【杉村富生の短期相場観測】 ─世界的なTACOトレードはハシャギすぎ!
短期的には値固めが必要な局面(利食い優先)だろう。4月以降、ほとんど休みなしに急騰を続けてきた相場だ。日経平均株価は4月7日の瞬間安値3万0792円を起点に7月24日には4万2065円の高値まで駆け上がった。実に、この間の上昇幅は1万1273円、上昇率は36.6%に達する。
まあ、釈迦に説法の話だが、株式投資における有効な戦術のひとつは悪材料が出たところを買って、好材料出現の場面を売ること。もちろん、売買のタイミングは難しい。その場合、移動平均線とのプラス・マイナスカイリが使える。天底ともに、異常値が現れる。市場ムード(総悲観→買い、超楽観→売り)も有力なツールである。 現状はどうか。4月の安値ゾーンはトランプ関税の最悪期、7月の高値圏では日米関税交渉が15%の税率で決着し、最良のパターンになっている。世界的にはTACO(Trump Always Chickens Out→トランプ大統領はいつも腰が引ける)トレード(リスクオン)が横行している。みんな買いに走っている。 ちょっと、ハシャギすぎではないか。筆者はトランプ関税が最終的に、EU(欧州連合)を含め10~15%の水準に落ち着くだろう、と考えている。しかし、交渉の過程では30~50%の数字が飛び出す可能性がある。これがトランプ流のディール(取引)だ。実際、スコット・ベッセント財務長官は「日本の関税率が25%に戻る可能性」を示唆している。 もちろん、これは日本が日米合意の内容を守らなかった場合(四半期ごとにチェック)のケースだが、油断はできない。なにしろ、ドナルド・トランプ大統領はハチャメチャな人物である。それに、肝心の日本の政治はガタガタだ。秋にかけてひともんちゃくがある。古来、政治は経済を越える、という。 ●救いなのは企業が元気なこと! 自民党総裁(石破茂首相は続投の構え)に誰がなろうとも衆参両院ともに少数与党だけに、国会運営は極めて厳しいものになる。党内をまとめられる人物が登場できるのか、疑わしい。8~9月が正念場である。「失われた30年」のような政治の迷走(首相の任期は1年)時代を迎えるのだろうか。 ただ、救いなのは企業が元気なことだ。経営改革が進展、株主還元姿勢は強固である。増配が相次いでいるし、自社株買いは年間25兆円(2023年は9.6兆円、24年は18兆円)とハイペースだ。これが活発な外国人買いにつながっている。目先はもみ合いが避けられないものの、中期的には好需給が株高を支えるだろう。さらに、日本企業のM&Aが1~6月に前年同期比3.6倍の31兆円と激増、2026年3月期の配当金総額が20兆円に膨らみ、今年度の設備投資額が過去最高の34兆円になる、と伝えられるなど、企業の攻めの経営が顕著になっている。これは内部留保の取り崩しを通じ、ROE(株主資本利益率)を上昇させ、PBR(株価純資産倍率)の修正につながる。
物色面では株価が大上放れのソフトバンクグループ <9984> [東証P]、海外戦略が軌道に乗ってきた日立製作所 <6501> [東証P]、時価総額が8829億円と小粒なイビデン <4062> [東証P]、カッパ(カッパー→銅にかけている)のテレビコマーシャルが話題のJX金属 <5016> [東証P]などに妙味があろう。
個別銘柄では猛暑を受けミストの需要が増えており、発生装置を手掛けている能美防災 <6744> [東証P]。業績が底入れ、株価が反発してきたペプチドリーム <4587> [東証P]、レアメタル関連のアルコニックス <3036> [東証P]、ジリ高基調の東京電力ホールディングス <9501> [東証P]などに注目できる。
このほか、思惑妙味の玉井商船 <9127> [東証S]、PER(株価収益率)6.8倍、PBR0.73倍、130円配当のシンデン・ハイテックス <3131> [東証S]、男性コスメのリップス <373A> [東証G] 、データセンター関連のデータセクション <3905> [東証G]、アプリ開発のヤプリ <4168> [東証G]などは引き続いて狙える。
2025年7月25日 記 株探ニュース