疫学:欧州における鳥インフルエンザ発生の主な予測因子が特定される

Research Press Release

Scientific Reports

2025年7月18日

秋の最低気温、冬の湖や池の水位、およびコハクチョウ(Cygnus olor)の存在など、いくつかの地域的要因が、ヨーロッパで高病原性鳥インフルエンザ(HPAI:highly pathogenic avian flu)が発生する可能性を予測する鍵となるかもしれない。オープンアクセスジャーナルScientific Reports に掲載されるこの発見は、21世紀にヨーロッパで発生したHPAIの特徴を学習させた機械学習モデルから得られたもので、今後の監視プログラムの改善に役立つ可能性がある。

HPAIの発生は、動物と公衆衛生の両方にとって深刻な懸念である。2022年に北半球全域で発生した一連のHPAIは、哺乳類における鳥インフルエンザウイルス感染数の増加と関連しており、その後、人への波及の可能性が高まった。このような事態が発生する可能性を減らすためには、科学者がHPAI発生の可能性を高める根本的な要因を理解することが重要である。

Joacim Rocklövら(ハイデルベルク大学〔ドイツ〕)は、2006年から2021年の間にヨーロッパで報告されたすべてのHPAIアウトブレイクの特徴について、機械学習モデルを訓練した。評価された特性はすべて、潜在的な発生予測因子として特定されたもので、その地域の季節的な気温と降水量、その地域の野鳥生息数、その地域の家禽飼育密度、およびその地域の季節的な植生密度と水位などであった。次に著者らは、2022年と2023年の発生データを用いてモデルの精度を検証した。

著者らは、秋に記録された最も寒い気温が発生の可能性に最も大きな影響を及ぼすことを発見した。しかし、実際の効果は地域によってかなり異なっていた。最低気温が高いほど発生の可能性が高い地域もあれば、低い地域もあった。冬と春の気温が低いことも、発生確率の上昇と関連していた。しかし、10月から12月にかけての植生密度の低さや、1月から3月にかけての湖沼の水位が予想より低いことは、いずれも発生確率の低下と関連していた。著者らはまた、地域にコブハクチョウの個体群が存在する場合、発生の可能性の増加と関連していることも指摘している。

著者らは、この結果をヨーロッパ全域の地域HPAI監視プログラムの調整に役立てることで、アウトブレイクを初期段階で発見できる可能性を高めることができると示唆している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 3(すべての人に健康と福祉を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases (https://press.springernature.com/sdgs/24645444 )」をご覧ください。

Opata, M.R., Lavarello-Schettini, A., Semenza, J.C. et al. Predictiveness and drivers of highly pathogenic avian influenza outbreaks in Europe. Sci Rep15, 20286 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-04624-x 

doi:10.1038/s41598-025-04624-x

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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