アングル:米相互関税発表控えたヘッジファンドのポジション動向

4月1日、トランプ米大統領による相互関税などの発表を控え、ヘッジファンドがリスク量を減らし、安全な投資先に資金を避難させたことが、ゴールドマン・サックスのデータで明らかになっている。写真はトランプ米大統領。フロリダ州ウエストパームビーチで3月撮影(2025年 ロイター)

[ロンドン 1日 ロイター] - トランプ米大統領による相互関税などの発表を控え、ヘッジファンドがリスク量を減らし、安全な投資先に資金を避難させたことが、ゴールドマン・サックス(GS.N), opens new tabのデータで明らかになっている。

トランプ氏は2日を「解放の日」と名付け、これまで米国の製品や労働者が不利益を被ってきたと主張している国際貿易の構図を一変させる関税政策を打ち出す構えだ。

米紙ワシントン・ポストは1日、年間3兆ドルに上る米国への輸入品の大半に約20%の関税を課す計画を大統領側近らが策定したと伝えた。

ロイターが確認したゴールドマンの顧客向けノートには、関税率引き上げと企業利益の下振れ見通しでS&P総合500種の3カ月リターンは5%縮小する公算が大きいが、向こう1年で米国市場は回復するはずだと記されている。

ゴールドマンのプライムブローカレッジ部門がヘッジファンドのポジション動向に関して説明した内容は以下の通り。

(1)収縮

ヘッジファンドは世界の全地域、特に欧州、次いで新興国とアジアで投資規模を削減してきた。BMLLテクノロジーズのデータからは、3月21日に満期となったオプションの大きな持ち高を除けば、3月は証券取引所と取引所外取引の双方で売買規模が減少傾向だったことが分かる。

Apart from a large options expiry, non-transparent trading has fallen 17% during March

(2)新興国回避

ヘッジファンドは主要新興国資産の持ち高を解消した。今年これまで、中南米とアジアの新興国株は買い持ちより売り持ちが大きい状態を維持してきた。アジアでは3月に株式が特に大きく売り込まれたことをゴールドマンのデータが示している。

This ETF holds over 600 positions in emerging markets Asia companies

(3)景気循環株離れ

ヘッジファンドは値動きが景気循環と緊密に連動する株式の持ち高を減らしている。具体的には自動車部品や宝飾品、内装工事などの銘柄だ。こうした姿勢は、関税によって米国の景気後退リスクが高まるのではないかとの懸念に符号する。

Survey results revealing consumer attitudes, buying intentions, vacation plans, and consumer expectations for inflation, stock prices, and interest rates.

(4)欧州自動車株は買いから売りへ

ゴールドマンによると、ヘッジファンドは3月初めまで買いを入れていた欧州自動車株を売り始めた。トランプ氏が先週、輸入自動車に25%の関税を課すと表明して以来、投機筋の欧州自動車株に対する売り持ちが膨らんできている。同セクターの売り持ちに対する買い持ちの比率は歴史的な低さになっているという。

European Auto and auto parts maker stock prices

(5)金属関連株は買い

ゴールドマンは、最近数週間で金属価格の変動に敏感な株をヘッジファンドが買い越していると述べた。

ヘッジファンドによるこれらの銘柄の保有規模は数年ぶりの大きさとされる。ただ具体的な企業名は明らかにされていない。

Copper prices traded on LME juxtaposed against LME copper prices

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