「苦しいと思うけど…」大谷翔平は“勝ちを消されても”崩壊リリーフ陣をかばった「調整モードは終わった、と」ロバーツ監督の一言に報道陣騒然(Number Web)|dメニューニュース
「苦しいと思うけど…」大谷翔平は“勝ちを消されても”崩壊リリーフ陣をかばった「調整モードは終わった、と」ロバーツ監督の一言に報道陣騒然 photograph by Naoyuki Yanagihara
ワールドシリーズ連覇に向けて、勝負の秋を迎えた大谷翔平とロサンゼルス・ドジャース。地区優勝を果たした中で、不調のリリーフ陣や好投を続けたエース山本由伸に対して、大谷が語った思いとは。〈NumberWebレポート:随時配信〉
《9月23日 ダイヤモンドバックス戦(チェース・フィールド)●4-5》 《9月24日 ダイヤモンドバックス戦(チェース・フィールド)◯5-4》
《9月25日 ダイヤモンドバックス戦(チェース・フィールド)◯8-0》
敵地名物「プールショット」に期待せずにいられなかった
日本ハム時代から大谷翔平を追いかけ、スポニチのメジャー担当8年目を迎える私にとって、メジャー30球団の本拠地でまだ訪れたことがない球場が3つあった。レッズのグレートアメリカン・ボールパーク、パイレーツのPNCパーク、そして今回初めて訪れることになったダイヤモンドバックスのチェース・フィールドだった。
このチェース・フィールドが位置するアリゾナ州フェニックスには、2016年の日本ハムのアリゾナキャンプ以来、コロナ禍翌年の2021年を除いて毎年取材で訪れていたが、なぜか日程上、チェース・フィールドでの試合は縁がなかった。
初めて降り立った“9月のアリゾナ”。連日日中は最高気温41度を計測し、砂漠地帯特有の乾燥気候とはいえ暑さは想像の遥か上を超えた。さらに日差しは厳しく屋外は真っ正面を向いて歩けないほどだった。
9月23日。汗だくで到着したチェース・フィールドはもちろん開閉式ドーム球場だ。空調が完備され、少し肌寒いほどだったが、選手たちはどう感じているのだろうか。1998年開場とあって決して新しい球場ではなく、やや薄暗ささえ感じた。早速、練習前にチェース・フィールド名物の右中間の「プールスイート」を見学。ジャグジーもあり、ここから見るグラウンドの景色は壮観だった。
今季の大谷はジャイアンツの本拠地オラクル・パークで右翼席後方のマッコビー湾に飛び込む「スプラッシュヒット」、ロイヤルズの本拠地カウフマンスタジアムの外野席一帯に広がる噴水に飛び込む「噴水弾」を放っているだけに、今回も通称「プールショット」に期待せずにはいられなかった。
ロバーツ監督の一言に報道陣が“騒然”
この日は大谷にとってメジャー100試合目の登板、かつレギュラーシーズン最終登板。大谷にとって自身初のポストシーズン登板に向けた最終チェックとなる一戦だった。試合前、デーブ・ロバーツ監督は「もちろん試合を見て、どう進むかを判断しなきゃいけないけど、順調なら6イニングを目安に考えている」と断言。ここまで今季は5回が最長イニングだった。
さらに、こうも説明した。
「ここ3、4試合の翔平のパフォーマンスを見ても、強度が上がってきているし、それは彼のプランだったと思う。彼自身も“春の調整モードはもう終わった”と言っていたし、我々もそういう位置にいる」
指揮官の説明に報道陣が少しどよめいたのが伝わってきた。いよいよ次のステージに進むのだ。試合前練習では右肩を痛めて離脱していた佐々木朗希が合流。山本由伸を含めた日本が誇る3選手がついに大一番を前にそろった。
大谷の投球は圧巻だった。
3回に先頭のアレク・トーマスの速度105.8マイル(約170キロ)の打球が左手首付近を直撃して初安打を許したが、大事に至らず続投。最速101.2マイル(約162.8キロ)をマークし、投手復帰後14試合目で最多の91球、初めて6回を投げ、5安打無失点でバトンをつないだ。
崩壊リリーフ陣…かばった大谷の言葉
だが、不調が続く救援陣が台無しにした。4-0のリードで迎えた7回。ジャック・ドライヤー、エドガルド・エンリケスが3失点し早くも1点差に。9回は守護神タナー・スコットが先頭からの連続四死球などで1死二、三塁から同点左犠飛を浴び、ヘラルド・ペルドモに左前打されサヨナラ敗戦。大谷は5回無安打投球だった16日のフィリーズ戦に続き、救援陣が逆転を許して2戦連続で白星が吹き飛んだ。
大谷の試合後会見に備え、球場通路のクラブハウス前まで降りていた私を含む一部報道陣もがっくり。4点リードも守れず、休養日を挟んで2戦連続の逆転負け。重苦しい空気の漂った球場通路で、大谷は汗を拭い、それでも仲間をかばった。
「結果が出ていない期間に関しては苦しいと思う。それでも……」〈つづく〉
文=柳原直之(スポーツニッポン)
photograph by Naoyuki Yanagihara