【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─9月相場は堅調に推移か、関心高まるステーブルコイン関連

株式ジャーナリスト 和島英樹
「9月相場は堅調に推移か、関心高まるステーブルコイン関連」 ●FOMC占う米雇用統計、外国人買いの継続がポイントに  9月の東京株式市場は引き続き堅調な動きとなりそうだ。ただ、バリュエーション面からは割安感が後退しており、上値は限定的となる可能性がある。需給面からは外国人投資家の買いが継続するかがポイント。スケジュールでは、米国の金融政策の動向が注目される。

 日経平均株価の予想レンジは、4万1500円~4万3500円。

 米国のトランプ関税の影響は限定的との見方が広がっていることや、企業業績が想定よりも堅調なことなどが買い手掛かり。一方、日経平均株価のPER(株価収益率)は17倍台後半と、今期減益予想も考慮すると割安感は乏しい。過去10年間はおおむね14倍~17倍での推移となっている。騰落レシオ(25日)は8月28日現在で137.9%と、買われ過ぎを示す130%程度を上回ったままだ。推進力ともいえる売買代金も減少傾向にある。  一方、需給面では外国人投資家の買いが継続している。世界に比べ相対的に出遅れている日本株のウェートを引き上げる動きが、下値を支える展開となりそうだ。外国人投資家は現物・先物合計で今年に入って累計で約3.3兆円買い越している。また、大手調査機関によれば、2027年3月期の経常利益は今期予想比で12%増との見通し。来期業績の回復期待も下支え要因になろう。  スケジュールでは、米国で2日にISM製造業景況指数、4日にISM非製造業景況指数、5日に雇用統計、11日に消費者物価指数、16日に小売売上高、17日にFOMC(米連邦公開市場委員会)結果の発表などが予定されている。日本では1日に4-6月期法人企業統計、11日に7-9月期法人企業景気予測調査、12日に先物・オプションSQ(特別清算指数)算出、19日に日銀金融政策決定会合の結果、消費者物価指数の発表などがある。  注目は、5日に発表される8月の米雇用統計だ。前回7月分は非農業部門の雇用者数が市場予想を下回ったほか、5月、6月分が大幅に下方修正された。利下げ観測が高まる契機となっただけに、今回も関心が高い。これがFOMCの動向にも影響を与える可能性がある。FOMCでは利下げが濃厚で、利下げ幅が0.25%となるのか、0.5%なのか。パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長のコメントも含め関心が高い。  日銀は政策金利の変更はないとの見方が圧倒的だが、FOMCを受けた植田総裁の記者会見に注目が集まりそうだ。 ●「ステーブルコイン」は息の長いテーマに

 物色面では、3月期本決算企業で9月末の配当権利取りの動きが予想される。高配当でPBR(株価純資産倍率)の低い銘柄がポイントになりそうだ。メガバンクや保険などに該当銘柄が多い。王子ホールディングス <3861> [東証P]は中期経営計画で配当性向を引き上げ、自社株買いを実施中。PBRは0.7倍台、利回りは4%台だ。日本郵船 <9101> [東証P]も利回りが4%台で、PBRは0.8倍台。クレハ <4023> [東証P]も利回り5%台で、PBRは1倍割れだ。日本製鉄 <5401> [東証P]、住友金属鉱山 <5713> [東証P]、三井住友トラストグループ <8309> [東証P]、三井化学 <4183> [東証P]などにも妙味がある。

 また、ステーブルコイン関連銘柄への関心が急速に高まっている。法定通貨に価値が連動し、国際的な決済が即時・低コストに行えることが魅力。8月にフィンテック企業のJPYC(東京・千代田)が資金移動業者の登録を完了し、日本でも急速に普及するとの期待が浮上している。世界市場では既に米カード大手のビザ(VISA)<V>の決済額を上回り、2030年には3.7兆円(540兆円)に成長するともいわれる。関連銘柄には株価が急騰し、短期的には過熱感も強まっているものもあるが、息の長いテーマとなりそうで、押し目は要注目。

 JPYCに出資し、同社と企業システムをノーコード連携するアステリア <3853> [東証P]、子会社を通じてステーブルコインのプラットフォームを提供するSpeee <4499> [東証S]、子会社が米ドル連動型ステーブルコインを取り扱い、国内で三井住友銀行と共同でステーブルコインの利活用を探るSBIホールディングス <8473> [東証P]。このほか、ステーブルコインによるコンビニ決済・送金サービス構築を目指す電算システムホールディングス <4072> [東証P]、プラットフォームを提供するインタートレード <3747> [東証S]、発行・償還システムなどのシンプレクス・ホールディングス <4373> [東証P]など。

 AI(人工知能)半導体世界首位のエヌビディア<NVDA>の5-7月期決算は売上高などが市場予想を上回り、8-10月期も好調を持続する見通し。チップを切り出した後の「後工程」でテスターを手掛けるアドバンテスト <6857> [東証P]、切る・削る・磨く装置で世界首位のディスコ <6146> [東証P]、パッケージ基板のイビデン <4062> [東証P]、またAIデータセンター向け光ファイバーケーブルのフジクラ <5803> [東証P]などをマークしておきたい。

(2025年8月28日 記/次回は9月28日 配信予定) 株探ニュース

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