インフルエンザが猛威 変異でワクチン効果低下か 有効な対策は

福島県立医大医学部感染制御学講座の山藤栄一郎主任教授(県立医大提供)

 インフルエンザが猛威を振るっている。全国平均で警報レベルとされる「1定点医療機関当たり30人」の水準を、今季は過去10年で最も早く上回った。

 厚生労働省によると、17~23日に宮城県が定点当たり89・42人、福島県が同86・71人、岩手県が同83・43人の感染者を確認し、全国の上位3位を占めている。どう備えればいいか。福島県立医大医学部感染制御学講座の山藤(さんどう)栄一郎主任教授に聞いた。【聞き手・岩間理紀】

Advertisement

 ――全国でインフルエンザの感染が拡大しています。今季の流行が大規模になっている原因として何が考えられますか。

 ◆複数の要因が組み合わさっていると考えられる。

 まず「ウイルス側の変化」。現在流行しているのは、A型H3N2(A香港型)の中でも「サブクレードK」と呼ばれるもので、H3N2の中で変異を重ねて枝分かれした系統の一つだ。

 毎年、インフルエンザワクチンは、その年に流行しそうな系統を予測して作られるが、今年流行しているウイルスと予測に用いた株との間に“性質のズレ(抗原の違い)”が生じている可能性がある。そのズレが大きいと、過去の感染やワクチンで得た免疫の効果が少し低下し、流行が広がりやすくなる。

 加えて、今季は流行の始まりが昨年より早かったため、ワクチン接種がまだ進んでいない時期に多くの人が感染した点も重要だ。

 さらに「人側の変化」も関係している。海外からの来訪者が増えて交流が活発になっていること、そして新型コロナウイルスの流行期に比べて、感染対策への意識が低下していることも、流行拡大の一因になっている。これらの複数の要素が重なって現在の大規模な流行につながっていると考えられる。

福島県内の定点当たり感染者数

 ――感染状況はどのように推移していくと考えられますか。

 ◆今後を正確に予測することは難しい。ただし、現在「A型」が中心であっても、シーズン後半に「B型」が広まる可能性は十分にある。流行のピークが前倒しになったからと言って、早く収まるとは限らない。

 また、今年1月の流行期には、1カ月間で4000人以上がインフルエンザ関連で亡くなっている。いわゆるコロナ禍の時期と比べて、インフルエンザによる死亡者数は劇的に増加しており、ワクチンを打たない、マスクをしないという人が増える中では、今後さらに重症者や感染者が増加する可能性があると考えている。

 ――定点当たりの感染者数は宮城、福島、岩手の順で全国でも上位になっています。

 ◆明確な要因の特定はできないが、寒冷地域で相対的に報告数が多い傾向を考えると、低温と乾燥はインフルエンザウイルスにとって好条件であり、寒さ対策で暖房を使用することで換気不足になりやすく、感染が広がりやすい環境になっていると推測される。

 また、今季は幼稚園から中学校にかけて特に流行が強くみられており、集団生活の場で一気に感染が拡大し、それが地域全体の数字に反映されていると考えられる。これら複数の要因が重なって報告数として表れているのかもしれない。

 ――有効な対策を教えてください。

 ◆変異によって感染予防効果が一部低下したとしても、ワクチン接種には重症化を防ぐ効果が期待できる。現在のワクチンは「A型」だけでなく「B型」にも対応した4価ワクチンであり、今後「B型」が流行した場合にも効果が期待できるため、接種を推奨する。

 インフルエンザのような呼吸器感染症は、せきや会話で生じる小さな粒子が空気中に漂い、それを吸い込むことで感染すると考えられている。学校などの集団生活の場では感染リスクが高まる。

 現在は学校現場でも「マスクなし」が基本になっているが、今は感染者が爆発的に増えている時期だ。流行期にはマスクの着用や持続的な換気が重要であり、さらに手指のアルコール消毒や手洗いといった対策も有効だ。

 高齢者や妊婦、基礎疾患のある人は重症化リスクが高いため、「体調がおかしい」と感じた場合には早めに医療機関を受診することが望ましい。

関連記事: