PS5、日本語版発売で大幅値下げ “どっちつかず”を脱却し、国内市場でNintendo Switch 2に対抗か?
SIEはなぜローンチから5周年を迎えるタイミングで、PS5・日本語版を発売するに至ったのだろうか。影響したと考えられるのが、「Nintendo Switch 2 日本語・国内専用」バージョン(以下、Nintendo Switch 2・日本語版)の存在だ。任天堂はNintendo Switch 2のローンチにあたり、多言語対応バージョンより価格を抑えた日本国内専用のモデルを展開している。このことが国内での普及を後押しし、異例のペースで販売台数を伸ばしている。 任天堂とSIEは家庭用ゲーム機の領域において、長くライバル関係にある。特に国内では、前世代機・Nintendo Switchの躍進以降、熱狂的に支持される任天堂プラットフォームの勢いに押されつつある実態がある。CS機で発売されるサードパーティータイトルは、マルチプラットフォームで展開される場合が多く、ユーザーは自身にとって都合の良いハードを選択できる。特にライト層は各プラットフォームで独占展開されるファーストパーティータイトルをあきらめ、1つのハードのみを所有するケースが少なくない。SIEにとっては、国内で広がるNintendo Switch/Nintendo Switch 2のシェアを奪うことが、求心力の回復に直結するというわけだ。 また、ここにはハードの販売をめぐるマーケットの現状も影響していると推測する。2025年6月に待望のローンチを迎えたNintendo Switch 2は、リリース当初こそ品薄が続いたが、ここ最近は在庫状況が改善。任天堂の公式オンラインストアが招待販売を実施していることに加え、ゲームメディアを取り扱う小売店などが抽選なしで店頭販売する例も増えており、まもなく誰もが自由に購入できる段階がやってくる見通しだ。シェアを奪いたいSIEにとっては、Nintendo Switch 2が思うように手に入れられるようになり、よりライトな層へとリーチし始めるこれからが正念場であると言える。だからこそ、上述の方法で顧客の獲得を狙ったのではないか。 価格設定にも、そうしたSIEの思惑がにじむ。先にも述べたとおり、PS5・日本語版の価格は、税込55,000円。税込49,980円で販売されているNintendo Switch 2・日本語版より、約5,000円高い。しかしながら、両機のあいだには、スペックや対応ソフトなどに差がある。なかには「プラス5,000円でPlayStation 5が買えるのなら……」と考える、Nintendo Switch 2購入待ちのユーザーもいるかもしれない。 おそらくSIEは、国内市場において、PlayStation 5をNintendo Switch 2の比較対象に押し上げたいのだろう。今回の実質的な値下げにより、サードパーティータイトルを中心にプレイする予定で、かつNintendo Switch 2が備える携帯性を求めないユーザーには、PlayStation 5が有力な選択肢となったのではないか。 そのうえで、ひとつ懸念があるとすれば、PS5・日本語版が物理メディアに対応しない点だろう。SIEはデジタル・エディションやPS5 Proに外付けできるHD Blu-ray ディスクドライブを別売りで用意しているが、税込11,980円と誰もが気軽に購入できる価格ではない。 加えて、業界では「プラグアンドプレイ」に対する支持も根強い。プラグアンドプレイとは、物理ソフトを本体に挿せば、インターネットを介してゲームデータをダウンロードすることなく、そのままタイトルをプレイできる仕様を指す言葉だ。 実際に『サイバーパンク2077 アルティメットエディション』Nintendo Switch 2版をパッケージ、ダウンロードのそれぞれでリリースしたCD PROJEKT Groupは、8月末に公開された2025年前半の決算報告のなかで、売上の75.4%がパッケージ版だったことを明かしている。同タイトルでは、ゲームカートリッジにすべてのゲームデータを収録しており、追加のダウンロードを行うことなくプレイできた。CD PROJEKT Groupは一連の製品仕様が好調な売れ行きに作用したのではないかと言及していた。 ハードの販売においても、物理メディアに対応しているかが売上に影響する可能性がある。こうした潜在的なニーズの存在は、PS5・日本語版の成否を考えるうえで、スペックや価格、対応ソフトの差とは異なる指標となっていきそうだ。