ウォール街に人員削減の嵐も-貿易戦争でM&A低迷、減収の見込み
ウォール街の至る所で、経営陣は新たな現実を受け入れ始めている。自分たちが期待していたようなM&A(企業の合併・買収)の回復をトランプ米大統領はもたらしてはくれないという現実だ。
JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)では経営陣が、今年のアドバイザリー業務収入の行内予測を下方修正することを検討している。業界全体でのこのような動きは、環境が改善しなければ年後半に人員削減が行われる可能性を意味する。
事情に詳しい人物が匿名を条件に語ったところによると、UBSグループはトランプ氏が貿易相手国への相互関税を発表した先週より前から、削減対象となり得る従業員のリストを作成するよう上級管理職に指示し始めていた。
BofAはロンドンで投資銀行業務のポストを減らした。削減は景気減速とは関係がないと、事情に詳しい関係者が述べた。
わずか5カ月前と比べ様変わりだ。当時はトランプ氏の減税と規制緩和が、ディールメーキングと資本市場活動の波を引き起こすだろうという大きな期待があった。
しかし、トランプ氏の関税政策により市場は混乱し、インフレ懸念が再燃。多くの企業が合併計画を保留せざるを得なくなった。
トランプ氏が相互関税について発表した2日には、株式市場では時価総額にして3兆ドル(約435兆円)が失われ、ドルが少なくとも20年ぶりの大きな急落となった。
市場の混乱により、クラーナ・グループやスタブハブ・ホールディングスなどが新規株式公開(IPO)計画を棚上げした。ウォール街の株式引受金融機関にとって悪いニュースだ。手数料収入にも大きく響く。
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ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済パフォーマンスセンターのトム・キルヒマイアー教授は「世界経済全体、特に米国の金融セクターに今、同時に幾つもの打撃が及んでいる」と指摘。関税は経済活動減速を引き起こす可能性が高く、そうなれば「金融アドバイザリー業務が大幅に減少する」ことになると述べた。
BofAとJPモルガン、UBSの広報担当者はコメントを控えた。
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アナリストは大手米銀5行が今年獲得できる助言手数料収入予想を既に6億ドル近く引き下げている。
大手銀行より数週間早く決算を発表するジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの2024年12月-25年2月(第1四半期)は、投資銀行・資本市場部門の減収が響き減益となった。 同社の従業員数は同四半期中に約120人減少した。
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原題:Wall Street Fears Job Cuts as Dealmaking Fizzles in Trade War(抜粋)