トランプ氏の成績表はS&P500種、株安容認せずとウォール街は期待
ウォール街がトランプ第1次政権で学んだ教訓があるとすれば、トランプ氏は大統領としての自身の仕事ぶりを、株式市場のパフォーマンスにひも付けて評価することだ。株高は自身の功績だと折に触れ強調し、押し目で株を買うよう国民に促してきた。株価下落を招いているとして、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任さえ、ちらつかせたことがある。
トランプ第2次政権でも、市場は再び重要な焦点となる。だが問題は、トランプ氏が関税など、インフレ加速と成長鈍化のリスクを高めると指摘される一連の経済政策を掲げている点だ。
S&P500種株価指数が2023年初め以降に50%余り上昇するなど、投資家はここまで高いリターンを享受してきた。25年以降も株式市場の快走が続くかどうかは、株高の勢いをそぐことだけはしたくないとトランプ氏が判断するかに左右されるだろう。
アポロン・ウェルス・マネジメントのエリック・スターナー最高投資責任者(CIO)は「トランプ氏は株式市場のパフォーマンスを自身の成績表の重要な部分ととらえている」と指摘。「トランプ氏は1期目でも、株価が大きく値上がりしている時には『皆さんの確定拠出年金(401K)の調子はどうですか?』との質問から演説を始めることが多かった。つまり、現在の強気相場を台無しにするような政策はやりたくないのが本音だ」と続けた。
ピボットか
ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、エミリー・ルベール氏は「政策の一部が支持率や株式市場に悪影響を与え始めれば、トランプ氏は方向転換するだろう」と、インタビューで語った。
一方、バークレイズのストラテジスト陣はリポートで「次期大統領の発言は真剣に受け止めるべきだが、文字通りには受け止めない方が良い」と述べている。
トランプ氏は今回、すべての国からの輸入品に10-20%の関税を課すことを提案している。UBSのストラテジスト陣によると、税率がレンジ下限となっても、米国株は10%下落する恐れがある。一方、バークレイズのストラテジスト陣は、一律の関税に加え、中国からの輸入品に60%以上の関税が発動された場合には、S&P500種構成企業の2025年利益は3.2%落ち込むと分析している。
シーバートのマーク・マレク最高投資責任者(CIO)は「通商交渉で優位に立つための手段として関税の脅威をちらつかせることと、実際に発動することは全く別の話だ」と指摘。トランプ氏が株式市場の動向に敏感であることを踏まえれば、理論的には過激な行動を抑えるだろうと述べた。
米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)らウォール街首脳も、こうした見方に同意しているようだ。ダイモン氏は14日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)CEOサミットで、トランプ氏の関税の脅威が「人々を交渉の場につかせる」だろうと指摘。とはいえ、トランプ氏は株式市場の急落を招くのは避けたいと考えるとの見方を示した。
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もっとも、関税リスクを意識して、影響を受けると予想される企業の株式を先行して売却する動きも出ている。米国市場に上場しているものの、中国で事業を行う企業で構成されるナスダック・ゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は、米大統領選以降に8.9%下落している。コカ・コーラとペプシコも同期間にそれぞれ約5.5%値下がり。ハスブロも7.1%下落している。
原題:Trump’s Scoreboard Is S&P 500, and It’s Wall Street’s Best Hope(抜粋)