一部のウェブサイトで一瞬だけ表示される「ケモ耳少女のイラスト」は一体何者なのか?

セキュリティ

Linuxカーネルのソースコード公開ページなど、一部のウェブサイトにアクセスした際に「虫眼鏡を持ったケモ耳少女のイラスト」に遭遇した経験がある人は多いはず。このケモ耳少女画面は自動ボットからの過剰アクセスを避けるために開発されたもので、ウェブサイトの保護に役立っています。

Anubis: Web AI Firewall Utility | Anubis

https://anubis.techaro.lol/

以下はFFmpegのソースコード公開ページにアクセスした際のスクリーンショットです。ケモ耳少女のイラストとともに「あなたがボットではないことを確認しています!」というメッセージが表示されています。

このケモ耳少女画面は「Anubis」というボットブロックプログラムのものです。Anubisの公式サイトには「HTTPリクエストの魂の重さを測り、ウェブサイトを保護しよう!(Weigh the soul of incoming HTTP requests to protect your website!)」と記されており、Anubisという名前が秤を持った冥界の神「アヌビス」から取られていることが分かります。また、Anubisが「バックグラウンドで動作し、ユーザーによる操作不要」「非常に軽量でホスティングコストを圧迫しない」「独自のポリシーでカスタマイズ可能」といった特徴を備えていることもアピールされています。なお、アヌビスはオオカミの頭を持つ姿やオオカミそのものの姿で描かれているため、Anubisのケモ耳少女のモフモフした耳もオオカミをイメージしたものだと考えられます。

Anubisの大きな特徴はMIT licenseのもとでオープンソースで開発されているという点です。ボットからの過剰アクセスを防ぐ目的ならCloudflareなどが提供するCAPTCHAサービスを導入すればOKですが、「なるべくプロプライエタリなサービスの使用を避けたい」という状況ではAnubisが役に立つというわけです。Anubisのソースコードは以下のリンク先で公開されているのですが、READMEには「ほとんどの場合、Anubisは不要で、Cloudflareを使用すれば十分でしょう。ただし、Cloudflareを使用できない状況や使用したくない状況ではAnubisが役に立ちます」というユニークな文面が記されています。

GitHub - TecharoHQ/anubis: Weighs the soul of incoming HTTP requests to stop AI crawlers

https://github.com/TecharoHQ/anubis

Anubisは「アクセスしてくるユーザーに対して、バックグラウンドで計算処理を求める」という仕組みで、計算処理機能を持たないボットや計算による待ち時間を嫌うボットのアクセスを防ぐ効果があります。これにより、AI企業などのボットからの過剰アクセスを避けられるとのこと。インターネット上には「AI企業は強力な計算資源を有しているため、ブロック効果は限定的ではないか」という意見も投稿されていますが、Anubisの開発者であるXe氏は「Anubisは攻撃者に対して、計算処理に対応するためのスクレイパー再構築を余儀なくさせる。これにより、悪質なトラフィックを拡散するAI企業のインフラコストが増加する。AI企業がAnubisのために多くのハードウェアを投入せざるを得なくなることで、スクレイピングが経済的に不可能になることが期待される」とコメントしています。

なお、Anubisの待機画面にはケモ耳少女という「真面目なサイトとは雰囲気の異なるイラスト」が表示されるため、「何らかのハッキング攻撃を受けているのでは」と勘違いしてしまうユーザーも存在しており、AnubisプロジェクトのIssueページにも「ケモ耳少女以外の画面を表示することはできるか?」という質問が投稿されています。Anubisのドキュメントでは、ケモ耳少女を表示しないバージョンを求める場合はXe氏に連絡して契約を結ぶように案内されています。

Supporting Anubis financially | Anubis

https://anubis.techaro.lol/docs/funding/

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