【巨人】阿部監督「メークレジェンド」再現へ「熱くなって必死こいてる姿をファンの人に見せよう」
プロ野球は26日に後半戦がスタートする。巨人・阿部慎之助監督(46)は25日、スポーツ報知のインタビューに応じ、首位・阪神と10ゲーム差の3位からの大逆転優勝に向け「絶対に諦めない」と残り54試合への決意を示した。得点力不足解消へ采配、作戦面で積極的に動くと予告。左肘じん帯損傷のため離脱中で、この日G球場で打撃練習を再開した岡本和真内野手(29)について、復帰後は三塁に固定する構想も明かし、ラストスパートを思い描いた。チームは26日から広島2連戦(マツダ)に臨む。(取材・構成=片岡 優帆)
球宴前は89試合で42勝44敗3分けの借金2。首位・阪神に5勝13敗と大きく負け越し、10差をつけられた。
「目標の五分(勝率5割)を達成できなかった。和真(岡本)がいない中で若い選手が打って勝った試合もあって、その収穫はあるけど、悔しさしかない。阪神に惨敗しているけど僅差のゲームばかり。余計に悔しい」
若手の増田陸や泉口がスタメンに定着。着実に成長しているが、5月上旬に岡本が離脱した打線は好機であと一本が出ず、1試合平均2・5得点と苦戦した。
「頼れる人(岡本)がいなくて、自分たちでどんどんプレッシャーをかけちゃっているように見える。あまり精神論は言いたくないけど、打たないとって気負ったり。いいとこで回ってきちゃったよ、みたいな。ヨッシャー来た来た、みたいに思えるといいんだけど」
2008年、巨人の正捕手として最大13差を逆転して優勝した「メークレジェンド」を果たした阿部監督。当時は戦力も強力だったが、振り返ると、精神面の充実が大きかったという。
「実際にどんどん勝っていくと、おっ来たぞ、みたいになってくるから。そうしてあげるのが俺らの後半戦の役目。技術はなかなかすぐ上達しないけど、あとは何ができるかって言ったら、強い気持ちがあれば何でもできるはずだから」
1点差試合が35試合で16勝19敗。前半戦はロースコアの接戦が特に多かった。勝利への「あと1点」をもぎ取るため、攻撃陣の背中を押すため、後半戦は“攻めダルマ”と化して采配面で積極的に動く構えだ。
「何とかきっかけを作ってあげたい。スクイズでも何でもやるよ。去年はランナー三塁からヒットエンドランをかけたりもしたけど。絶対に1点取るぞ、みたいなさ。そういうのを采配として見せられたらいい」
バント、バスター、ヒットエンドラン、盗塁、スクイズ…。打つだけでなく機動力や細かい作戦も駆使して揺さぶる。相手を考えさせることにもつながる。
「そういうことをしていかないと勝てない。連打、連打は難しいから」
チームは残り54試合。長期離脱の岡本が戻るまで、全員でつないで1点ずつ積み重ねていくしかない。
「絶対に最後まで諦めない。勝負事は何が起きるか分からないしプロである以上、諦めちゃいけない。まだ50試合以上ある。そう思っているし、選手にも強く言いたい。みんなが熱くなって必死こいてる姿をファンの人に見せようよって」
岡本は現状、8月中旬の1軍復帰を目指している。
「30試合出てくれたらうれしいけどね。無理はさせられないから。バットは全力に近い形で振れるみたいだから、あとは150キロの球を打った時にどうか。そこをクリアしないと」
チーム事情によって一塁、三塁、左翼を献身的に守ってきた岡本。復帰後の守備位置のプランは―。
「サードと思っている。サードで固定したい」
4番・サード岡本和真。大黒柱が復帰すればラストスパートの態勢が整う。
不動の4番の岡本が離脱後、4番は流動的に日替わりで起用してきた。キャベッジが22試合、吉川が15試合、丸が7試合、増田陸が7試合、坂本が5試合、大城卓が1試合入った。その中で増田陸は好機で打てず悔しがる打席も糧にしながら階段を上っている。
「今は素晴らしい経験をしていると思うよ。ジャイアンツの4番ってすごく重いんだけど、何かやってくれるんじゃないか、って期待しているからこそ託したし。そんなに簡単には打てないけど、そこでどう食らいついていくか、どう工夫して打とうとしているかを重視して見ている」
