OECD、世界成長予測を下方修正-貿易障壁や高い不確実性で

トランプ米大統領の攻撃的な通商政策により、世界は突如として成長鈍化とインフレ率上昇の道を歩むことになったと、経済協力開発機構(OECD)は指摘した。緊張が高まれば、状況はさらに悪化する可能性があるとみる。

  OECDは17日発表した最新の世界経済見通しで、今年の成長率予想を3.1%、来年を3%にそれぞれ引き下げた。貿易を巡る障壁や高い不確実性で、企業の投資や消費者の支出が抑制されると見込む。

  トランプ氏が仕掛けた貿易戦争の渦中にある国は、急速な成長減速に陥る恐れがある。カナダの成長率はOECDが12月に発表した予測の半分以下に修正され、メキシコはリセッション(景気後退)入りが見込まれている。米国の成長率は来年1.6%と、新型コロナウイルス流行初期を除く2011年以来の低水準に減速すると予測。日本も影響を免れず、今年と来年の成長率がそれぞれ0.4ポイント引き下げられた。

Source: Organization for Economic Cooperation and Development

  またOECDは、通商コストの増加がインフレを押し上げると予想し、わずか3カ月前のインフレ予測を上方修正した。中央銀行は景気抑制的な政策をより長期にわたり維持する必要があると指摘。米国を含め多くの国では、来年のコアインフレ率が当局者の目標値を上回って推移する見通しだ。

  トランプ氏が大統領就任後に緊張を高めることは予想されていたが、同氏の脅威がもたらす不安定さとそのスケールは、政策当局者と投資家をいずれも困惑させた。

  OECDの分析は、中国と米国の間で既に実施されている措置に加え、米国が課す鉄鋼とアルミニウムの輸入品全般に対する25%の関税を考慮に入れ、カナダとメキシコの製品に対する25ポイントの追加関税および両国から同等の報復措置があることを仮定した。トランプ氏が示唆した他の政策、例えば世界的な相互関税の導入や、先週打ち出された欧州ワインに対する200%関税案などは考慮されていない。

Source: Organization for Economic Cooperation and Development

  OECDのシミュレーションによれば、二国間の関税が恒久的に10ポイント引き上げられた場合、世界全体の生産は3年目までに約0.3%減少する可能性がある。特に米国は「大きな打撃」を受け、生産は0.7%減少すると予測された。

  このシナリオではインフレも悪化し、金融当局による政策引き締めだけでなく、金融市場でも「急激なリプライシング」が引き起こされる可能性がある。こうしたリスクと不確実性の高まりに伴い、金融当局は賃金と物価の上昇圧力に対して警戒を怠ってはならないと、OECDは警告した。

  OECDは「世界経済のさらなる分断」を主な懸念事項に挙げ、「貿易障壁の高まりと広がりは、世界の成長を阻害し、インフレを加速させる」との見通しを示した。

  一方で、関税が引き下げられ、政策がより安定すれば、悲観的な見通しに幾つか上向く可能性が生じるとも指摘。日本の場合、関税が想定されたよりも低い水準となるなら、今年の成長率が1.2%、来年が0.3%に小幅に改善するとした。欧州がここ数週間で打ち出した防衛費増大については、政府の財政を圧迫するだろうが、成長の支援材料にもなり得るとの見方を示した。

US imposes tariffs on imports with retaliatory action from other countries

Source: Organization for Economic Cooperation and Development calculations using the NiGEM global macroeconomic model and the OECD METRO model

原題:Trump’s Trade Wars Tip World to Slower Growth, Faster Inflation(抜粋)

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