ベネズエラ通貨急落、米関税で石油産業に打撃-国民がドル買いに殺到

Nicolle Yapur

  • トランプ政権、ベネズエラ産石油購入国に25%の関税賦課
  • インフレの加速で経済の安定崩れる恐れ-ボリバルの急落で

ベネズエラ人がドル買いに走り、同国通貨が過去最安値を付けている。トランプ米政権が同国の石油産業を締め付け経済危機が再燃するとの懸念が高まっているためだ。

  トランプ大統領は今週、ベネズエラ産石油購入国に25%の関税を賦課することを認める大統領令に署名し、同国のマドゥロ政権への圧力を強めた。これを受け同国産石油の主要な買い手に動揺が広がり、出荷停止やタンカーの航路変更の動きなどが見られた。

  ベネズエラは為替レートの安定を維持するため、石油収入を為替市場に投じており、この状況は通貨ボリバルへの圧力となる。大幅なドル不足が見込まれる中、企業・個人ともにドルを買うため闇市場に殺到している状況だ。

  ボリバルの並行レートは、27日に1ドル=106ボリバルに下落。年初は1ドル=66ボリバル程度で推移していた。公式レートとの差は過去5年余りで最大となっている。 

  コンサルティング会社エコアナリティカのAGCディレクター、アレハンドロ・グリサンティ氏は米国の措置について「キャッシュフローと石油生産の観点で米政権がベネズエラ政府に取った最も強力な措置だ」と指摘している。

  マドゥロ政権はドルの使用を広く認めるなどして経済の安定化を図ってきたが、ボリバル急落でインフレが加速し、経済の安定が崩れる恐れもある。

  トランプ政権は米石油大手シェブロンに対し、5月27日までにベネズエラ事業から撤退するよう命じている。エコアナリティカのデータによれば、シェブロン撤退を見越し、ベネズエラ政府は今年に入ってから既に為替市場へのドル売却を半減させている。

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原題:Venezuela Currency Crashes as Trump Tariffs Choke Oil Sales (1)(抜粋)

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