円が対ドルで155円超に下落、リスクオンや日銀の早期利上げ観測後退
12日のニューヨーク外国為替市場で円相場は一段安となり、対ドルで9カ月ぶりの安値となる155円を超えて下落した。日本銀行の早期利上げ観測が薄れる中、米国の政府機関再開への期待や株高で円売り・ドル買いが優勢だ。
円は前日終値比で一時0.6%安の155円04銭まで売られ、2月4日(155円52銭)以来の安値を付けた。米政府機関の閉鎖が近く解除されて米景気の減速懸念が和らぐとの見方から円売りが先行。10月30日以降下げ止まっていた154円50銭付近を抜け、下げが加速した。その後はやや下げ幅を縮小し、日本時間13日の午前6時時点では154円80銭付近で推移している。
円売りの要因として、日銀の早期利上げ観測が後退していることが挙げられる。政府サイドから利上げをけん制するような動きが相次ぎ、スワップ市場が織り込む12月の利上げ確率は約40%にとどまっている。
政府は経済財政諮問会議の民間議員に、積極的な金融緩和を主張するリフレ派の若田部昌澄前日銀副総裁と、第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストを起用した。日本成長戦略本部には、同じくリフレ派のクレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストと、日銀審議委員を務めたPwCコンサルティングの片岡剛士チーフエコノミストが入った。
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また、日本維新の会の藤田文武共同代表は5日、政府が投資促進を含む経済対策を進めようとしている時に利上げを急げば、経済成長を妨げかねないと話した。
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ドル・円が155円の節目を超えたことで、日本の通貨当局による円買い介入への警戒感が高まる可能性がある。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、介入の可能性を強く示唆するマジックワードは「過剰なボラティリティー」と「無秩序な動き」で、こうした発言があればすぐに介入があっても不思議ではないと指摘する。
片山さつき財務相は12日、為替市場で円安が進んでいることを受け、「足元は一方的な急激な動きが見られる」と指摘。経済への影響は「マイナス面が目立ってきていることは否定できない」とし、「過度な変動や無秩序な動きについて、高い緊張感を持って見極めている」と話した。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、年内に米国の利下げと日銀の利上げが両方とも見送られた場合、円は160円に向かっていくとみる。「トランプ米大統領やベッセント米財務長官の来日直後であり、介入は外交的に難しい」とみており、介入があるとすれば「160円を超えて、ここ数年のドル高値を更新する可能性が高まった状況ではないか」と語った。
— 取材協力 Masahiro Hidaka and Katsuyori Suzuki