「やっぱり甲斐さんの準備力というか…」甲斐拓也は巨人に何をもたらしたのか? 阿部慎之助監督も絶賛する攻守の存在感「他の打者も真似してほしい」

 開幕から間もなく1カ月。チーム内でその存在感が日増しに大きくなっているのが、巨人の甲斐拓也捕手だ。 【写真で比較】「えっ、細い…いまと全然違う!」いまから14年前、高校時代のガリガリの甲斐と現在のムッキムキのフィジカル…身長差がエグイ168cmの甲斐と193cmの大谷さんのWBCでの活躍も 「やっぱり甲斐さんの“準備力”というか、試合前からこのバッターにはこういう風にいきたいとかはっきり伝えてくださるので、自分の頭の中でもしっかり整理して試合に入っていけていると思います」  こう語るのは開幕から3試合、23イニングスで無失点、防御率0.00を続けている山崎伊織投手だ。  山崎が指摘する甲斐の“準備力”とは、試合前のバッテリーミーティングでのことだった。  スコアラーやアナリストから提出されてきたデータ、担当コーチの分析を元に、甲斐は独自に書き留めている気づきをプラスして、各打者への攻め方を具体的に投手に伝えていく。自分のやりたい配球の意図を、事前に投手に伝えることで、例えばピンチの局面になってもマウンドの投手が迷うことなく、意思を持った球を投げることにつながっている。 「彼の凄さを感じるのは、そういう準備が目の前の試合だけを見ていないことなんです」  こう語るのは実松一成バッテリーコーチだった。 「1つの試合の中で前の打席の攻めを前提に、配球は変化していく。まあそれはある意味、当たり前なんですけど、彼のリードは3連戦があるとしたら、その3連戦をトータルで見ながら考えている。前の試合の配球が、翌日の試合への伏線にもなっていく。そうやって3連戦を終えると、次に同じ相手と対戦する時には、そのときの配球を踏まえた上で組み立てを考えている」  そうしたことを事前にミーティングで投手に説明して試合に臨むことで、バッテリー間の意思疎通が明確となり、投手はピッチングに集中できるようになっている。  そこが甲斐の持つ秀でた捕手力の一つ、ということだ。

 ただ、もちろん試合は生き物である。投手の状態や点差、状況は刻一刻と変化していく。  いざマウンドに立ってみたら、思ったほどボールが走っていなかったり、変化球のキレがいつもより悪いケースなどは、ままあることだ。逆に実際に受けてみたらその日はいつも以上にボールが走っていたり、変化球の切れが良いこともある。そうした変化を察知しながら、それを生かせる配球へとリードも刻一刻と変わっていく。  甲斐のリードで特長的なのが、勝負場面で同じ球種や同じコースをしつこく続ける「攻めの配球」が見られることだ。  山崎が先発した4月9日のDeNA戦でもこんな場面があった。立ち上がりの1回、山崎はあっさり2死を奪ったが、3番の三森大貴内野手に左翼線に二塁打を浴びて、得点圏に走者を背負うこととなった。  迎える打者は4番の佐野恵太外野手。ここで1ボール2ストライクと追い込むと、甲斐は山崎に4球続けてフォークを要求。そして最後はスライダーで二ゴロに打ち取り、先制点を奪われるピンチを凌いだ山崎は、その後の無失点好投へと繋げていった。 「絶対に先制点は取られたくなかったですし、自分の中では最近、フォークがいいと思っていたところで、ああいう要求をしていただけた。うまく引き出していただいた」  山崎はこの場面を振り返っていた。 「きちんと投手とコミュニケーションをとりながら、あえて、意図的にああいうリードをしている。そこが彼のキャッチャーとしての持ち味だと思います」  こう語るのは日本代表チームでも甲斐のことをよく知る村田善則総合コーチだった。  甲斐のリードを見ていて、同じように他チームから移籍してきて巨人の投手陣に風を起こした捕手のことを思い出した。  1988年オフに西本聖投手などとの交換トレードで、中日から巨人に移籍してきた中尾孝義捕手である。 「中尾さんのリードって、それまでの巨人のキャッチャーのリードとは全く違ったんです。中尾さんが違う僕を引き出してくれたのは間違いないですね」  こう語るのは80年代から90年代にかけて巨人のエースとして君臨した斎藤雅樹さんだった。 「それ以前の僕はインサイドに投げるのがあんまり上手くなかった。ぶつけちゃうんじゃないかと思って、インサイドを狙ってもちょっと引っかかったりして、真ん中にいってしまって打たれたりとかしていました」

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