増田陸とともに、開幕2軍からはい上がって遊撃のスタメンに定着したのは泉口。リーグ7位の打率2割7分9厘と貢献度はチームトップクラスで、球宴にも出場した。そんな“レギュラー格”に対しても、執念が見えないと判断すれば厳しさを見せた。17日のヤクルト戦(神宮)で初回の好機で見逃し3球三振、3回にスリーバント失敗すると、直後の守備から交代を命じた。
「緊張感がないように見えたから。そういう厳しさもないと反骨心って生まれてこないんじゃないかと。自分も現役時代たくさん怒られたけど、そこで何くそ、次に打てばいいんでしょくらいに思えるかだよね」
泉口は途中交代を告げられた翌日の休養日に二岡ヘッド兼打撃チーフコーチらとG球場でバント練習。次の試合、19日の阪神戦(東京D)では「5番・遊撃」で安打を放った。
「動じずにやってくれたと思う。ああやって、クッソー!と思ってやってほしいよね。(途中交代した後に)誠司(小林)とかチョーさん(長野)がフォロー入れてくれたみたいで、それもありがたかったけど」
前半戦は2年連続開幕投手を務めた戸郷が2度、2軍降格して11登板で2勝6敗、防御率5・24。エースの不調は大きな誤算だった。それでも山崎が防御率1・07と大車輪の活躍。赤星、グリフィン、井上に加えて西舘ら若手が台頭し、打線の援護が少ない中でリリーフ陣もフル回転した。
「ピッチャー陣にしわ寄せがいってしまったけど、投手陣に関しては何とかみんな頑張ってくれた」
逆襲へ、最大の課題は攻撃陣の得点力になる。そんな中で指揮官は、後半戦のキーマンにキャベッジを指名した。体調不良が回復し、26日に再昇格予定。一振りで流れを変えられる一発長打に期待している。
「キャベッジを1軍に上げるけど、外国人選手に爆発してもらうしかない。それを願っているよ」
首位・阪神と10ゲーム差から始まる後半戦。厳しい状況だが、勝負度外視で若手の育成に切り替えるつもりは全くない。昨年もシーズン終盤の優勝争いの中で浅野を我慢強く起用したが、それも未来を見据えつつ、勝つための最善策としてだった。今年も優勝だけを目指して日々、ベストメンバーを組み、一戦必勝で臨む。
「もちろん来年以降のためにっていうのもあるんだけど、それだけを言っていたら諦めたも同然だと思うし、絶対に諦めたくないから。どうしたら勝てるか必死こいて考えていきたい」
現役最終年だった19年、巨人は前半戦で2位に9・5差をつけて首位を独走した。その後、最大10・5差まで広げたが、夏場にわずか20日間で0・5差まで急接近された。阿部監督は選手として、大逆転優勝と追われる怖さの両方を経験している。だから諦める理由は何もない、と強調する。
「こんなシーズンは異例だと思う。1チーム(首位の阪神)しか貯金がなくて、あとの5チームが借金。自分は経験したことがない。悔しいけど、すごくいい経験させてもらってるなって思っている。そう思って辛抱強くやっていくだけだね」
自力優勝の可能性が消滅しているとはいえ、阪神との直接対決はまだ7試合残っている。2位のDeNAから5位の広島まで3差の混戦。どこが抜け出して阪神への挑戦権を得るのかもポイントだ。阪神を追う一番手となるため、勝ち続けるしかない。
「こっちはただ必死にタイガースを追うだけ。下のチームがそうしていかないと(独走を許すようだと)プロ野球も盛り上がらないだろうし」
この日、1軍本隊はG球場で練習。球宴出場組は休養にあて、その後、各自で広島に入った。26日の広島戦(マツダ)から後半戦がスタートする。同球場は今季0勝6敗。仕切り直しで好スタートを切り、流れを変えたいところだ。
「鬼門って言われてるからしっかりやりたい。やるしかない。それだけだね」
リーグ連覇を諦めている選手は誰もいない。真夏の熱戦で勢いに乗り、球史に残る大逆転優勝へ。阿部巨人が力強く歩んでいく。