玄海原発「光を放つ三つの飛行体」見つからず、専門家「上空からの侵入リスクが顕在化」
原子力規制委員会が九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の敷地内で、ドローン3機の飛行が確認されたと発表したことについて、九電は27日夕、敷地内と周辺でドローンは発見されなかったと明らかにした。佐賀県警とともに今後も捜索を継続する。
一方、規制委は同日、確認されたのは「ドローンとみられる三つの飛行体」だったと訂正した。現時点で断定はできないためとしている。
ドローンとみられる飛行体が侵入した玄海原発(奥)。住宅地(手前)の近くにある(27日午後、佐賀県玄海町で)規制委や九電などへの取材によると、26日午後9時頃、発電所の警備員4人が光を放つ三つの飛行体が正門付近の上空に浮かんでいるのを発見。連絡を受けて駆け付けた県警原発特別警備部隊の隊員も光を確認した。飛行体はその後、敷地外に向けて飛び去ったという。操縦者や飛行目的、形状、カメラなどの積載物の有無は不明で、九電は具体的な飛行経路について「セキュリティー上、明らかにできない」としている。
玄海原発の地図小型無人機等飛行禁止法では、原発や自衛隊施設などの重要施設とその周囲約300メートルの上空でドローンなどの飛行を原則禁じており、違反者には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられる。九電は「川内原発(鹿児島県薩摩川内市)を含めて初めてのケースだが、発電所の安全性に問題はない」とコメントし、規制委は「対応を検討する」としている。
玄海原発は1、2号機が廃炉作業中で、3、4号機が営業運転中だった。4号機は27日、予定通り定期検査に入った。
周辺自治体「警戒強化を」
テロなどに備えて極めて高いセキュリティー対策が取られている原子力発電所の敷地内で、ドローンとみられる飛行体が複数目撃された異例の事態を受け、玄海原発の周辺自治体からは27日、警戒態勢の強化を求める意見が聞かれた。
「夜に起きたこともあり、誰かが何らかの意図を持ってやったのか、不気味に感じている」。読売新聞の取材に応じた玄海町の脇山伸太郎町長は困惑した様子で語り、「原発に近付く飛行体を察知できるような機器の導入を要請したい」と九電に対応を求める考えを明らかにした。同町によると、九電側は28日にも今回の事案について町に説明する予定という。
同町と隣接する佐賀県唐津市危機管理防災課の担当者も「九電や国には安全第一と、不安 払拭(ふっしょく) に努めてもらいたい」と注文した。同県の平尾健副知事は、九電の林田道生・原子力発電本部長に「今回のような事案を許さない対策を講じてほしい」と電話で申し入れた。
原発周辺でのドローン飛行は、過去にも問題となっている。北海道電力泊原発(北海道泊村)では2023年4月、原発から約50メートルの海岸で、国に届け出をしていないドローン1機を飛ばしたとして、道内の男性が航空法違反の疑いで逮捕された。
東京大の岡本孝司教授(原子力工学)は「核物質を扱う原発はどの国も出入りが厳重に管理されており、構内では写真の1枚も自由に撮ることは許されない」と説明する。そのうえで今回の事案について、「上空からの侵入リスクが顕在化した点で問題だ。国や電力会社、警察などが協力し、対策を考えていく必要がある」と指摘している。