野菜などの「植物性食品」が糖尿病の人の寿命を延ばす 腎臓病リスクのある人にもおすすめ

 糖尿病、肥満、心臓病などのリスクのある人は、食事に野菜などの植物性食品を取り入れることで、寿命を延ばせる可能性があることが、英国・米国・中国で行われた大規模研究に参加した計7万8,000人の成人を対象とした調査で示された。詳細は、3月にシカゴで開催された米国心臓病学会(ACC)の年次集会で発表された。

 2型糖尿病や脂質異常症などの代謝疾患のある人が、心筋梗塞や脳卒中といった心臓や脳の血管の疾患のリスクが高くなった状態は、心血管代謝疾患として知られている。

 「糖尿病や肥満などのある、心血管代謝疾患のリスクのある人は、健康的な植物性食品を十分に食べると、全死亡、心血管疾患、さらにはがんによる死亡のリスクが減少することが示されました」と、中国の中南大学病身の循環器内科のチェン チャンリン氏は言う。

植物性食品をとらない不健康な食事は死亡リスクを上昇

 研究グループは、大規模研究であるUKバイオバンクに参加した約5万5,000人の成人の2006~2022年のデータ、米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した約1万8,000人の成人の1999~2018年のデータ、中国縦断健康長寿研究(CLHLS)に参加した約4,500人の成人の2006~2018年のデータを解析した。

 その結果、野菜・全粒穀物・豆類・大豆・ナッツ類・お茶・コーヒー・果物などの健康的な植物性食品を多く摂取している人は、そうでない人に比べて、全死亡・心血管疾患・がんによる死亡リスクが17%から24%低下することが分かった。

 逆に、そうした食品を食べない不健康な食事をしていると、全死亡・心血管疾患・がんによる死亡リスクは28%から36%増加した。

 「健康的な植物性食品を食事に取り入れることは、心血管代謝疾患のリスクのある人の健康を促進し、寿命を延ばすのに役立つ可能性があります」と、チャンリン氏は述べている。

腎臓病のリスクのある人にとっても植物性食品は有用

 植物性食品を取り入れた食事スタイルは、腎臓病のリスクのある人の健康を改善するのにも有用であることが、英国のニューカッスル大学などの別の新しい研究で明らかになった。研究成果は、米国腎臓学会臨床ジャーナルに発表された。

 「腎臓病のある方の食事は、カリウムなどの特定の栄養を制限する必要がある場合もありますが、そうでなければ、野菜・全粒穀物・豆類・ナッツ類など、多様な食品を取り入れた方が、良い結果になることが示されました」と、同大学で食事療法などを研究しているケリー ランバート氏は言う。

 研究グループは、慢性腎臓病(CKD)のステージ3~4のCKDと診断された25人の成人を対象としたクロスオーバーランダム化比較試験を実施した。

 週に30種類以上の植物性食品を含む多様性の高い食事と、週に15種類以下の植物性食品を含む多様性の低い食事を、それぞれ6週間ランダムにとってもらい、どのような違いがあらわれるかを調べた。

糖尿病・高血圧・脂質異常症などのある人は腎臓病リスクが高い

 その結果、多様性の高い植物性食品中心の食事をとった期間の方が、血液や尿に含まれる有害な廃棄物は少なく、腸内細菌叢も良好で、便秘などの症状も少ないことが示された。

 尿素などの血中の廃棄物、通常は腎臓の糸球体でろ過され、尿毒素として尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下していると血中にたまりやすくなる。

 「糖尿病や高血圧、脂質異常症などのある人は腎臓病のリスクが高いことが知られていますが、そうした方でも、食事療法により大きな恩恵を受けられます」と、ランバート氏は述べている。

 「いまのご自分にどのような食事が合っているかを、かかりつけの医師や栄養士に相談することをお勧めします」としている。

タマネギやパセリなどに含まれるフラボノイドが糖尿病リスクを減少

 タマネギ・パセリ・セロリ・オレンジなどの多くの野菜や果物に含まれる「アピゲニン」と呼ばれる植物フラボノイドが、インスリン抵抗性や小胞体ストレスを改善することが、広島大学などの新しい研究で明らかになった。

 野菜などに含まれるポリフェノール類には、多彩な生理学的作用があり、抗酸化作用や抗炎症作用など、身体に良い影響をもたらすことが知られている。

 研究グループは、比較的安全とされる食用植物由来の化合物から、インスリン抵抗性を軽減できる物質の特定を目指した。

 糖尿病の原因にはさまざまなものがあるが、それらのひとつとして、インスリン抵抗性、小胞体ストレスが挙げられる。

 インスリン抵抗性は、過食や運動不足、肥満、さらには遺伝的な要因により、血糖値を下げるインスリンが効きにくくなった状態。インスリン抵抗性の原因のひとつが小胞体ストレスだ。

 小胞体は、細胞内でタンパク質や脂質の合成などを担う器官。その機能に異常が起こるのが小胞体ストレスで、糖尿病などのさまざまな疾患に関与していることが知られている。

 研究グループは今回、449種類の食品由来化合物群のなかから、抗糖尿病効果を示す化合物を検討し、アピゲニンが強い効果を示すことを突き止めた。

 アピゲニンは、細胞の骨格となる微小管をつくるβチューブリンと呼ばれるタンパク質と結合し、小胞体ストレスによる細胞死を抑制し、さらにはインスリン抵抗性を改善する効果をもたらすと考えられる。

 研究は、広島大学大学院医系科学研究科の小澤孝一郎教授、山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部の細井徹 教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「FASEB J」に掲載された。

野菜や果物に含まれるアピゲニンがインスリン抵抗性や小胞体ストレスを改善糖取り込みを高め抗糖尿病効果をもたらす

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