやXR機器の最新技術は主役にはならず、また主力製品であるQuestはほとんど言及もされず、代わりに3種類ものスマートグラスの発表がありました。そのうちの1つは、Meta初となるディスプレイが搭載されるそうです。このスマートグラスへの方向転換は、どうやらApple(アップル)にも影響を与えているよう。報道によると、Appleは手頃な価格のVision Proの開発よりも、独自のスマートグラス(複数モデルになる可能性もあり)の開発を優先しているとのことです。

スマートグラスが主要商品に

今回テック業界で明確となったのは、ついに「スマートグラス」という製品カテゴリーが本格的に立ち上がったということ。そして、顔に装着するAI搭載カメラ付きコンピューターという大きな期待と同時に、懸念もたくさんあります。その一例として、つい先日サンフランシスコ大学からある警告が出されました。

地元メディアSFGateの報道によると、最近キャンパスでRay-Ban Meta AIグラスを着用した男が女子学生を撮影しながら質問をする不適切なナンパが行なわれている事案について、大学内で注意喚起がされたそうです。その時撮影された動画はすでにTikTokやInstagramなどに投稿されているとのこと。

問題のアカウント名は伏せますが(大学側は警告文で実名を出していました)、Instagramでまだ視聴可能で、ナンパ動画をいくつか確認したところ、確かに不適切な内容でした。最悪です。もし「だから何?SNSなんて昔からひどいものだし。なぜ今さらニュースになるの?」と思われる方もいるでしょう。でも問題なのは、スマートグラスだからなんです。

Photo: Raymond Wong / Gizmodo US

撮影されていることに気づかない

サンフランシスコ大学が細かく動画の撮影方法について言及し、製品名まで挙げて警告を出したのは、いいムーブだったように思います。スマートグラス(Metaは「AIグラス」と呼んでいます)がこれほど話題になっている一方で、まだ多くの人には知られていない存在でもあります。そしてスマートグラスを見分ける方法を知らない人がほとんどです。

スマートフォンでは普通は顔の前で構えて、こちらに向けているので撮影されていることに気づくのは簡単です。しかしスマートグラスは目立たないので、わかりにくいのです。動画や写真を撮影中はグラスの前面にライトが点灯しますが、それでもどこを見ればいいのか、そのライトの意味がわからないと撮影されているとは気づきません

つまり、スマートグラスがまだ広く認知されていないこと、そして目立たないデザインがゆえ、マナーやルールを超えた行動を取る人もいるでしょうし、実際すでにそれがもう起こっているということです。

しかも、このサンフランシスコ大学の事例は最悪のケースでもないのです。ある女性が下半身のムダ毛処理「ブラジリアンワックス」をしに行ったとき、エステシャンがグラスをつけていたという事例もありました。

先月、私はMeta初のディスプレイ搭載Ray-Banグラスを実際に試用した後、「これこそみんなが待ち望んでいたスマートグラスだ」と評価しました。その意見は今も変わりませんが、同時に書いた「スマートグラスについて話し合うときが来た」という意見も変わりません。具体的には、スマートグラスをいつ、どのように使用すべきかについて話し合う必要があると思っています。

盗撮が増えるのは必至

先月、ウェアラブル市場を担当するMoor Insights & Strategyの主席アナリストAnshel Sag氏に、2013年のGoogle Glassのような大きな反発がまた起こる可能性があるかどうかの話を聞きました。Sag氏は、Ray-Ban Metaスマートグラスは周囲に溶け込みやすいデザインなので、2013年当時ほど激しい反発にはならないだろうと述べていますが、私はそう簡単には済まないと考えています。

現代人はプライバシー侵害に対して鈍感になっているとはいえ、スマートグラスに本気で怒る理由がまだないだけのような気がしています。スマートグラスは増えつつありますが、まだそれほど普及していません。もしこれから広く普及すれば、先に挙げたような盗撮事例がさらに増え、人々の考えも変わるでしょう。それが世論というものです。人間は怒りを感じるところまで行くまでは、物事に関して無関心でいられるのです。

これから始まるであろうスマートグラス世論

サンフランシスコ大学でのこの一件だけでは、世論を大きく動かすことはできないかもしれません。しかし、これからもっと多くの事例が出てきたらどうでしょう? 知らないうちにスマートグラスで撮影され、自分の顔がTikTokで知らない人にさらされていたとしたら?

スマートグラスはそれぞれが責任を持って使用すると信じたい気持ちはありますが、これからどうなるかはやはりなんとなく想像がつきますよね。大多数はおそらく内緒で撮影をする機能を悪用することはないかもしれませんが、残念ながら悪用する人たちは存在します。そして、そうした一部の人たちの行動というのは、目立ってしまうのです。

もしスマートグラスが本当に次世代の主要製品になるのであれば、スマートグラスへの世論は少し荒れたものになると私は予想しています。そして、今回のサンフランシスコ大学での警告は、まだその始まりに過ぎないのです。

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