周東佑京の超絶好守…隠されていた"2つの伏線" 試合後に杉山一樹が伝えた「言葉」

 周到な準備と集中力から生まれた、チームを救う超ファインプレーだった。「今年一番(のプレー)ですね。打球が抜けていたら逆転だったので、もういくしかない状況。そこの割り切りも良くできたかなっていう感じでした」。こう語ったのは、好守を披露した周東佑京内野手だ。

 2日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。1点リードで迎えた9回2死一、三塁、代打で登場した西野の打球は右中間を破ろうかという鋭い当たりだった。誰もが息をのんだ瞬間、一直線に突っ込み、ダイビングキャッチで試合を終わらせた。ドーム全体がこの日一番の大歓声に包まれた。

 小久保裕紀監督も「佑京以外は捕れていないでしょうね。本当のプロのプレーだなと思いましたね」と賛辞を惜しまなかった。グラウンドで間近に見ていた選手、ベンチから指示を出していたコーチはこのプレーをどう見ていたのか――。4人の目線でこのプレーを解き明かした。

「きょうのプレーは佑京の守備力に尽きますよ。あの場面、あそこで捕れるのって本当にすごい。恐ろしいです」

 試合後、興奮気味に語ったのは高谷裕亮バッテリーコーチだった。実は8回の攻撃中、ベンチでは誰が9回に代打で出てくるかを想定し、それぞれの打者の打球がどの方向に飛ぶかについての“会話”が2人の間で行われていた。

 周東本人も「相手のバッターの最近の打球傾向とかは、あまり見られないので高谷さんに聞いていました」と“直前の準備”があのプレーに結びついたことを明かした。それでも高谷コーチは「僕はあくまでイメージを伝えることはできますけど……」と前置きした上で、「それを踏まえて、あの動きができることがすごいですよね」。驚きを隠すこともなく、土壇場のビックプレーに思わず「すごい」と連発した。

外野守備の位置にもあった“伏線”

 ベンチから外野守備位置の指示を出していた大西崇之1軍外野守備走塁兼作戦コーチも「抜けていたら、えらいことになっていた。彼が救ってくれた」と称賛した。実は直前のポジショニングにも“伏線”があった。

「長打なら一塁ランナーが返ったら逆転。本来なら(守備位置を)後ろに下げてもいいところだった。でも佑京っていうのもあるし、あえて定位置で守らせていた」

 もしも守備位置を少しでも後ろに下げていたら、ダイレクト捕球できずに得点を許していた可能性もあった。「ポジショニングに関しては、彼(周東)を信じているのでね」。好捕の裏には、日頃の守備範囲に裏付けられた“絶対的な信頼”があった。

グラウンドの同僚たちも「絶対抜けると…」

 グラウンド上の選手たちの驚きは、さらに大きかった。「打った瞬間は、もう絶対に抜けると思いました」。そう明かしたのは、二塁を守っていた川瀬晃内野手だ。「でも振り向いた時には、ちょっと余裕があるくらいだったので、レベルが違うな……って。ファインプレーですけど、自分が見る限りではもうちょいいけたのかなと思うので。もう恐ろしいなという感じです」と舌を巻いた。

 9回、マウンドにいた杉山一樹投手も「振り返った瞬間、もう飛び込んでいて『捕れるな』と確信しました」と振り返る。今シーズン、セーブシチュエーションでの失敗がない右腕。絶体絶命の場面に「すごかったです。救われました」と振り返り、試合後には周東のもとへ駆け寄って「本当にありがとうございます」と感謝を伝えたという。

 8月30、31日のロッテ戦(ZOZO)で連敗し、迎えた本拠地での一戦。周東自身がこのプレー、この一戦の重要性を誰よりも理解していた。「連敗で来ていて、あそこで絶対に断ち切らなきゃいけない場面だった。借金7からここまで来られたのは、1人1人が目の前のプレーに必死にやっていたからなので。9月はもう勝つしかない」

 優勝争いの中で、間違いなく大きな1勝となった。特別な景色をチーム全員で――。負けられない一戦で選手会長が見せたビッグプレーだった。

(森大樹 / Daiki Mori)

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