渾身のディフェンスで相手エースを封じた馬場雄大「勝負所でサマーリーグの経験を出そうと心に決めています」
3時間前
ディフェンスで試合の流れを引き寄せた馬場[写真]=fiba.basketball
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Toggle前回のアジアカップ(2022年)でもグループステージで対戦したシリアとの初戦。前回は116-56で圧倒した相手だが、今回はトランジションゲームで乗せてしまい、前半を32-41で折り返し、9点のビハインドを負ってしまう。
日本は強化試合のときから課題だったディフェンスローテーションのミスから相手にキックアウトのパスを何度も許してしまい、オフェンスでもターンオーバーが続出、リバウンドから走られるという悪循環に陥っていた。
勢いに乗ったシリアの中心にいたのが、今大会より新しい帰化選手としてシリアに加入したケロン・メリク・デシールズだ。スピードと得点力に優れたガードで、前半だけで17得点6リバウンド4アシストのスタッツを叩き出した。また、昨シーズンはサウジアラビアのリーグでプレーしていたこともあり、デシールズが得点を決めるたびに、現地の応援団は鳴り物や太鼓を叩いてはお祭りのように盛り上がる。騒音にも聞こえたそのリズムに日本は押されてしまい、どこか受け身になってしまったのだ。
そうしたシリアの勢いを断ち切ったのが、後半早々に連続8得点をあげた吉井裕鷹や、この試合で『PLAYER OF THE GAME』を受賞したジョシュ・ホーキンソンであるが、もう一人、ディフェンスでチームを支えた馬場雄大の貢献を見逃すことはできない。
馬場は前半からデシールズをタイトにマークしていたが、シュートを決められていた。それが後半に入ると、激しいディフェンスで相手の体力を削っていた効果が出始める。馬場の圧力に押されたデシールズは、シュートを打てなくなるどころか、ハンドラーとしての役割をしない時間も多くなった。チームの心臓であるデシールズが機能しないことで、シリアはトーンダウンしていったのだ。馬場のディフェンスでのファイトがシリアの勢いを封じたといっていいだろう。
「前半は5番(デシールズ)にやられたというよりは、タフなシュートが決まっていただけという感じだったので、どこかのタイミングで落ちてくるだろうとは思っていました。また、前半は相手の応援がすごくて、自分たちのリズムに乗り切れなかったので、それを断ち切るためにも、我慢強くディフェンスをするだけでした。前半が終わったときにシリアが相当疲れていたのは目に見えていたし、ゲームは20分ではなく40分を通して決まるものなので、不安はなかったです」と、渾身のディフェンスでチームを支えた馬場は語る。
攻守両面にわたって、馬場と吉井の両ウイングが躍動した日本は後半を67-27で圧倒。トータルスコア99-68でアジアカップ初勝利を上げた。
■「NBAサマーリーグの経験を生かす」という決意
馬場は合流の遅れをマイナスに捉えていない[写真]=fiba.basketball
「合流が遅れたことはマイナスとは思ってないです。休んでいて遅れたわけではないので。サマーリーグという高いレベルでやってきたので、日本代表に還元できるものは多いと思っていました」
サマーリーグを経験した馬場が日本代表に還元したいものとは「勝負所で自分の気持ちや力を出すこと」だと言う。
「一瞬一瞬の勝負と言いますか、ワンプレイ、ワンプレイの気持ちの入れ方が最終的に試合結果を左右することがあります。ワンポゼッションの気持ちの入れ方や、一瞬の勝負で自分の力を出さなければいけないことは、サマーリーグでもやってきたことなので」
次戦のイラン戦だけでなく、大会を通しても、こうした馬場の勝負どころの経験値は必要だ。馬場自身、ホーキンソンとダブルキャプテンを務めていることもあり、「勝負所で経験を出すことがトムさんのバスケにおける自分の役割」だとキッパリと言う。
「このチームは結成して日が浅いので、試合を重ねないといいチームにならないとは思います。けれど自分としては、そういったことを言っていられない年齢になってきたし、やっぱり経験ある選手がいかにチームを引っ張って行動するかが大事だと思うので、そのことを心に決めてやっています。次のイラン戦はグループで一番大事な試合。彼らを倒さないと、グループ1位にはなれないので、今日を含めて2日間でいい準備をします。イラン戦でも一つ一つのプレーに気持ちを入れて、チームにいい影響を与えられるようなプレーをしたいと思います」
取材・文=小永吉陽子