ゼレンスキー氏を「独裁者」呼ばわり、トランプ氏が舌戦で圧力かける

トランプ米大統領は19日、ウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙を実施しない独裁者」と呼んだ。米国とロシアで交渉している戦争終結のディール(取引)について、ウクライナに条件を受け入れるよう圧力を強めた。

  トランプ氏は19日、バイデン前大統領が提供した支援を悪用しているとゼレンスキー氏を非難。2022年にロシアがウクライナ侵攻したのは証明されていないとして、戦争が続いているのはウクライナに責任があるとほのめかした。

 トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース」への投稿で 「ゼレンスキー氏は選挙を実施しない独裁者だ。ぐずぐずしていると、ウクライナはなくなってしまうぞ」と警告。「同氏は選挙を拒否している。ウクライナ国民の支持率は非常に低い。同氏が優れているのは、バイデンを”バイオリンのように”操ることだけだ」と述べた。

  トランプ氏が大統領に就任して以来、最も辛辣なゼレンスキー氏への批判となった。新政権が発足してからの米国とウクライナの関係が、急速に悪化していることがあらためて示唆された。

  トランプ氏は「一方でロシアとの間で進めている戦争終結の交渉はうまく進んでいる。誰もが認めることだが、トランプとトランプ政権だけがこれを成し遂げられる。バイデンは試みもしなかった。欧州は和平に失敗した。そしてゼレンスキーは恐らく、施しの利益を享受し続けたいのだろう」と投稿を続けた。

ロシア製偽情報の空間

  ゼレンスキー氏はこれより先、同氏の支持率がわずか一桁台だとしたトランプ氏の主張に対し、誤解を招く発言だと反論。トランプ氏はロシアが作り出した「偽情報の空間」に住んでいると批判していた。

  米国とロシアは前日、ウクライナでの戦争終結を巡る初の高官級会合を開いたが、ゼレンスキー氏は蚊帳の外に押し出された。ウクライナ不在のまま「ディール」が成立する可能性が不安をあおっている。

  トランプ氏は18日、米ロ会合を受けて「恐らく」月内にロシアのプーチン大統領との会談が実現するだろうと記者団に述べた。その際にトランプ氏はゼレンスキー氏の支持率が4%だと主張したが、入手可能な全ての世論調査と矛盾している。トランプ氏はさらに戦時下にあるウクライナで選挙が実施されていないとも指摘。選挙実施はクレムリンが要求している。

  さらにトランプ氏は戦争が起きたのはウクライナに原因があるとも示唆。終わらせるためにディールを成立させることは可能だったはずだと述べた。

  トランプ氏が主張する低支持率について、ゼレンスキー氏は 「こうした偽情報は以前から目にしている。ロシア発だと理解している」とキーウで記者団に述べた。「そうした数字が米ロの間で話し合われている証拠を得ている」と話した。

  キーウ国際社会学研究所が今月4-9日に1000人を対象にまとめた世論調査によれば、ゼレンスキー氏の支持率は57%。昨年12月の52%から上昇した。 

政治的将来

  ウクライナはこれまで、戦時下での選挙実施要求をはねつけてきた。ロシアによる介入が懸念されるほか、投票を実施する困難さもその理由だ。ウクライナは今も戒厳令下にあり、選挙の実施は禁じられている。

  「誰かが私を追い出して別の人物を大統領に据えたくても、今それは成功しない」とゼレンスキー氏。「ウクライナを支え続けてくれている米国民を、われわれは真に敬愛している。その米国民のリーダーであるトランプ大統領に、私は大いなる敬意をもって接している。しかし残念なことに、トランプ氏は偽情報の空間に住んでいる」と述べた。

  しかしゼレンスキー氏の政治的将来は安泰ではないかもしれない。かつてウクライナ軍の総司令官だったバレリー・ザルジニー氏は、ゼレンスキー氏の対抗馬として選挙に出る可能性を明白には否定していない。

関連記事:ウクライナ軍のザルジニー総司令官が退任、大統領と反目 (1)

  現在は在英ウクライナ大使であるザルジニー氏は19日、キーウで開かれたイベントにロンドンからビデオ参加し「この質問に答えるには、まずこの問題が現実性を帯びる状況にすることが望ましい」と発言。「そうした条件が満たされた時、私は国家のために働く公僕として、その質問に答える用意が調うだろう」と続けた。

原題:Zelenskiy Says Trump Is Swallowing Russian Propaganda on Ukraine

Trump Calls Zelenskiy a ‘Dictator Without Elections’

Trump Calls Zelenskiy a ‘Dictator,’ Broadens Attacks on Ukraine(抜粋)

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