エヌビディアの「H20」製品、米の対中輸出許可必要に-株価6%急落
人工知能(AI)向け半導体で圧倒的シェアを占める米エヌビディアは、米国の輸出規制に準拠しつつ中国向けに設計されたAIアクセラレータ「H20」製品について、対中輸出許可が今後必要になると米政府から通知された。
半導体製品の対中輸出規制がさらに強化されることを意味し、従来の規制を前提とした製品ラインの見直しを迫られる。
エヌビディアは、新たな規制がH20製品の在庫や購入契約に及ぼす影響を考慮し、第1四半期(2-4月)に約55億ドル(約7850億円)の費用計上を見込むと明らかにした。
15日の米株市場の時間外取引で、同社の株価は約6%急落。16日のアジア株式市場でも半導体関連銘柄が軒並み安となり、試験装置メーカーのアドバンテスが5.6%、SKハイニックスが3.7%、エヌビディアから半導体生産を受託する主要サプライヤー、台湾積体電路製造(TSMC)が1.7%下げた。
AIアクセラレータは、AIアプリケーションの学習・推論処理の高速化をサポートするハードウエアであり、「中国のスーパーコンピューターに対象製品が使用・転用される」懸念に対処すると米政府は説明したという。
15日の届け出資料によれば、H20製品の対中輸出許可は、将来的に無期限に必要になると14日に伝えられた。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、クンジャン・ソバハニ氏らは、想定される費用計上について、通期で140億ドルから180億ドルの収入が失われる恐れがあるとリポートで分析した。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、半導体サプライチェーンへの重大な悪影響を見込んでおり、TSMCと半導体部品メーカーが最も大きな影響を被ると予想。半導体製造装置メーカーの株価にもマイナスとなる可能性が高いと指摘した。
木下氏によると、米政府によるエヌビディアへの規制強化は、米中貿易戦争の一環と捉えられ、エレクトロニクス分野での中国の台頭を懸念した政策という意味で、恒久的なものとなる公算が大きい。
エヌビディアは今週に入り、米国内での最大5000億ドル相当のAIインフラ計画を発表したばかり。トランプ大統領が、同社のAIデータセンターへの投資と引き換えにH20の規制に動くことを断念したと米公共ラジオNPRは伝えていた。
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BIのアナリストらによれば、「規制が続く場合、エヌビディアのデータセンターの対中エクスポージャーが、2024年初めの水準のような1桁台前半から半ばに正常化する」と考えられる。
中国の軍事的優位を招くと恐れる米当局は、エヌビディアなどの最先端半導体の対中輸出規制を22年に導入し、AIアプリケーションに不可欠な高帯域幅メモリー(HBM)や半導体製造装置の規制対象を広げてきた。
エヌビディアは、規制をさらに強化しても、米国の技術に依存しない中国の決意を促すだけでなく、米企業の弱体化につながると主張してきた。
米株市場の時間外取引では、AI半導体市場でエヌビディアと競合するアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)の株価も下落した。ホワイトハウスの担当者にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。
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原題:Nvidia Says New Limits on China Exports to Cost $5.5 Billion (3)、Nvidia Supplier Stocks Drop on Latest China Export Restrictions(抜粋)