なぜ平日昼にベビーカーが殺到? サンシャイン60展望台が“ママたちの公園”に進化 人工芝・絵本・安全設備そろう『てんぼうパーク』の魅力とは
池袋のランドマーク・サンシャイン60(picture cells - stock.adobe.com)
池袋のランドマーク、サンシャイン60。その展望台はかつて日本一の高さを誇り、絶好の観光スポットとして親しまれてきました。しかし近年、平日の昼間にはベビーカーを押すママたちでにぎわい、まるで“ママの公園”のような様相を呈しています。
実はサンシャイン60の展望台は、2023年4月に大幅リニューアルし、名称も新たに「てんぼうパーク」に変更されました。運営・企画を担当する篠原聡さんによると、コロナ禍の影響があったものの、2024年度の来場者数は前年比89%の約47万人を記録。特に注目すべきは利用者層の変化で、現在の利用者の構成は外国人観光客が15~20%、子ども連れのママが30%前後を占めており、明らかにファミリー層がメインターゲットとなっています。
いつもより少ない方で、混んでいるときはベビーカーだらけに
ではなぜ、これほどまでにベビーカー連れのママたちがサンシャイン60の展望台に集まるのでしょうか。篠原さんは7つのポイントを挙げています。「レジャーシートの無料貸出」「絵本やハイハイスペースの設置」「充実したベビールーム」「季節ごとの装飾とフォトスポット」「天候に左右されない屋内施設」「有料施設ならではの安全性」そして「他の展望台より安価な料金設定」などの要因が複合的に関係しているのではないか、とのことでした。
展望台が公園化? 子育て支援施設として再評価
まず、施設内には座るスペースが豊富に用意され、人工芝が敷き詰められたエリアでは、カラフルなデザインのレジャーシートを無料で貸し出しています。来場者は座ったり横になったりピクニック気分でくつろげる環境が整っているのです。また、「絵本の森」と呼ばれるサンシャインシティ内での取り組みと連動した「ハイハイスペース」には家の形をした本棚があり、充実した絵本コレクションを楽しめます。生後18カ月以下の子どもを対象としたこちらのスペースは、床や柱がクッション素材で囲まれており、安全面にも配慮。さらに江崎グリコ社の協力を得て、特定日には育児相談会やさまざまなワークショップも開催しています。
人工芝の上にはかわいらしいレジャーシートが!
ハイハイスペースもあり子どもの運動不足解消
ちょっとした丘もあり、まさにピクニック気分
展望台にはベビールームがあり、授乳室、おむつ替え台、調乳用温水器などの設備が完備されており、ベビー連れでも安心して利用できます。また、季節ごとに装飾が変わる体験型フォトスポットも人気。春には桜、秋には紅葉、そして2025年夏には「てんぼうパーク 空夏~池袋の空の上でALOHA!~」というハワイをテーマにしたイベントを8月31日まで開催中。公共公園とは違い、季節や天候に関係なく酷暑でも熱中症の心配がなく安心して遊べるのも大きなメリットでしょう。
展望台にも立派なベビールームがあるのは珍しい
てんぼうパークの入口。テーマごとに装飾が変わるから飽きさせない
有料施設であるからこそ、安全性の高さも特筆すべき点です。危険な箇所が少なく、清掃が行き届いており、スタッフが巡回して安全を確保。また、入場料による一定のフィルタリング効果が働き、マナー意識の高い来場者が多く、安心感につながっています。平日11時〜14時のランチタイムには、人工芝の一部で飲食の持ち込みも可能で、子ども好みのお弁当を広げて食事を楽しむ親子の姿も。安全な環境だからこそ、子どもが遊んでいる間にママ同士がゆっくりと会話を楽しむ光景が広がっています。
てんぼうパークCAFEもありテーマによってスペシャルメニューを提供
テーブルや椅子がたくさんあるためくつろげる
料金比較から見える圧倒的なコストパフォーマンス
そしてなにより、「料金が他の展望台よりも安価」という点も大きな魅力です。東京タワーのメインデッキは大人1,500円、子ども(小中学生)900円、幼児(4歳以上)600円。一方、東京スカイツリーの天望デッキは平日大人2,400円、小人(6~11歳)950円、5歳以下と6歳で未就学の場合は無料。対して、てんぼうパークは前売券・当日券とも同額で、平日大人700円、小中学生500円、小学生未満無料。繁忙期は大人900円、最繁忙期でも1,200円です。仮にベビーカー連れママと幼児で平日利用した場合、東京タワーは2,100円、東京スカイツリーは2,400円に対し、てんぼうパークは700円と約3分の1という圧倒的なコスト差が魅力です。
豊島区のまちづくりと連動した“第5の公園”
豊島区では、池袋駅周辺にある「南池袋公園」「池袋西口公園」「中池袋公園」「としまみどりの防災公園(イケ・サンパーク)」の4つの公園を核としたまちづくりを進めており、てんぼうパークは“第5の公園”として位置づけられ、地域住民の憩いの場として定着しつつあります。
ネットでできたソファでは自由な姿勢でくつろげる
ダミーの焚き火もあって遊び心ある内装
リニューアル前はVRやARを活用した大人向けのコンテンツを展開していたサンシャイン60展望台ですが、現在は「地域の方々に愛され、何度も訪れたくなる施設」を目指す方針に転換。こうした方向性の変化が、ベビーカー連れのママたちを惹きつける理由に繋がっているのでしょう。
名称にもその違いが表れており、東京タワーの「メインデッキ」や東京スカイツリーの「天望デッキ」が観光目的であるのに対し、「てんぼうパーク」は“公園”としての役割を明示しています。また、サンシャイン60の外観がオフィスビルであるため、建物自体を見るというよりも、展望台から東京タワーや東京スカイツリーはもちろん、晴れた日には富士山まで一望できる贅沢な景観を楽しむスタイルがあっています。
普遍的な公園の価値にフォーカスし、豊島区の都市計画とも連携したてんぼうパークは、地域活性化の中心的存在となりつつあります。子どもが安心して遊び、ママたちがリラックスできる空間として、サンシャイン60は「都市型公園」としての新たな役割を果たしているのです。
Page 2