Metaの引き抜きに怒ったサム・アルトマンが社員に送ったメッセージが熱い

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先週複数名のAIリサーチャーを超強力な競合であるMeta(メタ)に引き抜かれ、その戦略的な対抗手段として、社員に1週間の強制休暇を出したOpenAI(オープンエーアイ)

またMetaはApple(アップル)の基盤モデルチームを率いていた上級エンジニアをも引き抜いていたことが先日報じられましたが、そんな傍若無人な振る舞いを見せる同企業について、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏その引き抜きの手口を社内Slackで伝えた、とWIREDで報じられています。

アルトマン氏からの社内Slackでのメッセージ

Metaのやり方には、どこか品のなさを感じます」という前置きから始まったというアルトマン氏からの社内Slackのメッセージには、Metaの引き抜きの手口について綴られています。

その手口とは、OpenAIの何名かのメンバーに対し「巨額のオファー」を提示していたこと。う〜ん、なんともザッカーバーグ氏らしい。

またアルトマン氏は現在の状況について、「予想できたとはいえ、混沌とした新しいフェーズに突入している」と述べたうえで、このように続けています。

かつては片隅にいたようなオタク集団だった私たちですが、今では少なくともテック業界では最も注目される存在となりました。

AI界隈のTwitterはとても有害です。今後もっとカオスな状態になっていくと思います。

私が解雇され、そして再び戻ってきたとき、私は「この出来事はOpenAIの歴史上、最もクレイジーな出来事になることはない」と言いましたね。今回の件もそれには当てはまりません。

このメッセージを見る限り、AI人材の争奪戦の緊張感はかなり高まっている様子。

アルトマン氏の元同僚の企業にも影響

また今回の2社間の衝突は、多方面にその余波が広がっています。OpenAIの共同創業者であるイリヤ・サツケバー氏は、AIの安全性に特化した新しいラボ「Safe Superintelligence(SSI)」を立ち上げたばかりですが、なんとそのCEOであるダニエル・グロス氏もMetaに移籍することが発表されています。

サツケバー氏は、自身のXでこの件について言及。「ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、ダニエル・グロスの弊社での活動は徐々に少なくなってきていましたが、2025年6月29日をもって正式にSSIを離れることとなりました」と綴っています。

I sent the following message to our team and investors:—As you know, Daniel Gross’s time with us has been winding down, and as of June 29 he is officially no longer a part of SSI. We are grateful for his early contributions to the company and wish him well in his next…

— Ilya Sutskever (@ilyasut) July 3, 2025

さらにサツケバー氏はMetaから企業買収を持ちかけられたことについても明かしています。

私たちに買収の関心を寄せる企業がある、という噂を聞いたことがあるかもしれません。光栄なことではありますが、私たちは研究に専念できればと考えています

研究に必要な研究環境は整っていますし、そのためのチームもいます。また何をすべきか、ということも把握しているつもりです。

私たちはこれからも安全な超知能を築く努力を進めていきます。

こうした状況のなかで送られたのが、アルトマン氏からの社内メッセージ。アルトマン氏はこのMetaとのAI人材争奪戦について、「理念のぶつかり合い」だと位置付けながら、「人類の利益のために汎用人工知能(AGI)を生み出す」というOpenAIのミッションを引き合いに出しつつ、こう語っています。

もちろんいつの時代も、お金に目がくらむ人はいますが、業界全体としてミッション志向であることを誇りに思っています。

そして最後に勝つのは、使命に生きる者だと確信しています

またアルトマン氏は今回の騒動を踏まえ、研究部門全体の報酬体系を見直す方針であることも伝えたのだとか。それほど流出の危機に迫られているということかもしれませんね。

そしてアルトマン氏は最後に社員に向けてこう伝えたそう。

私たちはAGIを正しいかたちで実現することに本気で向き合っている。そう思っています。

他企業は、AGIを何か別の目標のための“手段”として捉えていますが、私たちにとっては“目的”そのもの。それはこれから先も変わりません。

かなり熱いメッセージではありますが、これを全社に向けて送ったということは、Metaとの人材争奪戦で相当な痛手を負っているようにも思えますね…。

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