サルの脳を模倣したニューロモーフィックコンピューター「悟空(Darwin Monkey)」を中国の研究チームが開発
中国・浙江大学の脳機知能国家重点実験室が、脳の構造を模倣したコンピューター「悟空(Darwin Monkey)」を開発しました。「悟空」はアカゲザルの脳に近い神経構造を再現したものだとのことです。
浙江大学发布全球规模最大的神经拟态类脑计算机“悟空”
https://www.zju.edu.cn/2025/0802/c76699a3072814/page.htmChina's 'Darwin Monkey' is the world's largest brain-inspired supercomputer | Live Science https://www.livescience.com/technology/computing/chinas-darwin-monkey-is-the-worlds-largest-brain-inspired-supercomputer
ニューロモーフィックコンピューターとは、人間などの脳の神経生物学的構造を模倣するコンピューティング手法のことです。脳という非常に効率的な情報処理デバイスを模倣することで、これまでのコンピューターに存在するさまざまな問題を解決できるのではないかと期待されています。
従来の人工ニューラルネットワークは一般的なコンピューター原理に従い、継続的に変化するバイナリ値を介してデータを処理しています。一方でニューロモーフィックコンピューターは、spiking neural networks(SNN:スパイキングニューラルネットワーク)というモデルで駆動されています。
生物のニューロンは、他のニューロンから受信した信号が反応を引き起こすのに十分なレベルに達すると、電気パルスを生じさせる発火により、オンとオフが切り替わります。SNNは生物の脳で行われているニューロン間の信号伝達を模倣し、電気信号に応じてオン/オフの切り替え(スパイク)を通じて、データを処理および伝達しているとのこと。 このように生物学的なニューロン間の情報伝達を物理的に模倣することで、SNNは高度なデータの並列処理が可能となり、従来のコンピューターアーキテクチャよりも強力になる可能性があります。また、人工ニューロンはスパイクごとに短い休止期間に入り、次に発火するまでその間は反応しないため、全体的な電力消費の削減につながるといわれています。新たに浙江大学脳機知能国家重点実験室の研究チームは、「悟空(Darwin Monkey)」と名付けられた次世代のニューロモーフィックコンピューターを開発したと発表しました。悟空は20億個以上の人工ニューロンと1000億個以上の人工シナプスを備えており、これはアカゲザルの脳とほぼ同等だと主張しています。 なお、これまでに発表された中で最も大規模なニューロモーフィックコンピューターは、Intelが2024年に発表した「Hala Point」であり、人工ニューロンの数は11億5000万個、人工シナプスは1280億個でした。
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悟空は実験室で開発された「Darwin 3」という脳コンピューティングチップを960個搭載しており、各チップが最大235万個の人工ニューロンを制御しています。また、悟空全体は15台のニューロモーフィック・ブレイン・サーバーで構成されています。このような大規模なコンピューターであるにもかかわらず、悟空の消費電力は約2kWだそうで、これは電気ケトルやヘアドライヤーとほぼ同じくらいだとのことです。
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