体に良いとされる氷風呂は本当に効果があるのか?科学で検証

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近年、スポーツやフィットネスの世界では氷風呂(アイスバス)が注目されている。

 これはその名の通り、氷で冷やしたお風呂のことで、寒さが苦手な人は信じられないかもしれないが、運動後に10~15度の冷水に浸かることで筋肉疲労回復効果があり、他にも、メンタルヘルスや免疫機能にも良い影響を与えるとされている。

 意外にもアイスバスは、古代ギリシャにまで遡る由緒ある回復法だというが、本当にに効果があるのか?

 その真偽を確かめるため、南オーストラリア大学の運動学者、ハンター・ベネット氏らは、過去の科学文献を調査し検証を行った。

 その結果、確かに効果はあるが、いくつか注意点もあるそうだ。

 ベネット氏らの研究チームは、運動後のアイスバスの疲労回復効果については、十分な証拠が得られたという。

 運動してすぐにアイスバスに入ると、「筋肉痛が軽減」され、「筋力や柔軟性の回復」が促されることがわかった。

 こうした効果は、冷たい水に入ることで運動による炎症や筋肉の腫れ・損傷が軽くなるほか、乳酸などの疲労物質が取り除かれることによるものだ。

 したがって、毎日のように激しい運動を行うようなケースでは、アイスバスが有効な選択肢となるだろうと、ベネット氏は指摘する。

 ただし、筋力や持久力の向上を目的とするトレーニングの後に頻繁に使用すると、筋肉の適応反応が弱まり、筋肉成長やパフォーマンス向上の妨げになる可能性があるという。

 そのため、アイスバスは連日使用するのではなく、試合や大会などの重要なイベントの後に限定して活用するのが望ましいとされる。

 一方、有酸素運動(ランニングや水泳など)には悪影響を及ぼさないため、そうしたトレーニング後には比較的自由に取り入れても問題はないそうだ。

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 また運動だけでなく、アイスバスはメンタルヘルスにも有効であるという。

 ベネット氏らが過去の関連研究11本を調査してみたところ、定期的に冷水に浸かると、ストレスが軽減され、ぐっすり眠れるようになるなど、生活の質が高まることがわかったのだ。

 風邪やインフルエンザなどの病気にかかる頻度が減る可能性があることも示唆された。

 しかし、これらの研究は数が限られており、信頼性の高い結論を出すにはさらなる研究が必要とされている。

 また、アイスバスがどのようなメカニズムでこうした健康効果をもたらすのかについても、現時点では明確には分かっていない。

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 とはいえ、冷たい水に浸かるのだから、注意が必要であることも確かだ。

 たとえば稀にではあるが、アイスバスで皮膚が急激に冷やされる結果、「コールドショック」が起きることがある。

その場合、呼吸の乱れや過呼吸、高血圧などの症状が現れ、ひどい時には不整脈になることもあるので油断できない。

 また、30分以上アイスバスに入ると、「低体温症」のリスクが高まる。

 さらに体のパフォーマンスを求める人なら、別の注意点がある。それはやりすぎると、「筋肉が成長しにくくなる」恐れがあるということだ。

 アイスバスが抑制してくれる炎症は、運動の負荷に筋肉が適応し、強くなるためのシグナルでもある。だから、これを抑えすぎると、筋肉の成長まで抑えられる可能性があるのだ。

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 こうした科学的文献のレビューを踏まえて、ベネット氏は、アイスバスを上手に利用するための5つのポイントを次のように伝えている。

1. 冷やしすぎないアイスといっても、氷のような冷たさにする必要はない。ほとんどの研究では10~15度で十分な効果が得られることが確認されている(なおアイスバスというか、人体の氷漬けギネス記録は2時間30分だ)。

2. 長風呂しない過去の研究では、10~20分のアイスバスで、十分な回復効果や健康効果が確認されている。ただし最初の頃は、3~5分に分けて、10分程度の入浴にしておくといいそうだ。

3. いきなり入らない冷水に入れば、体はストレスを受ける。それがピークに達するのは入ってから30秒で、あとはだんだん慣れてくる。だからアイスバスに入るときは、いきなり飛び込まないで、ゆっくりと入る。上半身や顔まで浸かるのは、体が慣れてからだ。

4. 体調をしっかりチェックするアイスバスに入ればガタガタ震えるのは当然だが、めまいやしびれを感じるようなら、すぐに止める。異常を感じたら無理をしないことが大切だ。

5. 目的に応じて使用する運動で体を鍛えているのなら、毎日のようにアイスバスに入ってはダメだ。必要なときだけ戦略的にアイスバスを利用するといい。試合や大会後の回復手段として活用するのが理想的だ。

References: Ice baths are popular for exercise recovery and general wellness. But what does the science say?

本記事は、海外で報じられた情報を基に、日本の読者に理解しやすい形で編集・解説しています。

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