日銀会合注目点:追加利上げ見通し、展望リポートや総裁会見で次占う
日本銀行が23、24日に開く今年最初の金融政策決定会合では、追加利上げが決まる見通しだ。声明文や新たな経済・物価見通し、植田和男総裁の記者会見から、次の利上げのタイミングとペースを占うことになる。
1月会合での利上げに向けて最大のハードルとみられていたトランプ米大統領の20日の就任演説などで予想外の発言はなく、市場は冷静に受け止めた。今後も米新政権の政策を巡る不確実性は消えないものの、昨年に続く好調な賃上げが見込まれており、日銀が政策金利を現在の0.25%から0.5%に引き上げる環境は整った。
関係者によると、今年も好調な賃上げが予想される中、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現する確度は高まっている。政府も今週の利上げを容認するスタンスだと、トランプ大統領の就任後に複数の関係者が明らかにした。
トランプ政権発足後に金融市場で大きな混乱が起きていないため、金利スワップ市場での1月利上げの織り込みは足元で9割台に達している。昨年12月末時点は4割程度だった。ブルームバーグが9-15日に実施したエコノミスト調査では、1月利上げを74%が予想した。
日銀は段階的に政策金利を引き上げる姿勢を明確にしており、市場の関心は次のタイミングとペースに移る。0.5%は2008年以来の高水準となるが、実質金利は引き続き低水準との日銀の認識は変わらないとみられる。経済・物価が見通しに沿って推移すれば、利上げで緩和度合いを調整していく基本姿勢も維持される見通しだ。
さらなる利上げは、景気・物価に中立的な名目金利である中立金利や利上げの最終到達点(ターミナルレート)に対する市場の関心を高める可能性がある。ブルームバーグのエコノミスト調査によると、今利上げ局面におけるターミナルレートの予想中央値は1%だった。利上げペースについては、半年に1回程度との見方が多い。
こうした予想も踏まえ、声明文や新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)の記述、植田総裁発言の変化が注目となる。米新政権の政策の影響もあり、為替相場には円安圧力がかかりやすい状況だ。従来の会合では総裁会見を受けて市場の期待が大きく振れる局面も見られ、日銀は一段と丁寧なコミュニケーションを求められる。
複数の関係者によると、展望リポートでは、コメを中心とした食料品価格の上昇や円安進行などを背景に、消費者物価見通しの上方修正が見込まれている。日銀では経済・物価情勢は見通しに沿って推移していると判断しており、消費者物価は見通し期間の26年度にかけて2%程度で推移する姿が維持される公算が大きいという。
ブルームバーグ・エコノミクスの見方
「市場は既に利上げを織り込んでいるため、決定後の記者会見で植田総裁がどのような情報発信を行うかが焦点となる。総裁は今後の利上げのタイミングを示唆することなく、一見慎重なメッセージを発信すると考えている」
木村太郎シニアエコノミスト
全文をご覧になるにはこちらをクリック
他のポイント
- 展望リポートでは物価見通しのリスクにも注目。前回の昨年10月は「2025年度は上振れリスクの方が大きい」と記述
- 円安進行を受けて、円ベースの輸入物価指数の前年比が足元でプラスに転換。植田総裁は昨年12月の会見で、利上げ見送りの理由について輸入物価の前年比が落ち着いていることも考慮したと発言しており、認識に変化があるか
- 米新政権の政策は引き続きリスク要因として意識されるとみられる。世界・米国・日本経済への影響は
- 昨年12月の植田総裁のハト派的な会見から一転し、年明け後は正副総裁のタカ派的な発言を受けて1月会合の利上げ観測が急速に高まった。市場との対話の在り方が問われる可能性