木星のオーロラに現れるガリレオ衛星の“足跡” NASA探査機ジュノーがすべて同時に観測

NASA=アメリカ航空宇宙局は2025年9月2日付で、木星のオーロラに現れるガリレオ衛星の痕跡のうち、観測が困難とされていた最後の1つがNASAの木星探査機「Juno(ジュノー)」の観測データから確認されたとする研究成果を紹介しています。

ガリレオ衛星が作り出す木星のオーロラ「フットプリント」

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した木星のオーロラ。2000年12月公開(Credit: NASA, ESA & John T. Clarke (Univ. of Michigan))】

こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」で観測された、木星のオーロラ。人間には見えない紫外線の波長で捉えたため、画像の色は擬似的に着色されています。

地球とは違い、木星ではガリレオ衛星と総称される大きな衛星が木星の磁気圏と相互作用し、衛星から木星へと続く磁力線に沿って移動した電子が木星に到達することで、「footprint(フットプリント、足跡)」と呼ばれる独自のオーロラが生み出されます。

最も目立つのは、ガリレオ衛星のなかでも一番内側を公転するIo(イオ)が作り出すフットプリント。画像ではオーロラオーバル(オーロラが出現しているリング状の領域)の左側に現れています。

また、Ganymede(ガニメデ)のフットプリントはオーロラオーバルのすぐ下に、Europa(エウロパ)のフットプリントはさらにその右下に現れています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した木星のオーロラ。2000年12月公開の画像に注釈を追加したもの(Credit: NASA, ESA & John T. Clarke (Univ. of Michigan); Edit: sorae編集部(日本語注釈を追加))】

しかし、ガリレオ衛星で一番外側を公転するCallisto(カリスト)のフットプリントは、ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測でもこれまで確実に捉えることはできませんでした。フットプリントが出現する位置は衛星によって異なるのですが、Callistoのフットプリントは微かにしか現れないことに加えて、オーロラオーバルと重なっていることが多いからです。

Junoがガリレオ衛星のフットプリントをすべて同時に観測

そこで、IRAP=天体物理学・惑星学研究所(フランス)のJonas Rabiaさんをはじめとする研究チームは、2019年9月に実施されたJunoによる22回目の木星フライバイ「PJ22」の時に取得されたデータを分析しました。

その結果、研究チームは微かながらも明確に現れたCallistoのフットプリントを発見。4つのガリレオ衛星すべてがフットプリントを作り出していること、CallistoのフットプリントもIo、Europa、Ganymedeのものと同様に持続していることが確認されました。

【▲ NASAの木星探査機Juno(ジュノー)が観測した木星のオーロラ。データは2019年9月のPJ22実施の際に紫外線撮像分光器(UVS)で取得したもので、注釈はそれぞれIo=イオ、Eur=エウロパ、Gan=ガニメデ、Cal=カリストのフットプリントを示している(Credit: NASA/JPL-Caltech/SwRI/UVS team/MSSS/Gill/Jónsson/Perry/Hue/Rabia; Edit: sorae編集部(NASAの公開画像からUVS画像の部分を切り抜き))】

こちらがJunoのUVSで観測された木星のオーロラです(色は擬似的に着色)。左端で目立つIoのフットプリントの他にも、Europa(Eur)、Ganymede(Gan)、そしてCallisto(Cal)のフットプリントがすべて同時に捉えられています。

NASAによると、PJ22は巨大で高密度な太陽風が木星の磁気圏に到達したタイミングで実施されたため、オーロラオーバルがより低緯度の方向へ移動しており、Callistoのフットプリントが捉えやすかったとみられています。

研究チームは、2031年7月の到着が予定されているESA=ヨーロッパ宇宙機関の木星系探査ミッション「Juice」の探査機による観測データもあわせてフットプリントの全体像が完成することで、木星の磁気圏とCallistoの相互作用が他のガリレオ衛星と根本的に異なるのかどうかという長年の疑問が解明されることに期待を寄せています。

【▲ 木星の極域上空を通過するNASAの木星探査機Juno(ジュノー)のCGイメージ(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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