半導体からソフトへ、人気テク銘柄に潮目の変化-関税リスクで明暗

ハイテク株ではここ1カ月、大きな潮目の変化があった。人気だった半導体に陰りが見られ、代わってソフトウエアが脚光を浴びている。

  ウォール街では、割高なバリュエーションやトランプ次期政権下での貿易戦争リスクを巡る懸念を背景に、半導体株からマネーが流出している。CHIPS・科学法を厳しく批判してきたトランプ氏は25日、中国、カナダ、メキシコに対して追加関税を課す方針を表明した。一方、ソフトウエア株は上昇気流に乗っている。関税リスクへのエクスポージャーが低いことが強みとなって、ソフトウエアに対する地合いが改善。人工知能(AI)による追い風がインフラからサービスへとシフトする見通しであることも期待を高めている。

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  グレンビュー・トラストのビル・ストーン最高投資責任者(CIO)は「ソフトウエアは出遅れていたが、AIブームにおける次の勝者となる可能性が高い。またトランプ次期政権が規制やM&A(合併・買収)に対して一段と寛容な姿勢をみせれば、恩恵を受けるだろう」と指摘。半面、「不確実性が高まっているにもかかわらず、とりわけAIチップに関する明るいニュースから、半導体のバリュエーションは急上昇してきた」と述べた。

半導体ETF(上)とソフトウエアETF(下)のパフォーマンス

  最近発表された決算は、こうしたセンチメントの変化を浮き彫りにした。クラウド技術を活用したビッグデータの保管・分析サービスを提供するスノーフレイクの株価は、好調な売上高見通しが追い風となり急伸。ソフトウエア開発会社パランティア・テクノロジーズはAIへの「揺るぎない」需要が業績を大きく押し上げた。対照的に、エヌビディアは力強い決算を発表したものの、投資家の高い期待を満たすことはできなかった。

  主要なソフトウエア上場投資信託(ETF)は11月に入り16%上昇しており、月間で1年ぶりの大幅上昇となる勢いだ。一方、半導体ETFは2%未満の値上がりにとどまっている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによると、ソフトウエアETFへの資金流入は、半導体ETFをはるかに上回っている。

  ジェフリーズの株式取引マネジングディレクター、マイケル・トゥーミー氏は、半導体に対するソフトウエアのアウトパフォーマンスは「過去最高の動き」だと指摘。それでも双方のパフォーマンスを比べた「10年間のチャートで見るとそこまで目立たない」とし、この傾向が継続する余地があるとの見方を示した。

  半導体からソフトウエアへのローテーションがどの程度まで進むかは、トランプ次期政権下での動向に左右されるだろう。ぺーサーETFディストリビューターズのショーン・オハラ社長は「関税の面で半導体メーカーには多くの不確実性がある」とし、半導体株はすでにAI期待から大きく値上がりしており、ボラティリティーが高まる可能性があると予想。「一方で、AIソフトウエアへの注目が高まるだろう」と述べた。

  これまでのところ、AIのテーマはソフトウエア株よりも半導体株に多くの利益をもたらしてきた。企業がAI技術の実行に必要な半導体やサーバーに資金を投じていることが背景にある。ソフトウエア株でAIブームの追い風を受けているのは、パランティアやマイクロソフト、オラクルなど一部の銘柄のみだ。だが、AIの成長ストーリーで、ソフトウエアとサービスは次の転換点となり得る。

  さらに言えば、AIトレードの恩恵をいち早く受けたことで半導体銘柄は割高感が出ている。フィラデルフィア半導体指数の予想株価収益率(PER)は現在24倍。10年間の平均である18倍を上回っており、中でもソフトバンクグループ傘下の英半導体設計会社アーム・ホールディングスやエヌビディアの割高感が目立つ。逆風が吹けば、一段と大きな下落リスクがあるかもしれない。

  とはいえ、成長の観点から半導体は依然として根強い人気を誇る。BIの分析によると、半導体企業の2025年利益は40%増と見込まれる一方、ソフトウエアおよびサービスでは約12%増にとどまる見通しだ。売上高の伸びも、半導体の方がはるかに高いと予想されている。

  ソフトウエア株にとって次の大きな試金石となるのは、12月初旬に予定されているセールスフォースの決算発表だ。米国みずほ証券のハイテク専門家、ジョーダン・クライン氏によると、同社は新たな生成AIエージェント製品を推進するため積極的な採用を進めており、好業績となればソフトウエア銘柄の上昇基調を維持する一助となりそうだ。

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原題:Software Is In, Chips Are Out as Traders Position for Trump Era(抜粋)

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