玉木国民代表、立民は「現実的な安保政策への転換」を-首相指名で

来週にも召集される臨時国会の首相指名選挙への対応に関し、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の3党は15日に党首会談を行う見通し。立民が目指している野党候補の1本化に向け、安全保障政策で一致できるかが焦点となる。

  14日午後開かれた3党幹事長会談で確認した。国民の榛葉賀津也幹事長は立民が想定する連立政権の枠組みを党首会談で提示するよう要請。同党と維新がまとめた緊急事態条項を創設する憲法改正案への対応や集団的自衛権の行使を一部容認した安全保障法制、「原発ゼロ」を掲げた綱領の見直しが可能か回答することも求めた。

  首相候補に浮上している国民民主党の玉木雄一郎氏は14日午前の記者会見で、仮に野党が連立政権を組む場合は「安全保障政策、原発を含むエネルギー政策は一致させておかないと政権もがたがたする。特に安全保障に関しては寸分の揺らぎも許されない状況にある」と明言していた。

  自民、公明両党の連立解消を受け、立民は首相指名選挙の野党候補一本化に向けた動きを加速化している。仮に党首会談で立民の野田佳彦代表が国民側の要求を受け入れた場合、玉木氏を野党統一候補に擁立する機運が進展する可能性がある。

  会談後、立民の安住淳幹事長は今後、3党に加えて自民党との連立政権を解消した公明党にも連携を呼び掛ける方針も明らかにした。榛葉、安住両氏は幹事長会談後、それぞれ記者団に語った。

  一方、玉木氏は14日夜に出演したBS日テレの番組で、幹事長会談の内容について「生煮え感がある。登山口に入ったぐらい」と述べ、合意にはなお時間調整が必要との認識を示した。

  国民、立民両党は共に連合を支持母体とするものの、安全保障やエネルギー面で隔たりは大きい。立民は安全保障法制の違憲部分廃止や原発ゼロ社会の実現を目指すとしている一方、国民は「反撃力の保持」や原子力発電の最大限活用を掲げている

市場の反応

  首相指名選挙の行方が不透明となる中、14日の日本市場は株式が大幅続落し、日経平均株価の下げ幅は1200円を超え、4月11日以来の下落率となった。

  自公両党の連立解消による政局不安に加え、米国の中国に対する関税政策への懸念から売りが膨らんだ。円は対ドルで一時151円台後半に上昇。債券は前週末の米長期金利低下を受けて上昇(金利は低下)した。

  野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、公明の連立離脱から「首相指名選挙まで日本株は様子見ムードが続きやすい」と語る。一方、成長シナリオが明確な半導体などAI関連株に投資資金が向かう可能性があるとも指摘した。

維新、公明

  20日以降に行われる見込みの首相指名選挙では1回目の投票で過半数を得る候補がいない場合、上位2人による決選投票で票数が多かった議員が当選する仕組み。

  野党が候補者を一本化しなければ、決選投票では衆院の比較第1党である自民党の高市早苗総裁が首相となる公算だ。立民、国民と維新の3会派を合わせた議席数は210議席と自民党会派の196議席を上回るため、3党がまとまれば統一候補が首相に選ばれる。過去には1993年に就任した細川護熙氏などの例がある。

  維新は、立民と国民が一致するかどうか見極める方針だ。吉村洋文代表は14日、安保政策などで両党が「本当にまとまるのであれば、われわれもしっかりと聞いていきたい」と記者団に語った。その上で、立民が政策変更を「機関決定するのかどうか」を注視する考えも示した。

  ただ、吉村氏は13日のテレビ番組では自民とも申し入れがあれば協議に応じる方針も示している。

  10日に自民との連立離脱を決めた公明党の出方も、首相指名の結果を左右する可能性がある。斉藤鉄夫代表は12日、フジテレビの番組では個人的考え方として「野党の方に投票することはありえない」としていたが、その後は発言を修正。野党統一候補も可能性の一つだとBS日テレの番組で述べ、含みを持たせた。

  西田実仁幹事長は14日の記者会見で、首相指名選挙への対応について1回目は斉藤代表に投票するとした。決選投票に関しては「あらゆる可能性があるが、今週さまざまな分析を行ってわが党として方針を決めたい」と述べるにとどめた。

  こうした中、自民は14日午後、両院議員総会と同懇談会を開き、今後の対応について所属議員の意見を聞いた。

自国幹事長会談

  自民党の鈴木俊一幹事長は14日午後、国民の榛葉賀津也幹事長と会談した。榛葉氏によると、同氏は自民、公明、国民の3党幹事長で合意したガソリン税の暫定税率廃止などを年内に実施するよう要求。鈴木氏はスピード感を持ってやりたいと述べたという。

  鈴木氏は日本の政治の安定性を取り戻さなければならないとして、今後、国民民主と連携していきたいと申し入れた。高市総裁と玉木代表による党首会談の実施も提案したが、榛葉氏は応じる方針だ。

  会談で榛葉氏は「政治とカネ」を巡る問題の対応についても前向きに取り組むよう改善を求めた。鈴木氏からは協議体を設けて国民の理解を得られるように努力したいとの回答があった。

  榛葉氏は記者団に対し、鈴木氏との会談で基本理念はほぼ一致できると思うと伝えたことも明らかにしたが、企業・団体献金の規制強化への自民の対応については「釈然としないという思いがある」と語った。

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(国民民主の玉木代表の発言などを追加し、更新します。更新前の記事で第2段落の会談の名称を訂正済みです)

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