ナンシー関さんの「消しゴムはんこ」5000点、自然劣化で危機に…デジタル保存へ知人ら活動
消しゴム版画家でコラムニストのナンシー関さん(本名・関直美、2002年に39歳で死去)が残した消しゴムはんこ約5000点が、自然劣化で損壊の危機にさらされている。ナンシーさんの知人らが作品を1点ずつスキャンし、デジタルデータとして永続的に保存しようという活動に取り組んでいる。大分県由布市のギャラリーでは、活動に協力する展示が開かれている。(佐々木浩人)
劣化が進んだナンシー関さんの消しゴムはんこナンシーさんは1962年、青森市生まれ。高校時代に消しゴムにはんこを彫り始めた。芸能人や政治家を 愛嬌(あいきょう) たっぷりに彫り上げたはんこの印影とともに、時に辛口ながらも愛や尊敬を込めたコラムで世相を刻み、人気を集めた。
遺族の元には作品5147点があり、温度を管理するなどして保管されているが、消しゴムに使われているポリ塩化ビニールや可塑剤が時間とともに化学変化を起こし、柔軟性が失われてひび割れや図柄・文字の薄れが進み、細部が失われつつあるという。
そこで、ナンシーさんの知人やかつての仕事仲間が集まり、3Dスキャン技術を用いて高精度でデジタル化し、文化的資料として広く活用できる「デジタルアーカイブ」を目指すことにした。
ただ、5147点のデジタルアーカイブの構築には2000万円以上が必要。一部でも取り組みを進めようと、メンバーが費用の一部を負担するとともに、クラウドファンディングサイト「READYFOR」で10日午後11時まで支援を受け付けている。
実行委員会代表で発起人の望月秀城さんは、学生時代にコピーライター養成講座でナンシーさんと出会った。現在は京都市でギャラリーを運営する。「ナンシー関の消しゴムはんこは1980年代から2000年代の日本の大衆文化を象徴する記録」と、継承の意義を話す。
消しゴムはんこの印影をデータ化し、印刷した作品の数々一方、由布市湯布院町の「LA RUCHE gallery(ラ・リューシュ・ギャラリー)」では、ナンシー関さんが生前愛したプロレスにスポットをあて、データ化して印刷したアントニオ猪木さんやジャイアント馬場さんの消しゴムはんこの印影や、劣化した消しゴムはんこ、コラムを収録した著書など約200点を展示している。
ギャラリーでの展示は11日まで。入場料は入場者が好きな金額を出す「投げ銭」方式で、消しゴムはんこの保存などに活用される。